Ezoshika Gourmet Club、メンバー脱退からの新体制で新たな一歩 「おいッ!」に込められた日常に対するフラストレーション

エゾシカ、新体制で踏み出す一歩

 2023年の2月、Ezoshika Gourmet Club(以下、エゾシカ)が約8カ月ぶりの新曲となる「おいッ!」をリリースした。この曲は、2022年夏のギタリストの脱退を経て、3人体制として初めてリリースした楽曲である。

【MV】『おいッ!』- Ezoshika Gourmet Club

 エゾシカは、デビュー当初から洗練されたポップスを次々と世に送り出してきたバンドであるが、今回の新曲には、初期衝動を爆発させたような熱量が全編にわたってみなぎっていて、まるで第2のデビュー曲のような瑞々しさすら感じさせる。今回、3人に取材を行い、新たなスタートラインに立った今の想いや、今後の展望、また、4月16日の開催を控えた渋谷WWWのワンマンライブにかける意気込みについて聞いた。(松本侃士)

「今このフラストレーションを曲にしないといけなかった」(池澤)

Ezoshika Gourmet Club

ーー2018年1月の結成から5年が経ち、その間、皆さんは、多様な音楽性の楽曲を次々とリリースしてきましたが、エゾシカというバンドが掲げている一貫したテーマやブレないこだわりなどがあれば教えてください。

池澤英(以下、池澤 Vo/Gt/Key):まず、歌のメロディは絶対にポップじゃなきゃいけないと思っています。なので、音階はすごくわかりやすいものを選んでいて、その一方で僕たちとしてはすごいビート感やバンドのグルーヴを大事にしていて。徹底的にサウンドメイクにこだわり抜く、ということは3人の共通認識ですね。

守屋優樹(以下、守屋 Dr):特に、池澤のこだわりはすごく強いですよ。デモの段階からけっこう作り込まれているので、バンド内で共通のイメージを持ちやすいです。

ーー徹底的にDTMで楽曲を作り込んでいくことで、極論、一人でも音楽活動をすること自体はできる時代になったかもしれませんが、それでもやはり池澤さんとしてはバンドという表現形態へのこだわりや憧れは強くあるのでしょうか。

池澤:そうですよね。ユニコーンとか、これまで好きで聴いてきた音楽は全部バンド音楽だったんで。やっぱり、バンドで売れたいですね。

ーー守屋さんは、当初は、スタジオミュージシャンを志望していたそうですね。実際に、エゾシカに加入してバンドを続けてみて、いかがですか?

守屋:はじめは自分がバンドをやるとは思っていなくて、そして実際にバンドメンバーと一緒に活動してみるとやっぱり大変なことのほうが多いけど、一人で全部やるよりはバンドメンバーと一緒に束になって戦える安心感があります。やっぱり心強い人たちが周りにいるので。

ーー2022年の夏、初期メンバーである額田一佑(Gt)さんがバンドを脱退されました。皆さんの活動において、一つの大きなターニングポイントとなった出来事だと思いますが、振り返ってみていかがでしょうか?

松下和樹(Ba):彼はステージでギターを弾くさまが、とにかく「元気」って感じの人で、このバンドのムードメーカーみたいな存在でした。

池澤:ナード特有の内なる狂気みたいなものを胸の内にふつふつと抱いている人で(笑)。

守屋:僕ら3人は良くも悪くも普通なキャラクターなんですけど、額田は僕らにはない突出したキャラクターみたいなのがあって。それがエゾシカのライブにおける一つの華になっていたと思っています。

ーー額田さんとの別れを経て、昨年の夏以降、エゾシカは3人で新しいスタートを切りました。制作の体制は、3人のみというイメージですか?

守屋:ライブのサポートメンバーのクロサワさんが制作にも入ってくださって、アレンジをご自身で担当してくれるんです。

池澤:「考えていい?」と積極的に提案してくれる方なので、だいぶ任せちゃってますね。とても心強いです。

池澤英

ーー3人体制としてスタートを切った時に、新しい強力な仲間と出会えたことは、とても幸運な出来事ですね。今回の新曲「おいッ!」についてもお話も聞いていこうと思うんですけど、今このタイミングでこの曲を出そうと考えた理由や背景について教えてください。

守屋:僕たちとして、今のバンドの状況に対していろいろ思うことがあって。

池澤:こう、あるじゃないですか。いろいろなしがらみが(笑)。

ーーぼかしながら言いますね(笑)。

池澤:自分たちのやりたいことと周りのスタッフの方々が求めているものは、必ずしも一致するとは限らないと思うんです。そうしたギャップに対して、今このフラストレーションを曲にしないといけないな、というところから始まりまして。

守屋:それこそ、SNSでバズるような曲を作ってほしいという考え方も、僕らには必要だと頭では理解しているつもりなんです。でも僕らは、はじめからライブバンドとしてやっていきたいという気持ちが強くて。コロナ禍の中でライブが思うようにできなくなり、僕たちの中でそういったギャップに繋がったのかもしれないです。

ーーエゾシカは2019年にいろいろ賞を受賞して一気に注目を集めましたが、その年明けからコロナ禍に突入してしまいました。ここから駆け上がっていくタイミングなだけに、この約3年間はきっと皆さんにとって相当長かったのではないかと想像しました。

池澤:言い訳にはしたくないですけど、やはり長かったですね。もともとかっこいいライブをするバンドに憧れて始めたことなのに、しばらくはライブ活動を思うようにできない時期が続いて。そうしたフラストレーションが、今この曲を出したことに繋がっています。

あと、今僕が20代中盤の世代なんですけど、社会人として働いている周りの友人を見渡すと、「会社辞めたいな」「休職してるんだよね」というように将来に対して漠然とした不安を抱えている人がけっこう増えてきていて。なんでだろうと深堀っていったら、「25歳の壁」というものがあることを知って。みんな人生について悩んでるんだなあ、それって俺も一緒だなあと思って、その気持ちを一曲にまとめ上げようということになりました。

守屋:僕たちのバンドの状況と、「25歳の壁」という言葉がすごく重なって、新体制一発目の楽曲だったこともあり、この曲を出すタイミングとしてはすごくよいなと。

松下:新体制一発目の意思表明みたいな感じで、この曲でバシッと決められたらいいなと思っています。

池澤:あとは、最近の音楽シーンを見ると、ラブソングのヒット曲が多いように感じていて。その一方で、ロックバンドが何かに反抗するような曲はあまり目立たなくなっている気がしたんですよね。だからこそ、今この曲を出したいなと。

ーーとても痛快な楽曲ですよね。歌詞にも創意工夫が詰まっているように感じました。

松下:言葉遊びというか、音だけ聴くと歌っていることは同じに聴こえるけど、実はそれぞれのパートで言葉遣いがちょっとずつ違ったり。

池澤:歌詞を読んで新しい気づきがあるという体験も大事にしたいと思っていて。ちなみに、ビックリマークも、一つずつ半角にするか全角にするかこだわって決めたんですけど、それはサブスクの歌詞には反映されてなかった。

一同:(笑)。

松下:曲名も、「ッ」だけカタカナになっていて、きっと池澤の中でこだわりがあるんだろうけど、僕もなんで「ッ」になったのか分かってない。

池澤:「ッ」のほうがギャグっぽいというか、なんかね、字面がいいですよ。このほうがインパクトがある。

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