中森明菜という唯一無二のボーカリストを堪能できるライブ7本一挙放送 珠玉の映像で味わう鮮烈なパフォーマンス

WOWOWで堪能する中森明菜のライブ

『中森明菜”UTAHIME"AKINA NAKAMORI PARCO THEATER LIVE』

 異色なライブということでいえば、やはり『中森明菜”UTAHIME"AKINA NAKAMORI PARCO THEATER LIVE』に尽きる。これは1994年12月に渋谷のパルコ劇場で5日間にわたって行われたスペシャルな公演。通常の彼女の場合、2000人以上の大ホールでのツアーが一般的だが、パルコ劇場は500人に満たない小劇場。他のツアーとはまったく違うステージ空間を堪能できるだろう。

 紙吹雪が舞う中、タバコに火をつけるという衝撃的な彼女の姿からパフォーマンスはスタートする。しっとりと歌い始めるのは岩崎宏美のカバー曲「思秋期」。ストリングスを交えたアコースティックなオープニングは、まるで映画を観ているようだ。続く山口百恵の「愛染橋」、石川セリの「ダンスはうまく踊れない」といったカバーをしっとりと披露する姿に、彼女の歌い手としての表現力の凄みがにじみ出ている。

 「スローモーション」からは自身の持ち歌が続くのだが、基本的には淡々と歌い上げており、ホールツアーのような派手な演出はない。続く「水に挿した花」もまるでシャンソン歌手のような佇まいを見せ、ピアニストの藤原いくろうを中心とした繊細なアコースティックセッションに呼応しながら、とにかく楽曲が持つメロディの美しさをアピールするかのような歌を聴かせる。とはいえ、中盤ではアップテンポの「ミ・アモーレ[Meu amor e…]」と「愛撫」でいつもの彼女の表情になる。少しホッとする瞬間だが、普段のツアーよりも控えめで、あくまでも歌をじっくりと聴かせる演出になっている。再びしっとりとした楽曲が続き、合間で聴かせるトークも含めどこか親密な空気が漂ってきて小劇場ならではの良さが存分に味わえる。

 本編のクライマックスは、「月華」、「黒薔薇」、「陽炎」と続くバラードだろう。時にはステージ上に座り込み、まるで芝居を演じるように情念を込めて歌う姿から目が離せなくなる。まさに彼女の真骨頂といえるのではないだろうか。一転してアンコールの「Rose Bud」では3人の女性コーラスを交えたファンキーなバンド編成となり、観客も総立ちで盛り上がる。そして再び初期の隠れた名曲「予感」でしっとりと大団円を迎えるのだ。

 これら以外にも、観ておきたい映像はまだまだある。なにせ1994年から2009年の間に収録された7本のライブ映像を一挙に観ることができるのだ。WOWOWの番組サイトではライブダイジェストを公開しているので、まずはそちらで予習してみてほしい。

 古くからのファンは思いをはせながら、中森明菜という唯一無二のボーカリストを新たに知った世代には、これらのパフォーマンス映像は鮮烈に映るに違いない。再始動にも期待を寄せながら、彼女の歌の世界に浸っていただきたい。

■番組情報
『中森明菜デビュー40周年スペシャル』 
10月28日(金)午前7:00スタート(WOWOWライブ・WOWOWオンデマンド) 
※全番組アーカイブ配信あり

https://www.wowow.co.jp/music/nakamoriakina/

午前7:00 中森明菜“UTAHIME”AKINA NAKAMORI PARCO THEATER LIVE
午前8:15 中森明菜 TRUE LIVE
午前10:00 中森明菜 felicidad AKINA NAKAMORI LIVE '97
午前11:45 中森明菜 2000「21世紀への旅立ち」
午後1:15 中森明菜 Akina Nakamori Live tour 2003 ~I hope so~
午後3:00 中森明菜 AKINA NAKAMORI LIVE TOUR 2006 The Last Destination
午後4:45 中森明菜 Akina Nakamori Special Live 2009 “Empress at Yokohama”

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