江口拓也、早見沙織、種﨑敦美……『SPY×FAMILY』声優キャストの表現力に注目

 現在放送中のアニメ『SPY×FAMILY』(テレビ東京ほか)。任務の一環で家族を作ることとなった江口拓也演じる敏腕スパイ、ロイド・フォージャーが、種崎敦美演じる超能力者の娘 アーニャ・フォージャーと、早見沙織演じる殺し屋の妻 ヨル・フォージャーとともに、互いに素性を隠して生活しながら任務に挑むホームコメディ作品だ。

 ときに家族間の温かく笑いのあるやり取りを、ときにそれぞれの任務中の冷静な様子を声色を変え演じ分ける江口、種崎、早見の3人。『SPY×FAMILY』以外の作品で、またアーティストとして歌声を耳にする機会もある3人だが、本稿では『SPY×FAMILY』の主要人物役を務める3人の演技、そして歌声に着目することでその秀でた表現力を紐解いていきたい。

 江口演じるロイドは冷静沈着。スパイの任務中により低くなる声は深みのある大人の魅力を感じさせ、アーニャやヨルと出かけるシーンでは家族を見守る温かい声色に変化する。大人の落ち着きを感じさせながら表情豊かな声色でロイドを演じている江口だが、一方でアーティストとしての歌声は爽やかな明るさが感じられるものが多い。

 4月27日にリリースした2ndアルバム『EGURand』に収録されている楽曲「SŌIUMONDA」はダンサブルなシンセサウンドに呼応するように軽やかな歌声で、〈いつか終わってしまう夢 それならいっそ楽しんでいこうぜ〉と気負わない歌詞を歌い上げる。同アルバムに収録されている「PAPER BOY」はバンドサウンドがエネルギッシュな疾走感を感じさせる楽曲で、歌声も湧き出るような力強さを携えている。高音でもどこか太さを残す声はロイドの声と通じるものの、歌に感じる爽やかさはロイドの静謐とした印象とは全く異なっており、歌声とのギャップを見せた。

【4/27発売】江口拓也「SŌIUMONDA」MUSIC VIDEO / 2ndミニアルバム「EGURand」
「PAPER BOY」

 ヨル役の早見もソロアーティストとして活動している。表向きは内気で物静か、柔らかい物腰のヨル。一方で殺し屋としての任務中はクールで颯爽とした一面を見せる。そんなヨルを、早見は透明感のある声と静かな口調で柔和な印象を与えつつ、ときに鋭く冷たい声で演じ分けている。

 早見の最新曲「透明シンガー」は、透き通ったハイトーンボイスが生かされた楽曲。アップテンポなメロディとそこに挟まれるブレスが〈なんで いつも届かない〉という歌詞とリンクする切迫感を演出する。Aメロ、Bメロでの低い音域も含め、感情の移り変わりを描くような豊かな表現を聞き取ることができる。

早見沙織「透明シンガー」Music Video

 声の透明感を生かした「透明シンガー」のような楽曲がある一方、R&Bやヴェイパーウェイヴ、シティポップの要素が組み込まれた「garden」や「瀬戸際」ではシンガーとしての表現力が光る。「garden」では音に身をゆだねるように抑揚のある、伸びやかで自然体な歌唱を披露し、ベースが牽引するグルーヴィーなサウンドの「瀬戸際」では太さのある声で歌い上げる。声色だけでなく歌唱の質感を大きく変えることで別人かのような表現の幅を作り上げる早見は、アーティストとしての今後も楽しみな存在だ。

早見沙織「garden」MUSIC VIDEO
「瀬戸際」

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