2022.10.12 21:30

UNISON SQUARE GARDENのバンドアンサンブルにあるみずみずしさ　高揚感がそのまま音になった東京ガーデンシアター公演

文＝蜂須賀ちなみ、写真＝Viola Kam (V'z Twinkle)

　開演時にはステージが紗幕で覆われていて、その向こう側に3人が登場。客席からだとメンバーのシルエットと光の演出のみ確認できる状態でライブは始まった。1曲目は「harmonized finale」（『劇場版 TIGER ＆ BUNNY -The Rising-』主題歌）。斎藤の歌と同期のピアノのみになる落ちサビでは、星空のような照明が灯った。星空を模した演出は「オリオンをなぞる」（TVアニメ『TIGER & BUNNY』OPテーマ）、「kaleido proud fiesta」（アニメ『TIGER & BUNNY2』OPテーマ）でも用いられていて、『タイバニ』関連曲3曲の関連性が印象付けられていた。

UNISON SQUARE GARDEN（写真＝Viola Kam (V’z Twinkle)）

　また、「harmonized finale」は2020年秋～冬のホールツアー『USG 2020“LIVE (on the) SEAT”』で最後に披露された曲で、今回1曲目に選ばれた意味を推測せずにはいられない。2020年秋～冬といえば、普通にライブに行ける日常がまた戻ってくるのか、誰もが分からないまま会場に足を運んでいた状況であり、だからこそ〈離れていたって大丈夫だよ〉と歌うこの曲が心の支えになったという人もいたことだろう。あれから2年。状況が完全に戻ったわけではないし守らなければならないガイドラインはあるが、観客もバンドも真面目にこの場所を守り続けた人たちがいたからこそ、今回の東京ガーデンシアターではフルキャパシティでの開催が叶った。そんなライブのオープニングで歌われる〈ここからまた始まってく〉という宣言。ここに流線型のストーリーが描かれた。

　音が直接肌に刺さる、まるでライブハウスのような音響は「これこれ！」と言いたくなる感じ。そして急上昇・急降下・急旋回を伴うセットリストが息つく間もなく展開されていく。曲間をほとんど空けずに演奏したスリル溢れる中盤セクション（特に「ラディアルナイトチェイサー」～「fake town baby」には意表をつかれた）、マイクスタンド、シンバル、スネア……と叩くものを変えながらリズムを軽快に繰り出す鈴木と、一つのギターリフを鳴らし続ける斎藤のセッションから始まった「ワールドワイド・スーパーガール」とライブアレンジは刺激的で、7thアルバム『MODE MOOD MODE』収録曲「Own Civilization (nano-mile met)」を7曲目に配置する遊び心も。秋の始まりにぴったりな「5分後のスターダスト」のあとに演奏された「弥生町ロンリープラネット」では、〈春が来る〉という歌詞に合わせてステージが桜色に染まる。

　シングルのツアーということで、カップリング曲の「ナノサイズスカイウォーク」も披露。音源を聴いた時はカップリングらしく適度に肩の力の抜けた曲だと思ったが、だからこそ遊びを入れられるということだろう。斎藤がものすごい高音域からギターソロを弾き始め、その裏で田淵や鈴木もダイナミックに鳴らすなど予想外の化け方をしている。また、表題曲の「kaleido proud fiesta」は、「オリオンをなぞる」→「kaleido proud fiesta」という最高の流れでの披露。この2曲の照明については先述の通り。さらに補足すると「オリオンをなぞる」ではステージ後方のミラーボールが客席の方へ光を飛ばしていた。膨大な量の文字がハイスピードで流れていく、MVを彷彿とさせる演出だ。一つ、また一つと増える忘れられない景色。しかしこの2曲がクライマックスではなく、さらに「to the CIDER ROAD」を続けることでトップスピードを更新。本編は「10% roll, 10% romance」によって締め括られた。3曲演奏したアンコールのラスト、「場違いハミングバード」はかなりテンポが速く、いわゆるランナーズハイ。高揚感がそのまま音になっている。

　そんなラストシーンを観て改めて思ったのは、彼らが目指しているのは整然としたオブジェの構築ではなく、歪でも生きているものなのだということ。ツアーファイナルでもフィナーレ感は薄く、“こうして日常は続いていく”といった余韻を残して終わる物語のような読後感だったのはそのためだろう。もちろんこのセットリストが披露される最後の日という意味では貴重な一日だったが、今日という日は、曲を作ったりライブをしたりしながら一年を過ごすロックバンドのバイオリズムの一部分であり、それ以上でも以下でもないという事実がそこにある。逆に言うと、そういった“ただの一日”がどうしたって面白くなるのがロックバンドであり、私たちも、そして彼ら自身も、その部分に胸を高鳴らせているのではないだろうか。次のツアー『TOUR 2022「fiesta in chaos」』は10月25日から、つまり1カ月も空けずにスタートする。同じライブは二つとない、日常を祝う祝祭の旅はまだまだ続いていく。

■セットリスト
1.harmonized finale
2.箱庭ロック・ショー
3.世界はファンシー
4.シャンデリア・ワルツ
5.CAPACITY超える
6.Silent Libre Mirage
7.Own Civilization(nano-mile met)
8.ラディアルナイトチェイサー
9.fake town baby
10.5分後のスターダスト
11.弥生町ロンリープラネット
12.ワールドワイド・スーパーガール
13.ナノサイズスカイウォーク
14.サンポサキマイライフ
15.オリオンをなぞる
16.kaleido proud fiesta
17.to the CIDER ROAD
18.10% roll, 10% romance