伝統とテクノロジーが融合した新たな形、テクノ屏風が開帳 YMO愛に満ちた生演奏やトークセッションで濃密なイベントに

『テクノ屏風開封の儀』レポート

 そして、トークセッションの最後は、ケンイシイ、YMOの著書を手掛けるライター・吉村栄一、テクノカルチャーとは切っても切り離せないDOMMUNE主宰の宇川直宏が登場。ケンイシイがYMOと出会った時のインパクトを「ゲームセンターに入り浸っていた小学校時代、友達の家に行くとお兄ちゃんが音楽をかけていて、それがゲーム音楽に聴こえ、『何の音楽か?』と聞いたらYMOで、すぐに両親に話をした」と明かす。宇川は、「子供たちの間でテクノポップブームが起こったことが重要。80年代はバブルによって、ゲーム、アニメなど、いろんなものが盛り上がったが、そのポップアイコンをすべて背負っていたのがYMO。学校の吹奏楽部が『RYDEEN』をカバーしていたほど」と、影響力の大きさを熱弁。弘石も「自分が過ごしていた田舎で当時流行っていたのは横浜銀蝿かYMO。つまりヤンキーかテクノかという二択だった(笑)」と懐かしそうに話した。

 宇川が、「『スター・ウォーズ』や『未知との遭遇』によりSFブームが到来し、冨田勲の『惑星』が世界的にヒットしたことで、日本の電子音楽が未来的なイメージをまとって世界に流通された。その後にYMOの時代が来た」という文脈の話をし、「YMOがやろうとしたのはエキゾチックを電子音楽でやるということ。だから、マーティン・デニーの『Firecracker』をカバーした。消費されないのは歴史をまとっているから。1978年の日本の未来イメージの極点をこのジャケットのビジュアルが果たしている」と、『Yellow Magic Orchestra』のアートワークの歴史的な意義を語った。

 話題は日本の音楽シーンの展望にも及んだ。宇川が「K-POPなどと比べてグローバルポップとして生き残れているわけではないが、再度エキゾ化してグローバルポップと完全に差別化すれば、YMOのような日本からしか生まれないキメラ的な音楽が生まれると思う」と提言。そして、「『TechnoByobu』は伝統的な技法で以って最先端の顔料を使って制作されている。それはYMOの革新性とも通じる。しかもそれをNFTが支えているという構図は2023年だからこそ」と『TechnoByobu』の存在意義に言及すると、吉村が「YMOの音楽もそうだが、登場時の衝撃以上に、100年経っても色あせないで光り輝いていくでしょう」と同意した。

 さらに、イベントの数日前にロサンゼルスへ飛んでいたという弘石。現地で収録したルー・ビーチとYMOが所属していたアルファレコードの創業者・村井邦彦の貴重なビデオメッセージも公開された。ルー・ビーチは初めて「東風」を聴いた時の衝撃や、いかにYMOが革命的な存在だったかを口にし、生で観る『TechnoByobu』の仕上がりに感嘆の声を上げた。村井は「日本の伝統的な文化と新しいアートの組み合わせはとても良い。伝統に新しいものが乗っかるから面白いものが生まれる」と笑顔で語った。

 トークセッションの締めくくりとして、弘石が「3月3日を過ぎたら、高橋幸宏さんの自宅に『TechnoByobu』を届ける約束をしていたが叶わなかった」と苦渋の表情で語り、1分間の黙祷が高橋に捧げられた。

 続く『TECHNOH LAB.』のブロックでは、能楽師・辰巳満次郎の能とケンイシイによるコラボレーションが展開された。「Firecracker」やケンイシイ自らの楽曲が流れる中、音に呼応するように辰巳の動きが激しくなっていったのは、どこまでが即興なのかが気になったが、こうやって伝統はどんどん更新されていくのだということを間の当たりに感じたパフォーマンスだった。

 『TechonoByobu』とは、ただ有名なジャケットを屏風として蘇らせただけではない。そこには日本の伝統とYMO愛、アート愛、カルチャー愛が詰まっている。『TechonoByobu』というひとつのアートピースから、日本文化の希少性をも感じ取ることができた。

写真=Victor Nomoto(Metacraft)

■商品概要
TechnoByobu(テクノ屏風)
・Number:TB-01
・Title:Electronic Fan Girl
・Artist:Lou Beach
・サイズ:五尺二曲(縦:約1500mm×横:約1400mm)
・重量:約4㎏
・NFT証明書:Startrail PORT
・価格:880,000円(税込)
・販売数量:50隻

<注文方法>
TechnoByobu公式サイトにて注文可能。
受注開始日時:2023年3月3日(金)正午

受注サイト(TechnoByobu公式サイト)

■期間限定展示会情報
『TechnoByobu(テクノ屏風)「OHIROME」』
・場所
弘法寺(東京都港区三田2-12-5)
https://koboji.jp/
・日程(予定)
3月11日(土)~3月26日(日)
開催曜日:月、火、金、土、日
平日:12時~18時
土日:10時~12時、13時~19時
※完全予約制

申し込みURL
https://technobyobuohirome1.peatix.com/

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