南條愛乃、様々な出会いと支えの中で迎えられたソロデビュー10周年　「今はみんなと一緒に歩いている長い旅の途中」

（黒崎真音作詞曲は）「泣いてしまってなかなか最後までたどり着けない」

ーーこの2曲だけでもかなりトリッキーなのに、さらに「IRO」へと続きます。

南條：「IRO」が上がってきたときは本当にびっくりしました。「未知瑠さん、すごい！」と思いました。過去には『サントロワ∴』で未知瑠さん作曲、山本メーコさん作詞というコンビで「OTO」を作ってもらったんですが、あのときも「こんな大人っぽい曲を私が歌っていいの？　私、歌えるの？　私に合っているの？」とびっくりしたんですよ。当時はプロデューサーの西村（潤）さんが「こういう曲をやってほしいと、実は常々思っていたんだよね」と言ってくれて、「じゃあトライしてみます！」という感じだったんですけど、今回そのコンビがどんな曲を上げてきてくれるんだろうというワクワクから始まって。デモが届いたら譜割りも難しいし独特の雰囲気もあるしで「面白そう！」と思って、歌うのが楽しみな曲でした。この曲もお芝居というか声優として歌う印象があって、セリフを重ねる感じに感覚としては近かったです。

ーーここまで個性の強い曲が続くと、その次に持ってくる曲が難しいですよね。

南條：本当に難しかったですね。なので、ここは既存曲で聴き馴染みのある、かつエンディングに向かっていく感もある「ヒトリとキミと」で、お口の中をリセットしてもらおうかと（笑）。

ーースリリングな曲が続いたからこそ、「ヒトリとキミと」でホッとしますものね。

南條：そこまでが「おお、そうくるか！」という感じなので、「あ、知ってる人だ」みたいな（笑）。

ーーこのワンクッションがあるから、そのあとの「ヨルゴト」や「Lonely voyage」にも自然と入っていけますし。

南條：助かりました（笑）。あと、何気に作家さんで曲順を固めていたりもして。「最初の10歩」と「雨音と潮騒」は丸山さんの曲だし、そのあとも黒須（克彦）さんの曲が2曲続いていたりと、ちょっと味ごとにまとめてみた感じもありますね。

ーーその「Lonely voyage」ですが……。

南條：そうなんです！　これが私の中で一番化けた曲というか。最初、歌詞の付いてないデモが井内（舞子）さんから届いて、ちょっと切ない要素がありつつも、アップテンポで爽やかだし、素敵な曲だなと思っていたんです。そこから歌詞を誰にお願いしようかなと考えたときに、まみさんとかKOTOKOさんといったレーベルメイトの先輩とは何度もご一緒しているけど、ほかのレーベルメイトとアルバムの中でご一緒したことがなかったことに気づいて。それで、井内さんの曲を聴いていたら、ふと（黒崎）真音ちゃんの顔が浮かんできたんです。お願いできるか聞いてもらったら「ぜひ！」ということで、オファーさせていただいたんです。

　強いけど繊細なところもある子だし、「今、真音ちゃんって人生を旅として捉えたときに、何を見ているのかな？ どこを見て彼女は歩んでいるのかな？」ということが、ちょっと気になっていたんです。それで「旅」というコンセプトだけをお伝えして書いてもらったんですけど、言いたくても言えなかったこと、自分の言葉では発信できなかったこと、自分のコンテンツでは表に出すことができなかったことを書いてくれたのかなと……ある意味、託してくれたというか、その言葉一つひとつが温かいんだけど、同時に叫びに近いくらい尖ってもいて。

　今まで本当にいろんな楽曲を、たくさん歌わせてきてもらいましたけど、ここまで揺さぶられてしまったのは初めてのことでした。練習しなきゃと思って家で歌おうとするんですけど、途中で泣いてしまってなかなか最後までたどり着けない。真音ちゃんの気持ちが痛いほど伝わってきて、「これ、レコーディングできるのかな？」というぐらいだったんですけど、そこはせっかく真音ちゃんが素敵な言葉を重ねて、正直な気持ちを書いてくれたので、自分としても大事に歌いたくて。レコーディングの日も「ちゃんと歌わなきゃ、表現しなきゃ」って気持ちがあるから冷静を保てていましたけど、ちょっと気を抜くとヤバいよねという話を純之介さんともしていたくらい。ちょっと心の隙間というか扉を開けてしまうと、一気に気持ちが流れ込んでしまって、飲み込まれちゃうというか。最初に井内さんからデモをもらって「素敵な曲だな、キャッキャ」としていたところに、「本当に人間ってすごいな、言葉でこんな表現ができるんだ」と印象が180度変わった楽曲になりました。

ーー僕もこの歌詞には胸を締め付けられました。この「Lonely voyage」で最大のクライマックスを迎え、最後に「ハートリップ」「ジャーニーズ・トランク」でアルバムを締め括ります。

南條：これが10周年記念アルバムじゃなかったら、「Lonely voyage」は間違いなく最後に置いたと思うんですけど、10周年のお祝いでファンのみんなに想いを届けることもひとつ大事なコンセプトになっているので、やっぱりファンの方との関係性を歌っている「ハートリップ」はエンディング前に合っているのかなと思って。（やなぎ）なぎさんとは「一切は物語」のときにもご一緒していますが、あのときは作詞のみだったので、今回は作曲もお願いしました。

ーー「ハートリップ」は歌っていくことに対する覚悟が伝わる歌詞ですよね。

南條：人が去っていくところというのは何度も目にしてましたし、この曲を歌っていると「そっちの世界でも元気でな」みたいに、推し変して去っていく人の背中が見えてくるんです（笑）。見えなくなるまで歌い続けるというのはそういうことだよなと。なので、“去る者は追わず、来る者は拒まず”の精神で歌いました（笑）。

これまでの10年と11年目以降を「光」の後日談のようにしたかった

ーーそして、最後はアルバムを象徴する1曲「ジャーニーズ・トランク」です。

南條：『カタルモア』に入っている「光」の中に、主人公が破れた地図を握りしめて歩いている描写があるんですけど、そのときには地図に何が描かれていたかわからなかった。たぶん自分が行きたい場所とか書いてあったと思うんですけど、そこにたどり着けるかどうかわからなくて、歌うことに意味があるのかという悩みや不安をたくさん抱えたまま歩き出していく、そんな希望を込めた曲でした。その地図は5周年のタイミングに、「・R・i・n・g・」（アルバム『サントロワ∴』収録曲）という曲にも登場させていて。「光」のときはくしゃくしゃになって握りしめている地図だったけど、5年経ってその地図を開いてみたら、ファンのみんなと行った思い出がたくさん書き記してあった。「ここにも行ったね、あそこにも行ったね、あんなライブやったね、こんなツアーやったね」みたいな思い出がたくさん描かれていたという登場の仕方をしているんですけど、今回の「ジャーニーズ・トランク」でもその地図を持ち歩いているんです。

　そこにはこの先の夢も書き込まれているという意味で、これまでの10年と11年目以降を「光」の後日談のようにしたかった。なので、「光」を参考曲として作曲の藤間（仁）さんにお渡しして、「光」が持っている夜明け前の、明るくもないけど真っ暗でもないような湿った空気感がありつつ、熱が自分の中にこもっている感じを曲にしてくださいという、なんとも抽象的なことをお願いしたんです（笑）。実際、まさにという温度感ですし、イントロから旅っていう感じが伝わってきて、「この旅、カッコよかったんだなあ」みたいに思わせてくれる曲とアレンジに仕上げてくださって。今までいろんな作家さんたちの楽曲に支えられてこの10年やってこられて、なんて幸せなことなんだろうと、改めてこのイントロを聴いて思いました。

ーーアルバムはこの曲で終了しますが、旅の目的地に到達したわけではなく、これは通過点でもあり、同時に旅の前夜でもあるという。

南條：うんうん、そうなんですよ。「旅の途中」というコンセプトがまさにそれで。10年前の『カタルモア』では「もっと話をしましょう」と言って旅を出発させましたけど、10年経ってどこにたどり着いたのかと考えると、今はみんなと一緒に歩いている長い旅の途中。ただ10年という節目なだけで、振り返るきっかけがそこにあっただけ。それを音楽で表現できるのはすごいなと思います。

ーーMVにもそういう雰囲気があります。

南條：mochigome監督に「10年を振り返るようなこともありつつ、旅をしているので歩いているシーンが欲しいです。過去のこともあり、未来も見える感じにしたい」とお話して、スタジオにセットを作り込んでもらいました。その中には過去にリリースしてきた楽曲のモチーフになるものが飾られているんです。かつ、2番では過去のMVがコラージュみたいに差し込まれていて、オフラインを観たときに普段あんまり言わないですけど「エモっ！」と言っちゃうくらいでした（笑）。

ーーアルバムと同時発売のMV集『ジャーニーズ・トランク ～Memorial Music Clips～』では、これが最後に来るというのが本当にエモいんですよね。

南條：しかも、初期のMVから順番に観てくれた方はコラージュで差し込まれているMVも観たあとなので、単体で観るのとは違う感覚になりそうですね。

ーーMVもこの10年で数多く制作してきましたが、今振り返ってみてターニングポイントになった作品はありますか？

南條：「ゼロイチキセキ」ですね。ここからmochigome監督とご一緒しているんですけど、どういうMVがいいかという案出しを初めてさせていただいて、かなり意見を採用してもらったんです。それこそ私服っぽい感じでMVを撮ったり、しかも何着も着替えとかヘアチェンジもさせてもらって、自分の好きなゲームもあるし猫ちゃんもいるし、自分の家ではありえないほど綺麗な部屋もあるし（笑）。自分の色が「ゼロイチキセキ」から出始めたのかなという気がします。

ーー以前お話を伺ったときに、楽曲としても「ゼロイチキセキ」はターニングポイントだったとおっしゃっていましたよね。

南條：タイアップ曲で初めて作詞をさせてもらったのもそうですし、結構印象に残っていますね。

ーー「一切は物語」や「藪の中のジンテーゼ」のように世界観をしっかり作り込んだ作品も素敵ですけど、毎回カップ焼きそばが登場する日常的な作風も等身大感が出ていていいですよね。

南條：監督も隙あらば「今日、カップ麺食べますか？」と聞いてくるので（笑）、そのテンション感も含めて楽しいです。

ーーMV集はアルバムとは違った10周年感が伝わる作品だと思いました。

南條：今話していて思ったんですけど、毎回違った世界観になるようにと思いながらMVを作ってきましたけど、元になるかけらはすべて同じ人物から出てきたものなわけで、全部同じ引き出しから出ていることが「ジャーニーズ・トランク」から伝わるんじゃないかなという気がしました。

ーーまさにMVやアルバムジャケットに登場するトランクの中には、それが全部詰まっていたと。これまでソロ活動ではいろいろなことに挑戦してきましたが、この先新たにトライしてみたいことって何かありますか？

南條：ピアノアレンジアルバムとか作ってみたいですよね。私は歌わないで。

ーーえっ（笑）？

南條：南條楽曲のピアノインスト。まさに『FF XIV』がやっているからその発想なのかもしれないですけど、『A Tiny Winter Story』に収録されている「物語よ始まれと願う空に」でピアノを弾いてくれていたKEIKOさんが『FF XIV』楽曲のリアレンジアルバムでピアノを担当されていて、それが一生聴いていられるくらい素晴らしいんです。楽曲としても素敵な曲ばかりなので、ピアノアレンジにしても映えるんじゃないかな。でも、私が歌わなかったら歌詞が届かないですよね（苦笑）。あと、レコード（アナログ盤）も作ってみたくて。ファンアイテムとしても、ジャケ写が大きいと全然違うし。野外ライブもやってみたいです。フェスみたいな感じじゃなくて、鳥がチュンチュン鳴いて、木が揺れている音が聞こえてくるような自然の中で。それこそアコースティック編成で、癒しをテーマにやってみてもいいかな。

ーーそういうお話を聞くと、ここからさらに楽しくなりそうですね。その前に、来春には全国ツアーも控えています。

南條：『A Tiny Winter Story』を携えた今年のツアーはお客さんが声を出せない状況だからこそ、本編はMCなしで間にナレーションを挿入するという構成でやりやすさもあったんですけど、次はこういう雰囲気を出したいなという案はありつつ、それがどこまで具現化できるかはこれから監督と相談して、いい形で表現できたらいいなと思っています。

■リリース情報
5thオリジナルフルアルバム
『ジャーニーズ・トランク』
発売日：2022年12月21日
品番／価格：＜2CD+Blu-ray＞GNCA-1629 / 税込価格￥7,150
発売元・販売元：NBC ユニバーサル・エンターテイメント
https://lnk.to/yoshino_nanjo_journeystrunk

＜収録曲＞
・Disc1／CD INDEX
01.blue -青の記憶
02. 最初の 10 歩
03. 雨音と潮騒
04. シンプル
05. EVOLUTiON：（TV アニメ『進化の実～知らないうちに勝ち組人生～』OP テーマ）
06. この胸に名もなき星
07. 静夜行
08. IRO
09. ヒトリとキミと（TV アニメ『天才王子の赤字国家再生術』ED テーマ）
10. ヨルゴト
11. Lonely voyage
12. ハートリップ
13. ジャーニーズ・トランク

・Disc2／CD INDEX＞
01. 鏖鋸・シュルシャガナ／『戦姫絶唱シンフォギア G』月読 調
02. SENSE OF DISTANCE／『戦姫絶唱シンフォギア GX』月読 調
03. 冬がくれた予感／スマートフォンゲーム『ラブライブ！スクールアイドルフェスティバル』 BiBi～絢瀬絵里・西木野真姫・矢澤にこ from μ's～
04. Lost Heaven／PC ゲーム『シュヴァルツェスマーケン 殉教者たち』リィズ・ホーエンシュタイン
05. ココロノエデン／『探偵オペラ ミルキィホームズ』明智小衣

・Disc3／Blu-ray INDEX
・ジャーニーズ・トランク MV (short ver.)
・南條一間 ～シーズン 6～（全6話）

＊初回生産分特典
・特製スリーブケース仕様
・フォトブック（28P）
・「南條愛乃 Live Tour 2023 ～ジャーニーズ・トランク～」ライブ先行予約応募用紙（シリアル コード付）

『ジャーニーズ・トランク ～Memorial Music Clips～』
発売日：2022年12月21日
品番／価格：＜Blu-ray＞GNXL-1009 / 税抜価格￥5,500（税込価格　¥6,050） ◯ 発売元・販売元：NBC ユニバーサル・エンターテイメント

＜収録曲＞
・Blu-ray INDEX
01. blue <short size>
02. 君が笑む夕暮れ
03. あなたの愛した世界
04. 黄昏のスタアライト
05. きみを探しに
06. ゼロイチキセキ
07. 光のはじまり
08. 一切は物語（feat.やなぎなぎ）
09. 君のとなり わたしの場所
10. サヨナラの惑星
11. 藪の中のジンテーゼ
12. believe in myself -acoustic arrange making MV
13. 涙流るるまま
14. EVOLUTiON：
15. A Tiny Winter Story MV version
16. A Tiny Winter Story Lyric Video version
17. ヒトリとキミと
18. ジャーニーズ・トランク
＊初回生産分特典：特製スリーブケース

■ライブツアー情報
『南條愛乃 Live Tour 2023 ～ジャーニーズ・トランク～ 』
＜開催日時／会場＞
2023年4月23日(日) 相模女子大学グリーンホール（神奈川）
2023年4月30日(日) NHK 大阪ホール（大阪）
2023年5月3日(水・祝) 刈谷市総合文化センター 大ホール（愛知）
2023年5月7日(日) 立川ステージガーデン（東京）
＜チケット発売情報＞
＊ファンクラブ「ごきんじょるの 友の会」会員先行
2022年12月2日（金）18:00～2022年12月15日(木）23:59
＊アルバム『ジャーニーズ・トランク』CD 封入先行
2022年12月21日(水)10:00～2023年1月15日(日)23:59
ライブツアーに関する詳細はこちら
https://www.gokinjolno.jp

■関連リンク
オフィシャルサイト：https://nbcuni-music.com/yoshino_nanjo/
オフィシャルファンクラブ「ごきんじょるの友の会」：https://gokinjolno.jp/
公式Twitter：https://twitter.com/nanjolno
公式Instagram：https://www.instagram.com/nanjolno/

サイン入りチェキプレゼント

南條愛乃のサイン入りチェキを3名様にプレゼント。応募要項は以下の通り。

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＜締切：2023年1月4日（水）＞