米津玄師、新曲「LADY」で描いた淡々とした日常 凡庸さを抜け出させた2つの強み

 米津玄師の新曲「LADY」。3月21日にさらっと、しかし出し抜けにリリースされたばかりのこの曲は、米津玄師らしからぬ、レイドバックしたミドルテンポの曲調が印象的だ。歯切れのよいブライトなピアノの音色と、ウォームながらはつらつとしたホーンの対比が心地よい。共同編曲はmabanuaで、ドラムやベース、ギターなどの演奏も担当。ほか、WONKやmillennium paradeの江崎文武や、「感電」でもその演奏を聴かせたMELRAW率いるホーンセクションが参加している。

 日本コカ・コーラ「ジョージア」のCMソングにも採用されている「LADY」は、歌詞に耳を傾けると、曲調と同じくらい米津らしからぬラブソング。「米津玄師、こんな曲書くんだ」と少し驚くくらいだ。淡々と、しかし確かに続く日常と、そこで築かれるかけがえのない親密な関係。仰々しさはなく、むしろその地に足ついた感覚を強調するような言葉が連なる。

 「海の幽霊」から「M八七」まで続いた坂東祐大とのタッグ(これは米津玄師にとって重要な時期だったと思う)、そして「KICK BACK」での常田大希(King Gnu、millennium parade)とのタッグを経て、かつて「ナンバーナイン」に参加したmabanuaとこういった親密なナンバーをつくるのは面白い。しかし、その親密さ、ウェルメイドな感じがいささか凡庸に感じられるのも確かだ。

 「LADY」には、しばしば米津の楽曲にあらわれる破れかぶれのシニシズムもなければ、遠い「いつか・どこか」を想起させるような物語の広がりもない。かわりに、前述したように、ただただ続く日常と、少しだけ日常から逸脱する「たら・れば」が描かれる。

 この曲が使われた「ジョージア」のCMとあわせてみると、まさしくそのコンセプトにはぴったりだということがわかる。タイアップらしいと言えばそれまでだが、かといって、楽曲としてはどこか面白みにかける。すごく端的に言えば、「この一行」というフレーズに欠けるのだ。

【ジョージア】 TVCM「毎日って、けっこうドラマだ。」篇 60秒 GEORGIA TVCF

 日常を描いているのだから、ドラマチックな一行がないのは当然じゃないか。と思われるかもしれないが、日常の何気ない風景を描きながら、意表をついたり、ポエティックな飛躍を感じさせる言葉を紡ぐアーティストは少なくない。

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