ナオト・インティライミ、何度挫けても再起動して駆け抜けた歌手人生 “新人”であり続けた挑戦の歴史を振り返る

デビュー15周年を迎えた2025年を経て、アニバーサリーイヤーを締めくくるアルバムを完成させたナオト・インティライミ。『REBOOT』というタイトルを掲げた今作は、2010年から2015年にかけてリリースした曲たちの中から選んだ8曲の「REBOOT=再起動」。新たなアレンジを施し、今の歌声で再構築している。フレッシュな輝き方をしていると同時に、色褪せない魅力を放つ音に耳を傾けるのは、ファンにとって至福のひと時だろう。キャッチーなメロディが心地よいグルーヴと共に迫ってくるのを感じて、本作をきっかけにファンになる人もいるに違いない。収録されている8曲について、様々なエピソードも交えながらナオトに語ってもらった。(田中大)
「必死でしたね」30歳で3度目のデビュー、諦めなかった夢の存在

――過去の曲たちと向き合って、どのようなことを感じました?
ナオト:「この短期間でこの濃ゆい曲たちをよく書き上げたなあ」と。この曲以外にも書き上げつつ、アルバムも創りましたから、すごいペースでしたし、ずっとオンだったと思います。オンティライミ(笑)。
――(笑)。デビューしてからの最初の5年は、「高度成長期」と称している期間。ものすごく忙しかったはずです。
ナオト:必死でしたね。でも、今思えば楽しい日々でした。「あの年齢でよかったな」というのは、今となって思います。30歳での3度目のデビューだったでしょ? ということはあの期間は35歳までなので、勘違いがなかったんです。勘違いがなかったので自分の制作やライブに集中していましたし、いろんな人たちへの感謝がありました。忙しくて目が回ってたけど、心は散らかってなかったんです。
――3度目のデビューに至る人って、なかなかいないでしょうね。
ナオト:レーベル側とかも躊躇しますよね。30歳の新人との契約は重たいですし。
――躊躇しなかったのは、それだけナオトさんの音楽が魅力的だったということではないでしょうか?
ナオト:いやいやいや。違うかもなあ。うちの事務所に入れてもらったのも、「なんかいいやつで、ちょっと助けたい」くらいの感じで、最初は「マネージャーをやらないか? 音楽をやめなくてもいいから、裏方をやりながら続けたら?」って言われたんです。レーベル側も、曲というよりもライブを観て何かを感じてくれたみたいです。
――20代後半くらいになっても結果が出なければ区切りをつける人が多いですけど、諦めなかった理由は何だったんですか?
ナオト:僕、1回目のデビューで2年間やってだめで、あの時に折れてるんです。挫折を味わって引きこもりました。「才能ないかもな」「もう難しいかもな」と思ったのは、その8カ月だけかも。その時期を抜けて世界1周の旅に出て、その後に2回目のデビューをしてだめだった時は、もう完全に開き直っていました。諦めなかった理由は、夢の存在が大きいですね。「いつかワールドツアーをする」という夢が支えてくれていたのは間違いない。2回目でだめだった時も、「今はそういうタイミングじゃなかったのかな」と思っていました。
――そういう軌跡を通じてもファンにポジティブなエネルギーを届けてきたのがナオト・インティライミなんだと思います。「インティライミ=太陽の祭り」という名前、本当にぴったりですよ。
ナオト:太陽の祭りねえ。どうなんでしょうか? そうでありたいとは思いますけど。

――「タカラモノ~この声がなくなるまで~」も、まさにそういうエネルギーを感じます。リリースは2010年5月19日。2ndシングルですが、REBOOTに際してどのようなことを考えました?
ナオト:昔のオリジナルの感じをそこまで崩さず、リズムを今しっくりくるものにしたかったので、アフリカ、アフロのリズムを上手く散りばめました。世界の音楽シーンの中でアフロはこの3、4年ずっと激アツだったので、そういうものを取り入れるだけでも大きく印象が変わったのかなと思います。J-POPだとこういうリズムは遠い存在ですけど、「これだけメロディがJ-POPしてたらバレないだろう」と(笑)。うちのファンの方々は、世界中の音楽を無自覚で聴いてきているというのがあるんですけど。
――キャッチーなJ-POPとして聴きながら、無意識の内にリズムの英才教育を受けているでしょうね。
ナオト:日本一世界中のリズムを無自覚で受け止めている方々だと思います(笑)。あんなリズムで踊れるファン層って、なかなかいないでしょうね。例えば「ハイビスカス」も旅から帰ってきた直後に作ったから、普通にアフロビート。あのサビのリズム、他のJ-POPと較べたら明らかに異質ですけど、好きになってもらえました。だから今回の『REBOOT』でこういうことをやっても、そんなに違和感はないのかもしれない。
――メロディに主軸があるJ-POPでありつつ、ダンスミュージックとしての心地よさも絶妙なバランスで盛り込むことを探求し続けてきたのが、ナオト・インティライミということではないでしょうか?
ナオト:うん。そうですね。デビュー曲の「カーニバる↑?」もソカ、トリニダード・トバゴのリズムでしたから。今までに91カ国を旅してきた旅人系ミュージシャンですよね。
――「ありったけのLove Song(REBOOT ver.)」もその一例ですね。教会の聖堂をイメージできる清らかな響きでありつつ、心地よいビートの躍動を感じます。
ナオト:元々のこの曲も裏打ちのレゲエテイストがあるので、オリジナルのそういうところを活かしています。派手にリアレンジするというよりは、「ちょっと雰囲気を変えてみよう」という、人形のお洋服の着せ替えみたいな感じですね。
――ウェディングソングでありつつ、身体が動くダンスミュージックとしての風味も醸し出すJ-POPって、なかなかないと思います。
ナオト:この曲、「めちゃくちゃ踊れるよ、ナオト」って、コロンビア人のふたりが踊ってました。〈ありったけの愛唄ったラブソングを/キミだけの花束にしてきたんだ〉に合わせて踊っていて、「すげえじゃん! これで踊れるの?」って(笑)。そういえば、思い出したんですけど……「っ」マジックというのがありまして。このリズムにおいて、〈ありったけの愛唄った〉って、言葉尻でもう跳ねてるみたいな感じなんです。これが〈ありふれた愛の〉とかだとこういう感じにならないという。「っ」が入ってることで、いきなりサビ感が生まれたりもして。そういう「っ」のマジックを使ったりしていますね。
――日本語は母音が強い言葉だからグルーヴが出にくいとよく言われますし、実際その通りですから、「っ」や「ん」の使い方が重要ですよね。
ナオト:うん。「タカラモノ」もそうなんです。〈キミのことずっといつだって〉ですから。それがティライミの初期の手法だったかもしれないです。




















