曽我部恵一(サニーデイ・サービス)×難波里奈 特別対談 世代を超えて愛される喫茶店と、そこに根付く文化の魅力

曽我部恵一×難波里奈、喫茶店の魅力

曽我部恵一が唸った神保町「神田伯剌西爾」のコーヒー

――曽我部さんが喫茶店で気になるメニューってありますか?

曽我部:51歳になって、ようやくコーヒーが美味しいお店がいいなと思うようになりました。昔は雰囲気とか、居心地を重視していたんですけど、今は自分好みの味のコーヒーが飲みたいなって。

難波:今思い出しましたが、イベントの前に初めて顔合わせをする時、神保町の「神田伯剌西爾」という、私が好きなお店にお連れして。曽我部さんがそこのコーヒーを気に入ってくださって。打ち合わせの間に、2杯か3杯飲まれたんですよ。それがすごく嬉しくて。お店の方も曽我部さんがお好きになってその後も飲まれていることを知って、とても喜んでいました。

曽我部:本当に美味しかったですね。コーヒーの味って1番を決められなくて。それもすごくいいなと思うんですね。「ここの店が1番うまい」というのが、それぞれの中にある。みんなバラバラというのが、いい文化だなと思います。

難波:「自分が好きじゃなくても否定しない」というのは、コーヒーを飲むようになって、感じるようになりました。「コーヒーは美味しい、不味いがあるんじゃなくて、好きかそうじゃないか、があるだけだよ」ということを、大久保にあった「ツネ」(2022年10月31日閉店)のマスターがおっしゃっていて。曽我部さんがおっしゃったように「自分が好きじゃないから、そのお店はナシ」じゃなくて、その店を大好きな方がいっぱいいるから、何十年も続いているわけで。

曽我部:バンドと似ているかもしれないですね。ファンの人って、そういう気持ちかもしれない。

――最近はグルメレビューサイトを見て、お店の良し悪しを図る傾向が強いですけど、本当は数字で表したり、優劣をつけるものじゃない気がしますね。

曽我部:文化というのは、総じて順番をつけたり点数をつけたりするものじゃないんですよね。今SNSとかネットのクチコミがあるから、点数や評価をつける風潮になっているけど、本来はそういうものじゃなくて。それって「物事をつまらなくしていく」ということをわかってほしい。個人的には、なんでも点数をつける文化はあまり好きじゃないです。

難波:数値化は1つの目安になるとは思うのでどうしても自分で選べない人は、それを参考にしてもいいと思うんですけど、やっぱり自分の好きなものが限定されてしまう。周りの目を気にするよりも、自分の「好きなこと・もの」を追求した方が、人生は面白くなると思います。

曽我部:やっぱり、売れているものだけ見ていたらつまらない。評価に関係なく、いろんな物事に興味を持てたら、もっと広い豊かさに繋がるんですよね。それは飲食店に限らず、音楽でも映画でもそうですけど。

音楽と喫茶店の“失敗できる”という共通点

――それで言うと、取材の後お昼をどこで食べようか、レビューサイトで調べていたんです。それでトップに上がっているお店の投稿写真を見たら、みんな同じメニューを頼んでいたので「本当は違うのを食べたいけど、これを頼むのが正解なのか」と思ったんです。それって、お店に入る前から自分の選択肢が狭まっているんですよね。

曽我部:やっぱり編集的になっちゃうでしょ? いろいろなものがあって「じゃあ、これがセオリーか」みたいな。偶然とかたまたまとか、そういうのが本当は重要なんですけどね。

難波:みんな忙しすぎて「いちいち自分で探す時間がない」というのはもちろんわかりますけど。

曽我部:実は、フラッと入ってみようかなとかは、その人にしかない直感なんですよね。そういう判断が、もっと大事になっていったほうがいいと思うんですよ。動物的な勘というか。今は、すごく編集的な、正解を出していくことが正しいとされているかもしれない。でも、その人の勘で動くというのは、物事で1番大事な気がするんですよね。いろいろな人の意見とか情報が無数にある時代だから、正解を出さざるを得ないと思うんですけど、自分の直感を信じるのは大事。

難波:その直感は一生使えるものですからね。歳をとってもそれがあることによって、楽しいことを見つけられたり、危険を回避したりとか、そういうことに活きていく。

曽我部:多分、難波さんも喫茶店選びでめちゃくちゃ失敗していると思うんです。いいなと思って入ったところがイマイチだったりとか。

難波:あります。背を向けたまま水を置かれたこともありましたよ(笑)。

曽我部:それが経験値になっていくし、そこで培ったものこそが“知性”なんですよね。本で読んだこととか、ネットで検索したことじゃない。リアルな知性というものが積み重なって、その人が形成されていく。僕もレコードで「絶対いいと思ったのに」とか、いろいろな失敗をしたこともあるし。それが自分の勘や感性を磨いていくと思うんですよね。

難波:失敗がないと、何がいいかの区別がつかないですし、仮に失敗しても会話のタネになりますよね。

曽我部:失敗は1番ネタになるし、楽しいですよね。純喫茶には、まだそういう失敗できるチャンスが残っている。音楽もそうで「こんなのよく作ったな」という、しょうもないものもあるんですよね。それが僕は楽しいし、純喫茶と似ているかもしれない。

難波:それがないと、個性がなくなって全部一緒になっちゃいますもんね。

曽我部:そうそう。最終的にすべてがチェーン店になっちゃう。

難波:曽我部さんの曲はすごく喫茶店的というか……(机の上にある「茶館シリーズ」を見て)このキャンディもそうなんですけど、何がすごいかって音楽の根底にあるものがずっと変わらないと思っていて。とはいえ、ただ変わらないだけなら古くなっちゃうんです。でも曽我部さんの音楽は、いつ聴いてもカッコいい。曲ごとに作っている年代は違うのに、聴く側が毎回感動するのは、曽我部さんが常にご自分の好きなことをしていながらも時代と一緒に変化しているから。“変わらないために、変わっているすごさ”みたいなことを喫茶店にも、曽我部さんにもいつも感じるんですよね。

 カンロ飴はもともと醤油と塩と砂糖と水飴の、ちょっと甘じょっぱいものだったじゃないですか。今食べても懐かしいし、美味しいですよね。ほっとする味わいの一方で、古いとは全然思わなくて。そんな普遍的な魅力を同じカンロの飴として「茶館シリーズ」は引き継いでいると思いますし、曽我部さんが20年前に作った曲を聴いても、やっぱり当時と同じように今も感動できる。そういう意味では、曽我部さんって喫茶店みたいだなと思いますね。私が喫茶店を好きな理由は曽我部さんを好きな理由と似ているなと思います。いろいろな面があるけど、変わらない芯みたいなものがあって安心できるんです。

曽我部:ありがとうございます。

――ちなみに、「ノンシュガー茶館シリーズ」で好きな味はどれでしょうか。

曽我部:子供の頃からコーヒーキャンディって大人な感じがして、すごく好きだったんですよ。なので「珈琲茶館」のエスプレッソ味かな。口が寂しい時によくキャンディを舐めるんだけど、派手な味よりもこれ(エスプレッソ味)くらいの、ほのかな味わいが良いんですよね。あと「紅茶茶館」のロイヤルミルクティ味も美味しかったです。

難波:「ミルク茶館」のミルク味も好きでしたし、「珈琲茶館」のカプチーノ味は温かい牛乳を飲みながら、口の中で溶かして食べるのが美味しかったです。味だけじゃなくて、見た目もおはじきみたいで可愛らしいですよね。

――お二人は、どういう場面で「茶館シリーズ」を召し上がりたいですか?

曽我部:例えば、夜にお腹が空いたってわけじゃないけれど、何か食べたいかなって思ったような時に僕はいただきますね。

難波:部屋の中で作業をしている時とかに、口の中に入れておいて、ちょっと喫茶店にいる気分で原稿書いたりとか、気持ちがゆるやかな時とか、移動中とかですね。喫茶店に行くまでの道のりとか、カバンに何粒か入れておいて、気が向いたら食べたいです。

曽我部:ところでカンロの定番商品は、いつからあるんですか?

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――「カンロ飴」は1955年に開発されたので、67年前になります。「ノンシュガー珈琲茶館」は2001年に生まれました。

曽我部:もちろん僕も好きだし、長年続くヒット商品というのはすごいですよね。時代によってマイナーチェンジをしてるかもしれないけど、どの時代の人にも好まれているというのは、びっくりしますよね。流行に合わせているわけではないじゃないですか。でも、残り続けているのは何かあるんでしょうね。

難波:曽我部さんの音楽もそうです。デビュー当時からのファンはもちろん、今10代や20代のファンもいらっしゃるじゃないですか。どの年代が聴いてもグッとくるものを作るにあたって、どんなことを注意して作られているんですか。

曽我部:こっちがそれを望んで作ることができないし、エヴァーグリーンな音楽を作ろうと思ってやっているわけでもないから、わからないですね。その時、自分のやりたいことをやっているだけです。カンロ飴もそうだし、喫茶店もそうだけど、歴史を重ねて時代の方がついてきているのは素敵だなと思います。合わせることばかりがみんな上手くなっていきますけど、そうじゃないものもある。素晴らしいですよね。

難波:今、お話を聞いていて思ったのが、私は曽我部さんの好きなものとか、見てきたものとか、その経験や知識から生まれるものをすごく信用していて。「曽我部さんが作っているんだから、きっと良いに決まっている」みたいな。喫茶店も、店員さんが入れ替わったり、内装が変わったりしても、あのマスターがいる限りお店がブレることはない、という信頼がある。その人の心とか想いを感じるものがとても好きなので、喫茶店や曽我部さんに惹かれるのだと思います。

曽我部:僕も、自分の好きなアーティストは何をやっても受け入れられる。失敗作でも好きですしね。例えば、ジョン・レノンとか、音楽以外も全部好きですから。おそらく、その人が好きなんですよね。

難波:カンロの飴もいろいろな味がありますけど、やっぱりどの商品にも安心感がある。ちゃんと今の時代に合わせた美味しいものを作ってくれていますよね。それこそ「茶館シリーズ」は味も美味しいですし、これは“どこにでも持ち歩ける喫茶店”だなと思います。

曽我部:その表現は素敵ですね。

難波:どこにいても、何をしていても、口に入れた途端に、一瞬で喫茶店にいるような気分を味わえるのがいいですよね。

■商品情報

曽我部さんと難波さんが召し上がったカンロ ノンシュガー茶館シリーズは、本格的な香りと味わいが楽しめるノンシュガーのキャンディです。
詳細はこちら:https://kanro.jp/pages/sakan

■撮影協力
『トロワ・シャンブル』
〒155-0032 東京都世田谷区代沢5丁目36−14
お問い合わせ: 03-3419-6943

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