UNISON SQUARE GARDENと『TIGER & BUNNY』が築いてきた特別な関係性 “挑戦”こそが生む新たな物語

ユニゾンと『タイバニ』の特別な関係性

 リリース前から話題になっていたUNISON SQUARE GARDENの新曲「kaleido proud fiesta」を収録したシングルが、4月13日にいよいよリリースされた。なぜリリース前から話題になっていたのか。4月8日からNetflixにて全世界独占配信がスタートした『TIGER & BUNNY』シリーズ8年ぶりの新作アニメ『TIGER & BUNNY 2』のオープニングテーマだからだ。

UNISON SQUARE GARDEN「kaleido proud fiesta」TIGER & BUNNY 2 Animation MV ティザー

 『タイバニ』の愛称で親しまれる『TIGER & BUNNY』シリーズは、NEXTと呼ばれる特殊能力者が平和を守るヒーローとして活動する街・シュテルンビルトを舞台にした物語だ。ベテランヒーローの鏑木・T・虎徹(ワイルドタイガー)と新鋭ヒーローのバーナビー・ブルックス Jr.を主人公としたバディもので、初めは反りが合わなかった2人の間に信頼関係が生まれていく様子やヒーローたちの個性的なキャラクター、痛快なアクションシーンを伴うアメコミ風の世界観、いち社会人としてのヒーロー一人ひとりの葛藤にもスポットを当てる物語……と魅力的な要素は多数ある。また、作中のヒーローがスポンサーの支援を受けながら活動しているという設定に因み、実世界でもスポンサー企業を募集するキャラクタープレイスメント制度(協賛社となった企業のロゴが劇中に登場するヒーローたちのボディに掲載される)も画期的なものだ。

 爆発的なヒットとともに根強いファンダムを生み、多くの人から長く愛されることとなった『タイバニ』シリーズ。2011年に放送されたアニメ『TIGER & BUNNY』がシリーズ第1作目にあたり、同作第1クールのオープニングテーマがUNISON SQUARE GARDENの「オリオンをなぞる」だった。ユニゾンといえば、アニメ『血界戦線』のエンディングテーマ「シュガーソングとビターステップ」、アニメ『Fate/Grand Order -絶対魔獣戦線バビロニア-』オープニングテーマの「Phantom Joke」、アニメ『夜桜四重奏 ~ハナノウタ~』のオープニングテーマ「桜のあと (all quartets lead to the?)」などアニメ主題歌を多数手掛けているし、バンドのメインソングライターで、個人でも声優など様々なアーティストに曲を提供している田淵智也(Ba)も含め、今でこそ“ユニゾン(田淵)の曲であればきっと間違いない”とアニメファンから信頼を置かれる立ち場にある。しかし「オリオンをなぞる」はバンドにとって2曲目のアニメタイアップ曲であり、2011年当時のユニゾンは今のような評価を得る前だった。

 言い換えると、「オリオンをなぞる」は『タイバニ』シリーズの始まりの歌であると同時に、ユニゾンが自身のキャリアを切り拓くきっかけになった一曲でもあった。そこから劇場版2作(2012年、2014年)を経て、このたび8年ぶりにタッグを組んだユニゾンと『タイバニ』。『TIGER & BUNNY 2』のオープニングテーマが「kaleido proud fiesta」であることが発表された時、“あの伝説のタッグが再び!”とファンは大いに沸いたが、逆に言うと、クリエイター側には“あの頃の二番煎じ”にはしたくないという気持ちがあったのではないだろうかと想像する。『TIGER & BUNNY 2』のエグゼクティブプロデューサー・尾崎雅之(BN Pictures)の「UNISONというバンドも「TIGER & BUNNY」という作品も、それぞれの時間を積み重ね、それぞれに紆余曲折を経て今を獲得してきたのだと思う。そんな両者が再び相まみえること、それは即ち過去の自分達への挑戦に他ならない」というコメント、ユニゾン田淵の「変わる必要がないのがロックバンドだ。けど今を生きる上で挑戦もたまにはいいんじゃないの。(中略)次に向かうにふさわしすぎる1曲がこうやって生まれたのも何かの運命だ」というコメントからは両者の想いが読み取れた(※1)。

 事の重大さを伝えるために前置きが長くなってしまったが、ここからは今日に至るまでのユニゾン×『タイバニ』の歩みを振り返りたい。

 まず、アニメ『TIGER & BUNNY』のオープニングテーマ「オリオンをなぞる」は爽快なアッパーチューンだ。ピアノやストリングスとともに鳴るイントロのギターフレーズが眩しく、疾走感を増幅させるスネアの連打にもワクワクさせられる。そして何といっても斎藤宏介(Vo/Gt)のクリアだが少しささくれだったボーカル、キャッチーなメロディが印象的だ。そんな曲と、ヒーローたちのカッコいい姿を収めたオープニング映像が合わさった時の高揚感は尋常ではなかった。また、〈ヴィーナスサステイン〉、〈つまり半信半疑あっちこっち〉などユニークなワードも特徴的。文章として読んだ時ではなく、音とともに耳にした瞬間、聴いたその人の中だけで意味が生まれるような歌詞表現を田淵は当時から模索していた。今振り返ると「オリオンをなぞる」がユニゾンの王道の基準を作った気がするし、バンドが元来持っていたポップセンスを思いきり表出させた曲が、『TIGER & BUNNY』という作品にしっくり当てはまったのはいい巡り合わせであり幸運だった。これが1作目だったからこそ、ユニゾンと『タイバニ』の関係性は特別なものとなっていったのだろう。

UNISON SQUARE GARDEN「オリオンをなぞる」MV

 2012年に公開された映画『劇場版 TIGER & BUNNY -The Beginning-』の主題歌「リニアブルーを聴きながら」は、「オリオンをなぞる」の系譜を継ぐアッパーチューンだった。歌い出しは〈リプレイ、まだ平気かい?〉と2作目ならではの遊び心が効いている。Dメロにおけるコーラスの使い方など構成・アレンジ面も「オリオンをなぞる」を彷彿とさせるが、ピアノやストリングスは使われておらず、それでも抜群に輝度の高い音像、緩急豊かな展開を実現させているところにバンドの成長を感じる。タイトルに掲げられていて、サビで高らかに歌われている“リニアブルー”とは造語とのこと。〈誰かの正義とぶつかっても 大丈夫だよ 僕は僕であれ〉という箇所が『タイバニ』とリンクしているほか、〈一人きりでも〉という表現が、ヒーロー活動のために娘と離れて暮らしている虎徹や両親を殺した犯人を見つけるために一人奮闘していたバーナビーを連想させた。

UNISON SQUARE GARDEN 「リニアブルーを聴きながら」MV

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