離婚伝説、チョーキューメイ、エイハブ、板歯目、Luli Lee……リアルサウンド編集部がいま気になるアーティスト

■YOHLU

YOHLU / landmark (Official Music Video)

 kiki vivi lily、クボタカイ、Deep Sea Diving Clubなど、良質な音楽を生み出すアーティストたちの原点として、ここ数年改めて注目を集めているカルチャーの街・福岡。個人的にも愛着のある福岡から届けられる音楽は、どうしても気になってしまう。まだライブを観たことがなく、機会があったらぜひ観たいと思っているのが、サンプリングと生音を融合させたサウンドが特徴のフューチャーソウルユニット・YOHLU。2018年、KENTO、BOKEH、ZMIにより結成。福岡のコレクティブ・BOATのメンバーとしても映像からデザイン、音楽、メディア展開まで、インディペンデントで行っているクリエイティブ集団だ。

 3月1日には1年ぶりの新曲「passion」も発表されたばかり。「SHEEP」や「STRAWBERRY FIELDS」など、すでに各種サブスクリプションサービスで国内外問わず多くのリスナーを獲得している彼らだが、なかでも「landmark」に強く惹かれた。歌詞やサウンドから引き出されるノスタルジーな心象風景、福岡を訪れた時にも感じる空気のようなものが楽曲からも伝わってくる。YouTubeには車やフェリーから映された何気ない街並みの映像で構成されたMVがアップされており、メンバーが視覚的な表現にも携わるユニットならではの音楽と映像のリンクも魅力的なポイントである。(久蔵)

■幽体コミュニケーションズ

『ショートショート』幽体コミュニケーションズ

 めっちゃ不思議なのに、なんかずっと聴けちゃう。一聴してそんなことを思ったのが幽体コミュニケーションズだ。例えば「ショートショート」。素朴な音像から始まるが、心地良く乗れる絶妙なビートを維持しつつ、様々な音色が次から次へと飛び込んできて最終的にはカオス化する。この曲を聴けば、なんとなく彼らの魅力が掴めるのではないか。また、paya(Vo/Gt)のリズミカルなラップと、いしし(Vo)の柔らかな歌の相性も抜群。“耳から摂取するマイナスイオン“という印象もあるので、いつか野外でライブを観てみたいと思っている。(泉)

■Hwyl

暮らし(Lyric video) | Hwyl

 2021年6月結成、あきたりさ(Gt/Vo)、クマダノドカ(Gt)によるツーピースバンド。まずはその編成の珍しさが目を引くが、注目すべきは楽曲に溢れるリアルさ。TikTokでもじわじわ視聴回数を重ねている「暮らし」ですっかり魅了されてしまった。〈ウーバーイーツは贅沢モン〉〈炊いたご飯ソッコー冷凍〉とまさしく生活のリアルを描き、〈これが現実ってもんよ〉と突きつける。さらに最後には恋人から電話で別れを告げられる、という“バッドエンド”と言える楽曲だが、あくまでそれを平熱で歌うのも世代感というか「わかる」ポイント。10代はもちろん、20代、30代にも刺さるはずだ。引き算の美学とも言うべきシンプルな編成、さりげなく韻を踏んだ心地よい歌詞、あきたりさの媚びないボーカルなどフックは数多い。ライブはまだ荒削りな部分もあるが、ここからステージを重ねた先を考えるとワクワクするバンドだ。ちなみに2人の目標は「ノディをデッカい舞台に立たせたい(あきたりさ)」、「りさちとHwylを続けること。長く愛される名曲を生み出すこと(クマダノドカ)」(※2)。相思相愛な関係性で、彼女たちがツーピースで活動する理由が分かる答えだった。「暮らし」が刺さった人には、ぜひ「オマエアレルギー」「現在地」なども聴いてほしい。(村上)

※2:https://note.com/imalab/n/nb84a31d96850

■kurayamisaka

kurayamisaka - farewell(MV)

 シューゲイザーの魅力の1つは、歌詞やメロディのリフレイン自体がディープな感情表現になっていくことだが、kurayamisakaはそのセンスが抜群に長けている。東京で結成された5人組バンドで、CDとしてリリースされているのは6曲入りEP『kimi wo omotte iru』1枚のみ。儚げな歌声とメロディアスなギターが浮き彫りにするテーマは“別れ”だが、死は人を分かつのではなく、その人が教えてくれたことを思い返したり、共に過ごした季節が巡ってくるたびに、もう一度会うことができるーーそんな感性を曲の節々から感じることができる。二分されがちな“生と死”をつなげて円環を鳴らすことこそ、kurayamisakaの楽曲がエバーグリーンたり得る理由であり、『kimi wo omotte iru』の始まりと終わりが同じ歌詞になっているのも美しい。中盤の「seasons」「last dance」「farewell」も名曲続きで、リズムを含めたフレーズも多彩だ。きのこ帝国や、奇しくも今年解散を迎えたFor Tracy Hydeの意志を受け継ぐ筆頭であり、なおかつ、単発的な消費が繰り返される2020年代に、普遍的なソングライティングを研ぎ澄ませるkurayamisakaこそ、今聴くべき“真にエッジの立った存在”ではないだろうか。(信太)

■ASP

ASP / NO COLOR S [OFFiCiAL ViDEO]

 2021年に結成されたWACK所属のアイドルグループ・ASP。第1期BiSを彷彿とさせるパンクな楽曲を中心にした、ある意味で「BiSH以前のWACKらしさ」を持つグループとして結成当初から期待されていたグループだった。ただ、メジャーデビューが発表された2022年5月時点では、別のグループでのキャリアを持つ初期メンバーのユメカ・ナウカナ?とそれ以外のメンバーではどうしてもパフォーマンスに差があり、メジャーデビューへの想いについても、前グループが志半ばで解散となったユメカと、当時加入してまだ数カ月だったチッチチチーチーチー、リオン・タウンではやや異なる部分ように感じた。

 しかし、8月にメジャーデビューして以来、グループのマインドは大きく変化をしたように思える。昨年末に行われた『GOD SAVE the ASP TOUR』のファイナル公演では、見違えるようにパフォーマンスが向上し、ダンス、歌唱はもちろん、メンバー全員が本気でグループを良くしようとする想いが伝わってきた。たった半年でここまで成長するのならば、今後はさらにすごいステージになると確信できるような公演だった。BiSHがかつて音楽性の高さから注目を集めたように、ASPもそのパンクな姿勢で、もっと大きなステージに立つ姿が今から楽しみだ。(佐々木)

関連記事

インタビュー

もっとみる

Pick Up!

「音楽シーン分析」の最新記事

もっとみる

blueprint book store

もっとみる