“第5期”WANDS、『SLAM DUNK』ED曲「世界が終るまでは…」に対する葛藤 「求められるものに応えられる自信がなかった」

WANDS「世界が終るまでは…」への葛藤

上原「むちゃくちゃなことをやってるバンドだなとは思います(笑)」

 WANDSは2020年以降、過去曲を“WANDS 第5期 ver.”として積極的にリリースしてきた。これまで、「もっと強く抱きしめたなら」「時の扉」「Just a Lonely Boy」「愛を語るより口づけをかわそう」「Secret Night ~It’s My Treat~」「明日もし君が壊れても」「世界中の誰よりきっと」「錆びついたマシンガンで今を撃ち抜こう」「Brand New Love」「MILLION MILES AWAY」「Jumpin’ Jack Boy」と、WANDSの歴史を彩る名曲の数々が今のWANDSとしてアップデートされている。そして、この8月、ついに「世界が終るまでは…」が“WANDS 第5期 ver.”としてデジタルリリースされた。ファンにとっては、まさに念願とも言えるニュースだったはずだ。

柴崎:元々の「世界が終るまでは…」の完成度って、ものすごく高いと僕は思っていて。今、当時のオケでライブをしても全然違和感がないですからね。なので、この曲を“第5期 ver.”にするのはなかなかハードルが高かったんです。ただ、ここにきて“第5期”として成熟してきた実感があったし、今やれば第5期スタート時には出来なかったであろう良いものができるんじゃないかという自信が出た。前々からこの曲の“第5期 ver.”を出して欲しいという声をたくさんいただいていたのは知っていたので、「じゃ、やってみようか」と。

 柴崎がアレンジを手掛けた「世界が終るまでは…」は、原曲の魅力をしっかりと継承しながら、今の時代に鳴らすにふさわしいサウンドスケープを描き出す。WANDSのボーカリストとしての強い矜持を感じさせる上原のボーカリゼーションも素晴らしい仕上がりだ。

柴崎:この曲の肝心かなめの部分は大事にしたかったので、基本的に大枠のアレンジは生かしていますね。その上で、今回のバージョンの良さをしっかり感じてもらえるように、細かい部分のフレーズを少しずつ変えていきました。大きかったのはミックスまで自分でやったことかな。この曲は完成度が高いとは言え、やっぱり1994年の作品なので、音の質感やレンジ感は今の時代とは違うバランスだったりするので、そこを2022年に出す曲として自然な形にするというか。今の自分が聴いて気持ちいいと思えるバランスにした感じですね。マスタリングで一度パキッとした音になりすぎてしまった瞬間もあったんだけど、そこは上原の意見もあって、マスタリング前のミックスしたままの音でリリースしました。

上原:“第5期”をスタートさせた当初は、それまでのWANDSのボーカルに寄せないといけないという意識がどうしても拭えなかったんですよ。ただ、僕にもボーカリストとしてのプライドもあるので、活動を続けていく中で自分の色を少しずつ出していくようになった。今回の「世界が終るまでは…」のボーカルに関しては、ほぼ自分ですね。途中、録りながら何度か壁にぶつかる瞬間はありましたけど(笑)、“第5期”WANDSとしての歌がしっかり刻めた自負はあります。元々の声質が初代ボーカルの上杉さんに似ているところもあるので、そこはもうリスペクトをして受け入れつつ、僕ならではの味をしっかり出せたと思います。

 メンバー編成はもとより、ボーカリストまでも2度のチェンジを経験、約31年のキャリアを5つのフェーズに分けて活動を続けているWANDSは、日本の音楽シーンにおいて稀有な歩みを持つバンドと言えるだろう。初代メンバーでありながら、途中で脱退、今再び正式なメンバーとなっている柴崎と、最新フェーズの顔を担う上原の2人は、WANDSというバンドの存在をどう受け止めているのだろうか?

WANDS
1994年にリリースされたWANDS『世界が終るまでは…』ジャケット

柴崎:脱退して以降ほんとにたまに思っていたんですよ。あのままWANDSを続けていたらどうなっていたのかなって。単なる一つの興味であって後悔とか未練とかではないんだけど、そこにはたぶんやり残した感が少しはあったんだと思うんです。なので今の“第5期”には、そこへの興味をぶつけ続けている感じはありますね。WANDSを守っていきたいというよりは、ここで終わらせたらもったいないんじゃないか、みたいな感情が強いんだと思う。楽曲にしたってね、ちょっとずつ忘れられていくのはもったいないじゃないですか。上原という新たな才能が加わったことで、ここから先もおもしろいことができると確信しています。WANDSというバンドの可能性は尽きないんですよね。

上原:けっこうむちゃくちゃなことをやってるバンドだなとは思いますよ(笑)。海外ではたまにありますけど、日本ではね、ボーカリストを変えて続けていくバンドってなかなかないですから。僕自身当初は「そんなの成立しないだろ!」って、WANDSのファン以上に思っていた口なんで(笑)。ただ、たくさんの名曲を持つバンドに誘っていただけたことは、いちボーカリストとして喜びと誇りを感じる出来事でもあったので、思いきりやっていく、俺が入ったからこそできることを追求していくのみだなって思ってます。最近は今の形を受け入れてくれているファンの方もすごく多いので、それはすごくありがたいですね。

 “WANDS 第5期 ver.”として新たに生まれ変わった「世界が終るまでは…」は、楽曲が持つ色あせることのない魅力を携えたまま、未来に向けて聴き継がれていくことになる。また、今年12月に公開される映画『THE FIRST SLAM DUNK』を機に、かつてのTVアニメ『SLAM DUNK』はもちろん、エンディングテーマであった「世界が終るまでは…」、そしてWANDSの存在にも再び大きな注目が集まることになるはずだ。31年のキャリアを持つバンドがここから生み出す大きなうねりに期待したい。

■関連リンク
WANDS公式サイト
https://wands-official.jp/

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