第2期fripSide、南條愛乃が駆け抜けた13年間の集大成と託したバトン 涙と笑顔の入り混じったPhase2ラスト公演レポ
第2期fripSide最後のツアーとなる『fripSide Phase2 Final Arena Tour 2022 -infinite synthesis: endless voyage-』の最終公演が4月23日、24日にさいたまスーパーアリーナで開催された。このツアーをもって南條愛乃(Vo)がfripSideを卒業することもあり、さいたまスーパーアリーナ2DAYS公演には約13年にわたる“fripSide Phase2”の歴史を総括するようなセットリストが用意されていた。23日のDAY1公演は第2期fripSideはじまりの歌である「only my railgun」からスタートし、その歴史を追うような形でセットリストが進行していった。
南條にとってfripSide最後のステージとなる24日のDAY2公演は、スタート前から客席が熱気に包まれていることが、“300レベル”の客席からも十分に窺えた。そして暗転と同時に、会場一面がオレンジ色のペンライトで染まると、オープニング映像とともに「stay with you」「stay with you -ver.2022-」と13年の積み重ねを感じさせるような2曲が流れる。このエモーショナルな演出に続いて、ステージから客席に向けて眩いオレンジ色の照明が放たれると、ライブは2017年5月発売の12thシングル曲「clockwork planet」からスタート。ステージ後方の高台から登場した南條は、手前に位置する八木沼悟志(Syn)や、気心知れたバンドメンバーたちの演奏に乗せて伸びやかな歌声を届けていく。また、「The end of escape」ではエッジの効いたギターリフと疾走感の強いバンドアンサンブルといった、ライブならではのハードタッチのアレンジで攻め続ける。
2曲終えると、この日最初のMCヘ突入。南條が「私の卒業式へようこそ!」と挨拶すると、八木沼は「この日がやってきてしまいました。みんなのほうが、やっている僕らよりもよっぽどたくさんの思いがあると思うんですけど、今日はみんなの思いを受け止めて、そして僕らの最大の演奏と歌とダンスで盛り上げて、みんなに笑顔になって帰ってもらいたいと思います」もこれに続ける。続けて、南條は「私、朝起きたら思ったよりすごく冷静で。こんな感じで卒業式の朝って始まるんだと思っていたら、急に緊張してきて(苦笑)」とfripSideとしての最後のステージに臨む現在の心境を吐露しつつ、「でも、最後まで皆さんと楽しい気持ちで過ごすことが第一なので、一緒に楽しみましょう!」と前向きなコメントを寄せた。
その後は久しぶりに演奏された「crossroads」に対し客席からため息のような声が漏れたり、「pico scope -SACLA-」では前曲の感傷的な空気を切り裂くようなイントロに湧き上がったりと、緩急に富んだ楽曲が続き、「killing bites」からはアルバム『infinite synthesis 4』(2018年)のブロックへ突入。中でも、「Edge of the Universe」や「under a starlit sky」といったfripSideならではの王道感に満ちた楽曲では、演奏のエネルギッシュさと比例してオーディエンスの腕の動きもより一層激しさを増していく。さらにダメ押しの「BLACKFOX」へと続くと、南條の「もっと、もっと!」の煽りに引っ張られるように客席の熱気もどんどん高まっていき、続く「Love with You」ではダンサーを交えた華のあるパフォーマンスと相まって、ライブはこの日何度目かのクライマックスへと到達した。
ライブ中盤では、かつてのツアーメンバーでもあった川﨑海によるEDM/エレクトロ色の強いダンサブルなトラックに、バンドメンバーが躍動感に満ちた演奏で加わっていくインストセッションも披露。衣装を着替えた南條の再登場に合わせて「final phase」「dual existence」からライブは再開した。“Phase2”後期の代表曲であると同時に、『とある科学の超電磁砲T』のオープニング曲という第2期fripSideとは切っても切れない関係にある作品から生まれた楽曲群は、楽曲の完成度のみならずライブでの映え方も非常に強力だ。
続くMCでは、バンドメンバー紹介の合間に南條が八木沼のシンセを使って「きらきら星」を弾き始める一幕も。これに合わせて八木沼が「きらきら星」を歌い始めるというユルさも、fripSideのライブの魅力だろう。そんな和やかなひと時を経て、ライブは「legendary future」「worlds collide」「endless voyage」とラストアルバム『infinite synthesis 6』から洗練された楽曲が続く。かと思えば、「memory of snow」や「late in autumn」といった最初期のエモーショナルなミディアムナンバーも繰り出され、会場の空気は感傷的なものへと変わっていった。そんな中、南條がファンや関わったすべての人たちに向けたメッセージが綴られた「Dear All」で南條が歌いながら感極まる場面も。まるでこの日=卒業式のために用意されたような1曲だけに、目の前の光景と今自身がいる環境などすべてのシチュエーションがこの涙につながったのかもしれない。だからこそ、歌い終えたあとに「私しか泣いてないじゃん!(笑) 私は振り返るのは(ライブ翌日の)25日って決めていたのに。約束破っちゃった(苦笑)」と恥ずかしそうに笑みを浮かべる姿も、なんとも彼女らしいと感じた瞬間だった。