連載「lit!」第33回:フィロソフィーのダンス、Juice=Juice、櫻坂46……2022年、アイドル名盤の共通点は“シティポップ”に
インディーズシーンからも幾つか注目作を紹介していきましょう。まずはデビューから6年と中堅に入りつつあるTask have Funの『Violet tears』。ホーンセクションをフィーチャーした華やかな楽曲が中心で、特に「ひと夏ボーダー」はモーニング娘。「真夏の光線」を彷彿とさせる素晴らしい夏のソウルナンバーでした。
2022年に躍進を遂げたRingwanderungの『synchrotron』はボーカロイドの影響を感じる作風でしたが、クリエイター陣を見るとやはりボカロPとしても活動するMumeiが名を連ねています。ボカロP出身のクリエイターが作る楽曲がJ-POPシーンを賑わせる今、アイドルソングにもその流れが波及するのはもはや必然なのでしょう。今作では他にもニュージャックスウィングやオルタナなど様々なジャンルを取り入れながらも、アルバムとしての一貫性がきちんと保たれている点も素敵です。
situasion『THE YEAR』も「正せよ状況」「1988」などにボカロの影響が感じられましたが、全体としてはロック、EDM、テクノなど多様なジャンルが融合した一筋縄ではいかない作品でした。次作『amputasion』での実験的な作風を考えると、今後どのような音楽性に発展していくのかも楽しみです。
ここまでは全てフルアルバムですが、最後にEPとしてリリースされた2枚を紹介します。NELN『Compact』は、6・7・8・10月と立て続けにMVが公開された4曲と、新曲「JUKE」で構成された作品です。クリエイティビティとアイドル性が共存した楽曲群は、音でも映像でも楽しめるものばかり。アイドルシーンを駆け上がるにあたっては拡散される動画や同性からの支持がますます重要になってきており、NELNのような女性映像作家によるプロデュースは強みとして働きやすいかもしれません。
新世代グループの台頭が相次ぐ中、今年注目したいのがHULLABALOOです。最新EP『yikes!』は令和の電波ソングのような世界観のタイトル曲で幕を開け、「TCMCMCG」ではRIP SLYME「雑念エンタテインメント」のオマージュもありますが、後半になるにつれガラッとその表情を変えていきます。特にリリース前から音源化を熱望されていた「ブルー」はシューゲイザー風味溢れる名曲で、続く「TOKYO SEA deep dive」も夜の空気漂うラヴァーズロックが最高に気持ちいい1曲です。メンバーのハイテンションなキャラクターに気を取られがちですが、実は表現の幅が広いことにも驚かされます。
ということで、以上10作品を紹介しました。最後に2023年のシーンについて考えてみると、ここのところ解禁されつつある「ライブにおける声出し」がさらに進むことが予想されます。コロナ禍により声出しができなくなって以降、コールが入ることを前提とした楽曲は減少傾向にありましたが、今後は徐々に増えていくのではないでしょうか。2023年は現場を沸かせるアンセムが沢山生まれる年になることを願っています!
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