ExWHYZ、メインストリームへ乗り込む新たな王道宣言 色合い豊かな歌声に表れた“6人の進化と自信”

ExWHYZ、新たな王道宣言

 昨年11月に1stアルバム『xYZ』をリリース、アルバムツアーのファイナルとなった今年1月のZepp DiverCity(TOKYO)公演でそれまで活動を休止していたmidorikoも復活し、ついに完全体で走り出したExWHYZが、早くも2ndアルバムを完成させた。『xANADU』(ザナドゥ)と名づけられた今作は4月1日から先行配信され、4月19日にCDでリリースされた。

 気鋭のトラックメーカーやプロデューサーが参加して生まれた『xYZ』はEMPiREの活動をずっと追いかけてきたファンのみならず、それまで彼女たちを知らなかった新たなリスナーにも突き刺さる鋭さとパワーをもったアルバムだったが、今作はそこからさらに進化。いや、進化というよりも「深化」というべきか、2作目にして早くもExWHYZとしての勝負作が誕生したという手応えがある。エッジとポップさ、クールさとキュートさが絶妙なバランスで配合された今作のタッチは、それこそがExWHYZの「王道」なのかもしれないと思わせるような出来栄えだ。

 アルバムは前作同様、タイトルトラック「xANADU」から始まる。ノイズとビート、シンプルなリフの上に言葉をコラージュし、まるでリスナーを別世界へと誘うようなこのイントロからつながっていくのは「BLAZE」という楽曲だ。前作でもアルバムのオープニングを担っていたyahyelの篠田ミル、山田健人によるこの曲は、まさにエッジィな部分とキャッチーな部分が溶け合うように同居する今作のニュアンスを的確に伝えている。トラックだけを取り出せばミニマルなエレクトロなのだが、そこに挿入されるギターソロやサビのメロディがこのストイックな楽曲をグッとポップサイドに引き寄せる。〈もっとそばにおいで/ぶつかってしまうほど 抱き合おうぜ〉というこの曲の冒頭を飾る歌詞が、まるでアルバム全体を通したテーマのように聴こえてくる。そのテーマとは、あえて言葉にするなら、『xYZ』で一気に振り切ったメーターの針を丁寧にチューニングしながら、これまで彼女たちを支えてきたファンも、新たに彼女たちに出会った人々もまとめて抱きしめてしまおうという意志である。

 もう少し説明が必要だろう。『xYZ』は確かに、画期的なまでにかっこいいアルバムとなった。そしてそうやって振り切ったものを提示することは、EMPiREから生まれ変わったあのタイミングでExWHYZにとって間違いなく必要だったし、驚きやインパクトを与え、“ExWHYZここにあり”と世の中に示したという意味では大正解だった。ではその先で彼女たちはどこに進んでいくのか。新たなアルバムはそれを明快に指し示しているように思える。つまり、簡潔に言ってしまえば、よりメインストリームな存在になっていくことを、ExWHYZはこの『xANADU』で宣言しているように思えるのだ。それを可能にしているのは、他ならぬ彼女たち自身のフィジカルな進化である。

 前作が何よりもまずトラックの新鮮さとクオリティに目が行くものになっていたのに対して、今作においてアルバムの主役となっているのは間違いなく6人の歌だ。3曲目の「Des Speeching」は、前作で「Wanna Dance」を手掛けた大沢伸一(MONDO GROSSO)のプロデュース曲だが、作詞には大沢のほかmayu、maho、midorikoの名前がクレジットされている。ディープなハウスフィールを宿したトラックのかっこよさはさすが大沢伸一という一方で、ここでもやはり歌とメロディが印象的に響く。〈ゾラミナサンソワミモッサ〉と繰り返される呪文のようなフレーズがここまでキャッチーに鼓膜に届くというのは、彼女たち一人ひとりの表現力が明らかに増していることの表れだろう。

ExWHYZ / ANSWER [Music Video]

 メインストリームポップということでいえば、続く「ANSWER」、そしてエイプリルフールのネタとして投下されたアユニ・D(BiSH / PEDRO)の電撃加入〜電撃脱退の一環としてMVも公開された「FIRST STEP」も興味深い。「ANSWER」のリリックは、前作の「Obsession」に続いて岡嶋かな多、作曲・アレンジはEMPiRE時代に「IZA!!」でタッグを組んだSeihoが担当しており、ビッグスケールのダンスアンセムとなっている。mayuが振り付けをしたというキレのあるダンスもよく映える、ライブで重要なキーポイントになっていきそうな楽曲だ。この重厚でグルーヴィなサウンドはまさに今の世界のメインストリームポップど真ん中ともいえ、あえてそうした「豪速球」を投げ込んでくるところにも、スタッフチームを含めたグループとしての意図が感じられる。

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