2023.04.28 18:00

環七フィーバーズNEOとThe Orchard Japanによる『FLAT6』　當山みれい、ASOBOiSM、大比良瑞希ら集結した初の有観客ライブ

文＝松本侃士、写真＝稲垣ルリコ

・みきまりあ

　いよいよ、ライブも後半戦へ突入。3人からのバトンを受け取り、すでに熱し切ったフロアの前に現れたのは、アコースティックセッションユニット・ぷらそにかメンバーであり、ボカロPとの音楽ユニット・NOMELON NOLEMONのVoとしても活躍中の、シンガーソングライターのみきまりあ。DJの猫まみれ太郎を迎えた2人体制で、次々と豊かな歌声を届けていく。スタンドマイクを深く握りながら、フロアに向けてまっすぐに歌声を届けた、かと思いきや、しゃがみこんだり、軽やかに舞ったり、椅子に腰かけたりしながら、自らの感情が赴くままに、自由なステージパフォーマンスを届けていく展開が続く。歌う、という言葉だけでは形容しきれないような、まるで音楽に自身の身体と感情を全て委ねるような迫真のパフォーマンスは、本当に圧巻だった。MCでは、一転して、快活でキュートな等身大の一面を見せながら、今回初めてDJを迎えた新体制でパフォーマンスする楽しさを語る。その晴れやかな笑顔に、思わず観ているこちらまで晴々とした気持ちになる。ラストの「マスカラ」では、観客と一緒に手を上下にバウンスすることで大きな一体感を生み出してみせた。みんなで盛り上がった先で、お互いの感情を音楽を通して共有し合うような、とても美しいクライマックスだった。

環七フィーバーズNEOとThe Orchard Japanによる『FLAT6』　當山みれい、ASOBOiSM、大比良瑞希ら集結した初の有観客ライブの画像1-1

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・YonYon

　続いてステージに登場したのは、歌うDJ、シンガーソングライター、音楽レーベル・Peace Tree主宰、という様々な一面を持つYonYon。「Your Closet」では、サビでフロアにコール＆レスポンスを求めつつ、「聞こえないぜ！」「いい感じじゃん！」と一人ひとりの観客と温かなコミュニケーションを重ねていく。その後のMCで、彼女は、自身の楽曲の中に「踊ろう」という歌詞が多いことを振り返っていたが、世界共通言語としての踊りと、自然と体が揺らす音楽の素晴らしさを改めて実感させてくれるステージが続く。今回のハイライトを担ったのは、自身が韓国にルーツを持つことを説明した上で、「過去の歴史は変えられないけど、次の未来は変えられると信じています。」という力強い言葉を添えて披露した「Bridge」であった。〈無かったことに出來ない History／暗いままじゃ終われないMy Story／私たち一緖に生きている／ここがMy Home〉というリリックに込められた未来へ向けた透徹な願いに、強く心を震わせられた。一方的にシリアスなメッセージを伝えるのではなく、音楽を通してピースフルな空間を共に創り上げる。そうした彼女の表現スタイルは、きっと国籍を問わず、多くの観客の胸を打ったはずだ。

・當山みれい

　これまで5人のアーティストたちによって繋がれてきたバトンは、ついに、この日のトリを担う當山みれいの手に託された。1曲目は、壮大なスケールを誇るトラックの中で、〈負けてもいい泣いてもいい／扉開くの、今／いつの日か夢は叶う／そう信じるの My Way〉という高らかな決意を響かせる「My Way」だ。力強く逞しい響きを誇る歌声は、同時にフロアを丸ごと包み込むような豊かな包容力を兼ね備えていて、彼女のシンガーとしての圧倒的はポテンシャルに痺れる。巧みなフェイクや繊細なファルセットを随所に織り交ぜながら歌い届けた「いやいいや」も素晴らしい名演だった。そして、年明けにリリースした現行の最新曲「＾＾」（読み方：にこにこ）では、甘くキュートなメロディをフロア一面に鮮やかに届け、KREVAの名曲をベースにした「音色 Regards」では、切実な恋愛模様を丁寧に表現していく。パフォーマンス後、サビで彼女の歌声にベイビーコールで応えた観客に向けて、「出るやん、声」と嬉しそうな表情で語りかけていた一幕も印象的だった。終始、観客と共に楽しむという彼女の想いに貫かれた、とても温かな時間・空間となった。

環七フィーバーズNEOとThe Orchard Japanによる『FLAT6』　當山みれい、ASOBOiSM、大比良瑞希ら集結した初の有観客ライブの画像3-1

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　最後に、今回、『FLAT6』に出演した6組のアーティストに共通して感じたことは、長きにわたるコロナ禍を経て、ついに有観客ライブのステージに立てた喜びを心から伝えていたこと。そして、目の前の一人ひとりの観客と豊かなコミュニケーションを繰り広げていたことである。今回、環七フィーバーズNEOとThe Orchard Japanの座組みでシリーズ初の有観客ライブが実現した喜びは、出演アーティストにとっても、何より、会場に集まった観客たちにとっても、とても大きなものであったはず。今後も、環七フィーバーズNEOとThe Orchard Japanのタッグによって続々と展開されていくであろうイベントへの期待が高まる。