カロンズベカラズ、EP『曲者』に詰まった島爺×ナナホシ管弦楽団が刻んできた歴史 10年越しの黄金ユニット誕生に寄せて

カロンズベカラズ、EP『曲者』レビュー

 島爺×ナナホシ管弦楽団(岩見陸)によるユニット「カロンズベカラズ」が12月16日、1st Digital EP『曲者』をリリースした。ふたりの活躍を追いかけてきたファンにとって、“10年越しに叶った夢”というべき、待望の作品だ。

 ネット上でカルト的な人気を博してきた歌い手・島爺と、驚くべきレンジの広さでフックのある楽曲を作り続けてきたヒットメーカー・ナナホシ管弦楽団。ふたりがお互いを認識したのは、ナナホシが制作したボーカロイド楽曲「あの娘のシークレットサービス」を島爺が歌唱した、2012年だ。

あの娘のシークレットサービス うたった【SymaG】

 その好相性はすぐにリスナーの知るところとなり、2013年の「MISTAKE」は“歌い手・島爺”の代表曲のひとつに。島爺がメジャーデビューを飾った後も、テレビ東京系アニメ『デジモンユニバース アプリモンスターズ』の主題歌に起用された1stシングル「ガッチェン!」(2017年)をはじめ、映画『東京アディオス』主題歌の「よだか」(2019年)、Netflixオリジナルアニメ『終末のワルキューレ』のEDテーマ「不可避」など、多くのタイアップ楽曲で共作を重ねてきた。

 個性の塊のようなボカロPたちによる勝負曲を繊細に歌い分けてきた島爺と、「楽団」の名の通り多人数のクリエイター集団ではと勘ぐりたくなるレパートリーを持つナナホシのコラボだけに、楽曲のテイストは七色に変わるが、変わらないのはお互いがまったく遠慮なしにぶつかり合っていることだ。特にナナホシが編曲を手がけた「不可避」のようなアート性の高い楽曲は、深い信頼関係なくして生まれないと確信できる。

不可避 【島爺/SymaG】

 同時に、卓越したギタリストでもあるナナホシは、島爺のライブにもたびたび登場してきた。バンドに華やかさと勢いをもたらす飛び道具的存在とも言えるが、ただの“ゲスト”というイメージはなく、島爺との軽妙なやりとりも含めて、“相方”というほうがしっくりくる。「もうふたりで組んじゃえよ」ーーと、少なくないファンが思っていたなかで、誕生したのがカロンズベカラズだったのだ。ふたりのやりとりはいつも軽やかだが、刻んできた歴史は軽んじられるわけがない。

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