FAKE TYPE.が見せたキャリアを網羅したステージ 1stアルバム『FAKE SWING』から「ウタカタララバイ」セルフカバーまで

FAKE TYPE.、キャリアを網羅したステージ

 FAKE TYPE.が2023年1月6日、全国ツアー『VIVA LA SWING 2020s』のファイナル公演を東京・LIQUIDROOMで開催した。

 昨年11月にメジャーデビューを果たした彼ら。1stアルバム『FAKE SWING』の収録曲、インディーズ時代の楽曲、そして、映画『ONE PIECE FILM RED』挿入歌「ウタカタララバイ」のセルフカバーなど、全キャリアを網羅するようなステージを繰り広げた。

 チケットはソールドアウト。邦楽フェス系ファンから親子連れまで、幅広い層のオーディエンスがフロアを埋め尽くしている(全体的にオシャレ度高め)。開演時間ちょうどにトップハムハット狂(MC)、DYES IWASAKI(DJ)、サポートメンバーのJohngarabushi(Gr)、野良いぬ(VJ/アニメMVを担当する映像制作チーム・PPPのメンバー)が登場。大きな歓声が巻き起こるなか、アルバム『FAKE SWING』収録曲「真FAKE STYLE」でライブは幕を開けた。

 その後も「Deep Sea Swing」「Beauty Unique Boutique」とアルバムの楽曲を次々と披露。IWASAKIが繰り出すド派手でエキゾチックなトラック、トップハムハット狂の高速ラップと快楽的なフロウ、そして、楽曲の世界観とストーリー性と重なるアニメーションによって魅力的なエンタメ空間を生み出していく。音楽性の軸になっているのはもちろん、エレクトロスウィングだ。

 EDM、ハウス、ヒップホップと古き良きスウィングジャズを融合させたエレクトロスウィングは2010年前後からヨーロッパを中心に流行。そのムーブメントをいち早くキャッチし、自らの音楽性に取り入れたのがFAKE TYPE.だ。

 それぞれ個別の活動をしていたトップハムハット狂、DYES IWASAKIがこのユニットを結成したのは2013年。アルバム3作を発表した後、2017年に活動休止するが、2020年に再始動。活動を休止している間も彼らの楽曲はSNS、ストリーミングなどで聴かれ続け、YouTubeチャンネルの登録者数も飛躍的に増加した。それはもちろん、純粋に楽曲の力によるものだ。

 高揚感に溢れたビートとどこか懐かしい音像、華やかなメロディがひとつになったFAKE TYPE.の楽曲はライブ映えも抜群。この日も超満員のオーディエンスをしっかりと盛り上げ、会場全体を享楽的なダンスフロアに導いていた。ただ楽曲をつなげるだけではなく、曲間に挟まれる「お正月、どうしてた?」というユルめのトーク、そして、この日のために制作された映像(“FAKE TYPE.のMVに登場するキャラクターをメンバーが描いてみる”というYouTuber的な内容)も楽しい。

 ライブ中盤では、インディーズ時代の楽曲が続けて披露された。憂いを帯びたミディアムチューン「ツキ」、ダークファンタジー的なトラックと〈等身大のFAKE!正当化する嘘偽りと不当〉というラインが響き合う「FAKE! FAKE! FAKE!」、そして、きらびやかなミラーボールの光、EDM直系のトラックによってフロアを爆上げ状態にした「Bacchus」。イントロがはじまった瞬間に歓声が響き、サビに合わせて手を挙げる観客の姿からは、この3曲が完全に浸透していることが伝わってきた。そう、会場に足を運んだ人たちの多くは、活動休止前後からFAKE TYPE.をフォローしていたのだ。「ウタカタララバイ」の提供、メジャーデビューと華々しいニュースが続いた彼らだが、ここにきて注目度がアップしたのではなく、結成から9年間の活動、エレクトロスウィングへのこだわりと追求によって現在のポジションを得たのだと思う。

関連記事

インタビュー

もっとみる

Pick Up!

「ライブ評」の最新記事

もっとみる

blueprint book store

もっとみる