早見沙織、豪華な楽器隊を携えて届けたラグジュアリーなステージ 3年ぶりの有観客ライブを観て

早見沙織、3年ぶりの有観客ライブレポ

 と、これまでのセットリストを見返してみて、『GARDEN』『シスターシティーズ』という2作の楽曲を中心としていることに気づいた。今回のライブは新曲群を披露するというだけでなく、コロナ禍で延期となった『シスターシティーズ』のリリースツアー『早見沙織 5th Anniversary Tour “Your Cities”』や、そもそもでリリースツアーを開催できなかった『GARDEN』の楽曲を、約3年ぶりとなる有観客ライブでしっかりと届けよう、という意図があるのだろう。リリースから時間が経ってはしまったが、そのぶん育った楽曲たちをこうしてライブでパフォーマンスすることで、聴き手にとってはあらたな解釈が生まれたように感じる。もちろん、早見自身がここ数年でさらに歌うこと・演じることのキャリアを次々にステップアップさせていることも、楽曲により厚みや深みをもたらしているのは間違いない。

 ステップアップといえば、2021年〜2022年のリリースは早見にとって新たな扉を開け続け、歌手としてのステージをどんどん駆け上がった期間といえる。ぷす(fromツユ)やTK from 凛として時雨、渡辺翔といったクリエイターとの共作、『ダンジョンに出会いを求めるのは間違っているだろうか』や『RWBY 氷雪帝国』『聖剣伝説 Legend of Mana -The Teardrop Crystal-』といったアニメとのタイアップを経たことで、アーティスト・作り手としての早見沙織はより進化を遂げた。本編終盤で披露されたアップテンポかつエッジィなロックナンバー「視紅」や、終盤でライブタイトルにもなっている“夜明け”の演出も組み込まれた「Awake」は、その進化を象徴したうえで、音源以上に楽曲のポテンシャルを引き出しているようにも感じたことも記しておきたい。前半のハイライトが「Guide」なら、後半のハイライトは原曲よりもブライトな印象を受けた「Awake」だった。おそらくライブで体感しなければ、楽曲にこういった一面を見つけることはできなかっただろう。

早見沙織ライブ写真

 本編を終え、アンコールでは早見の楽曲においても一際輝きを放つ「Jewelry」や、1stアルバムから大事に歌われてきた「NOTE」などを披露したあと、3rdフルアルバムのリリースと同作を携えたツアーの開催が発表された。

 そして、筆者がこの日もっとも驚いたのはその後。アルバムから先行して、新曲「エメラルド」をパフォーマンスしたことと、その作詞・作曲・編曲を諭吉佳作/menが手掛けていることが明かされたからだ。現在19歳の諭吉佳作/menは、でんぱ組.incなどにも楽曲提供を行なっている気鋭のシンガーソングライター。早見は『ヒャダ ×体育のワンルーム☆ミュージック』(NHK Eテレ)でナレーションを務めており、その前身番組『前山田×体育のワンルーム☆ミュージック』の第一回に諭吉佳作/menが登場していた、という縁はあるものの、まさかここで繋がるとは思わなかった。楽曲自体も彼女の個性がふんだんに発揮された独創的かつポップな構成となっているので、リリースを待ちきれない人はアーカイブを視聴して楽しむといいだろう。先ほど早見は近作で新たな扉を開いていると述べたが、どうやら3rdアルバムの新曲たちもそれと同じ、もしくはそれ以上のサプライズがありそうだ。

早見沙織ライブ写真

 そしてアンコールは早見の1stシングル表題曲「やさしい希望」で幕を閉じる。彼女にとっては“はじまりの曲”だが、この日ここで演奏されたことは、また“次のはじまり”を予感させた。ライブ初めとして大満足だった公演の余韻に浸る間もなく、まだ全貌の見えない3rdアルバムをはじめとした“2023年の早見沙織”が待ちきれない。

早見沙織ライブ写真

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