連載「lit!」第33回:フィロソフィーのダンス、Juice=Juice、櫻坂46……2022年、アイドル名盤の共通点は“シティポップ”に
長引くコロナ禍の中でも、現場が幾分活気を取り戻した感のあった2022年のアイドルシーン。新世代のグループが台頭し世代交代を印象づけた一方、コロナ禍を耐え抜いてきた中堅~ベテラン勢の安定感も改めて感じた1年となりました。今回はそんな2022年にリリースされたアイドルのアルバム及びEPから、音楽ファン必聴の10枚を紹介します。
『ノクターナル』/東京女子流
『愛の哲学』/フィロソフィーのダンス
『REFLEX』/SANDAL TELEPHONE
『terzo』/Juice=Juice
『As you know?』/櫻坂46
『Violet tears』/Task have Fun
『synchrotron』/Ringwanderung
『THE YEAR』/situasion
『Compact』/NELN
『yikes!』/HULLABALOO
コアな音楽ファンから安定した人気を誇るのが、ディスコやファンクなどブラックミュージックをベースにしたグループです。その先駆者とも言える東京女子流は、7年ぶりのオリジナルアルバム『ノクターナル』をリリースしています。この7年間、新しいサウンドアプローチにも積極的に挑戦してきた彼女たちですが、アルバム未収録になっていた楽曲をボーナスディスクにまとめ、2021年以降の現行モードによる1枚を完成させたのは正解だったように思います。AORを取り入れた「Viva La 恋心」、シティポップの現代的解釈とも言うべき「ストロベリーフロート」など、“大人の女子流”を強く印象づけながらも、初期作品やトレンドとのリンクも感じさせる傑作に仕上がりました。複雑なコーラスワークも、長いキャリアで培ってきた豊かな表現力の賜物と言えるでしょう。
同じく2010年代のアイドルシーンでファンキーな楽曲と高い歌唱力を武器にその人気を拡大、東京女子流とは2年連続でツーマンライブを開催しているフィロソフィーのダンス。アルバム『愛の哲学』はメジャーデビュー以降の集大成的な作品です。得意のディスコナンバーに加え、2ステップのリズムにY2Kを思わせる歌詞が楽しい「ウォータープルーフ・ナイト」など新曲群も充実。そして2021年リリースのシングル『カップラーメン・プログラム』カップリング曲ながらファン人気の高いシティポップナンバー「テレフォニズム」も収録されています。シティポップブームを牽引する韓国人DJ・Night Tempoも『FUJI ROCK FESTIVAL '22』出演時に自身がリミックスしたこの曲をプレイしていました。
現在のインディーズシーンにおいてソウル〜ファンク好きを直撃するキラーチューンを次々に送り出しているのが、SANDAL TELEPHONEです。キャリア初のフルアルバム『REFLEX』には、代表曲「Magic All Night」に次ぐディスコナンバー「恋の魔法使いにはなれない」をはじめ、思わず踊り出したくなるポップチューンが満載。90年代J-POPへのオマージュっぷりが楽しい「SYSTEMATIC」や「碧い鏡」のほか、ここにもシティポップを思わせる人気曲「レビュープレビュー」が収録されています。「Lightsurfer」の力強いドラムンベース路線も、いいアクセントになっていました。
ここまでの3作に共通して出てきた「シティポップ」というキーワードは、アリーナクラスの動員を誇る人気グループにも見られます。例えばJuice=Juice『terzo』には、シュガー・ベイブ「DOWN TOWN」、竹内まりや「プラスティック・ラブ」といったシティポップの大ネタカバーが収録されています。また櫻坂46の改名後初アルバム『As you know?』にもシティポップナンバー「制服の人魚」がありました。都会の大人の恋愛に結びつきがちなシティポップですが、この曲では学生の象徴「制服」というワードを合わせているのがなんだか新鮮にも思えます。