櫻坂46 三期生、『おもてなし会』で見せた11人の強力な個性 「Nobody's fault」から「BAN」「夏の近道」まで披露
今年1月5日に正式加入が発表され、以降Vlogを通じて連日メンバーが公開されてきた櫻坂46三期生。3月1日、2日には未公開だった最後の2名(村井優、山下瞳月)も紹介され、ついに11人が勢揃いした彼女たちが3月4日、5日にBuddies(=櫻坂46ファン)へのお披露目の場となる『おもてなし会』をぴあアリーナMMで開催した。1月中旬からYouTubeにて公開されてきたドキュメンタリー番組『私たち、櫻坂46三期生です』を通じて、オーディション合格から今日までの軌跡が紹介され、2月15日発売の櫻坂46 5thシングル『桜月』には三期生としてのデビュー曲「夏の近道」を収録。YouTubeにも同曲のMVが公開されるなど、11人の成長の過程がわかりやすい形で紹介されてきたが、それだけにこの『おもてなし会』ではどんな姿を見せてくれるのか、期待を高めていたBuddiesも多いことだろう。
しかし、『おもてなし会』ではそんな我々の期待を大きく上回る11人の逞しい姿を確認することができただけではなく、櫻坂46に対する強い思いやグループの一員として活動していく覚悟が伝わる、非常にエモーショナルなイベントとなった。筆者は2公演とも会場で観覧しているが、本稿では5日公演の模様を中心に感じたことを記していく。
『おもてなし会』はまず、小島凪紗のピアノ独奏からスタート。Vlogでは雪原の中で電子ピアノを演奏する姿が紹介されたが、この日は1万人が集まった大会場で、グランドピアノを使った華麗な演奏で観る者を圧倒させる。デビュー間もない新人が大舞台で物おじすることなく、楽しそうにピアノを弾く姿に見惚れた方も多かったことだろう。特に、今回の『おもてなし会』は“マスク着用での声出し”が解禁されたこともあり、その名演を前に思い思いの形でエールを送っていたのが印象的だった。
その後、イベント本編に突入するとメンバー11人がステージ上に勢揃い。代表して中嶋優月が「今日は少しでも私たちのことを知っていただけるように、11人精一杯頑張ります。皆さんで声を出して盛り上がっていきましょう!」と挨拶すると、客席からは盛大な拍手と声援が送られた。また、イベントの進行役として櫻坂46の冠番組『そこ曲がったら、櫻坂?』でナレーションを担当する声優の庄司宇芽香も参加。それぞれが前日の感想やこの日の意気込みを告げる中、まずは「2minutes SHOW」と題してメンバーが2分の持ち時間でそれぞれの特技をアピールしていく。
この「2minutes SHOW」では、11人の個性が遺憾なく発揮され、一人ひとりの魅力を存分に感じ取ることができた。トップバッターの石森璃花は手作りのエプロンを着用して、得意のオムライスの調理に臨む。ぴあアリーナMMのステージ上で料理をしたアーティストは間違いなく彼女が初めてだろう。そんな予想外の試みを前に、客席のオーディエンスは石森に声援を送り続ける。その後も遠藤理子がクラリネットの腕前を発揮し、小田倉麗奈はバイオリン演奏とゴルフの試し打ちという異色の組み合わせで観る者を驚かせる。小島はイベント冒頭に続き、今度は「条件反射で泣けて来る」をピアノで表現し、谷口愛季はアコースティックギターで「無言の宇宙」を弾き語り、中嶋は「On my way」に乗せてチアリーディングで会場の熱量を上げていく。これまでも坂道グループの先輩メンバーたちの中には音楽的素養をアピールする者は多数存在したが、ここまで優れたメンバーが揃っているのは稀ではないだろうか。この日は披露されなかったが、遠藤はドラム経験もあるだけに、今後は先輩メンバーたちとのセッションにも期待できそうだ。
「2minutes SHOW」はまだまだ続く。的野美青は得意のイラストで推しメン・小林由依を見事に描ききり、向井純葉は切り絵という独特の特技で三期生11人を「夏の近道」MVの世界を通じて見事に表現してみせる。村井優はこれまで隠していたバスケットボールの腕前を存分に発揮し、村山美羽はバトントワリングで高度な技に挑戦、山下瞳月は書道にてこれからの目標を「咲」の文字で表すなど、多方面にわたる特技の数々は今後三期生にとって大きな武器になると同時に、櫻坂46というグループにとっても可能性を広げるチャンスにつながるのではないだろうか。
「2minutes SHOW」が終了すると、EDM調のダンストラックに乗せて三期生がダンスを披露していく。11人で息の合ったパフォーマンスを見せる場面と同時に、一人ひとりの色が反映されたソロダンスもフィーチャー。こういう場面で改めて感じるのだが、先に触れたドキュメンタリー映像『私たち、櫻坂46三期生です』では不安な面や心細い場面も多々見受けられた彼女たちだが、この日は終始瞳を輝かせ、堂々とした佇まいでステージに臨む姿が印象的だった。短期間で人はここまで変われるし、成長できるのだという事実に驚くと同時に、感動したことは特筆しておきたい。
その後は三期生のグループ愛を試す「チーム対抗櫻坂46クイズ」、私服ファッションショーといった、彼女たちの素の部分が垣間見える企画が続く。そして、イベント後半には三期生にとって初のライブパフォーマンスへと突入。グループ加入2カ月の彼女たちの初ステージが1万人規模のアリーナ会場という事実もさることながら、難易度の高い先輩たちの楽曲を大舞台で披露することにも驚かされる。『私たち、櫻坂46三期生です』ではライブで披露するまでにはもうひと息といった印象だった彼女たちが、果たして今回のステージでどこまで成長しているのだろう……。
しかし、ここでもそんな不安は無用だった。「Overture」に続いて櫻坂46“はじまりの曲”「Nobody's fault」でライブがスタートすると、まずはそのシルエットからも11人の気迫がしっかり伝わる。センターを務めた村井の鬼気迫る表情と目力の強さは圧倒的で、ほかのメンバーも彼女に負けじとパワフルな歌とダンスでそれぞれの役割を全うしていく。ところどころで荒削りな場面もゼロではなかったが、それでも一丸となって「Nobody's fault」を届けようとする思いは十分に伝わってきた。
「Nobody's fault」でのシリアスな空気から一転、続く「五月雨よ」では山下をセンターに、透明感の強い歌声としなやかさ、美しさが際立つダンスでこの曲の世界観を見事に表現。また、「Buddies」では中嶋を中心に、幸福感に満ちた歌世界が展開されていく。中でも「Buddies」は観客のコールが加わることで、この曲が持つ力がさらに増幅したようにも感じられ、改めてライブは演者とオーディエンスの相互作用で作り上げるものなのだと実感させられた。