早見沙織、歌手や声優活動を重ねたからこそ表現できる“希望の形” 「一方的に救いを与えるということではない」

早見沙織『聖剣伝説』OP曲に託した願い

「私も痛いしあなたも痛い」と互いに確認したうえで明日を信じることが大切

ーーいわゆるオープニングっぽい曲は来ないだろうという風には思っていたんですが、予想を二段も三段も上回る曲が来ました(笑)。

早見:最初はもっとサビあたりの展開は少なかったのですが、90秒の構成やフルでの展開などを考えて、もう少しサビに展開があったほうがいいとチームで話し合って、Kevinさんにご相談のうえで、曲が進んでいくにつれて展開していくようにブラッシュアップしていきました。Kevinさん自身も私の歌を聴いて「もっとこうしたい!」と思ったところもあったようで、より良いものを作っていただけたんです。

 スコアに書いている譜割と、実際のデモも若干違うんですよ。スコアのほうは付点の位置が微妙に違っていて、装飾音のような感じで鳴っている音が、順当なときもあれば絶妙に空いているときもあったりして。それによって字ノリも変わってくるので面白いなと思いつつ、確認しながら現在の形になりました。

ーー前半の部分は歌メロが特徴的で驚きました。

早見:なかなかないですよね。歌も大変でしたが、歌詞をどうやって書こうかとすごく悩みました。一度書いてみて、口に出して歌ってみて……というのを交互にしながら、違和感のあるところをなくしていったり、この言い方でも繋がるフレーズを作っていったんです。

 もちろん『聖剣伝説 Legend of Mana -The Teardrop Crystal-』のオープニング曲ということもあり、なにより『聖剣伝説』という作品の世界観にマッチしていなければいけませんから。聴いてくださった方がアニメのシーンや『聖剣伝説』の情景を頭に浮かべてもらえるよう、作品に関係するキーワードも多く盛り込んでいます。

ーー歌うことはかなり大変だったと思います。

早見:歌ってみて、ディレクションをいただきながら試行錯誤しました。全体的に最初に作っていたものよりも少し力強く歌うように変えたり、平歌の部分も静かに聴こえるかもしれませんが、アタックを強めにしたり、エネルギーや芯のある感じを落ち着いた展開のうちから意識して歌っていました。

ーーサビの壮大さを、それまでの展開とどのように繋げたり、切り替えたりして歌っていたのかが知りたいです。

早見:レコーディングの際はブースで1人歌っているわけですが、サビについては意識の中ではすごく広いところにいるような脳内妄想をしながら歌っていました。特にラストはその意識を強めにしています。最後も、失速しないイメージで。

ーーそのイメージはすごくわかりますし、この壮大さや抜け感は、早見さんが書いた歌詞によってもたらされているようにも思えます。

早見:私自身が強く意識したわけではなかったのですが、俯瞰的な広がりはイメージの中にありました。歌詞を書くにあたって、いつもより作品を連想させるようなキーワードを散りばめているのも、これまでの作り方と違うところかもしれませんね。「Awake」の時は「私がいて、あなたがいて~」という風に、わかりやすい存在を感じられるようなイメージで書きましたが、今回は“主人公の物語”というよりは、もう少し俯瞰的に色んな人が持っている「人が人を想うときの心の煌めき」や「そこに宿る光」が織りなす物語や歴史、そこから形作られる世界という広い視点で描いていて、そのあたりがマッチしたように思います。

ーーまさに先ほどもお伝えした“主観と俯瞰”の話になってくるわけですね。フレーズとしてここが鍵になった、というものはありますか?

早見:ここ数作でも意識的に入れていた「光」というワードは、結果的に最後に入れることにしました。今回の「光」は、先ほど少しお話ししましたが「誰かが誰かを思うときの本当に強い輝き」や「想いの力」を「明日を作っていく希望の一筋」という風に捉えていて、ラストの〈光差す新たな日に〉というフレーズに着地しています。また、〈涙枯れ果てども 奇跡は砕けぬように〉というフレーズは作品から連想して書いたものではあるのですが、孤独や痛みを抱える人たちの光となる音楽を届けたいという、ここ数年の私の音楽活動におけるテーマが反映されていて、作品から離れた場所にあっても、そう信じる想いをこの曲に持っていてほしいと託した部分はあります。

ーーたしかに、その2つのフレーズがこの曲をしっかりと“救いがある曲”たらしめているような気がします。

早見:原作を私がプレイしたり、自分で演じていてもそうだなと思ったのですが、この物語は救われてる状態からスタートしていないんです。絶望的だったり立ち行かない状況があって、そこから物語が進み、みんながどう歩んでいくかを目の当たりにする、というストーリーがあって。だとすると、楽曲もクリアな状態から始めるのではなく、少し仄暗い状況から徐々に希望へ向かっていくものになればいいし、単純に「救われる」ということではなく、そういう希望を信じるエネルギーに変わってくれればいいなと思いました。

ーーここ数作、早見さんが活動テーマを掲げてからの楽曲は、そんな「仄暗さ」を経て、光に向かっていく様子を描くものが多いように思えます。最終的には救いに向かっているとはいえ、そういった曲を書き続けるなかで、ご自身が曲に引っ張られるようなことはありませんか?

早見:たとえば「Awake」でも、私からあなたに一方的に救いを与えるということではなく、「私も痛いしあなたも痛い」とお互いに確認したうえで明日を信じることが大切だと綴っています。でも、そういう方向に引っ張られるというよりも、その二面性のいずれもが自分なんですよね。

ーーそんな感情をテーマに様々な楽曲を作っていくなかで、ご自身の中にも1つの感情に多くのバリエーションが生まれていく、という経験があったと思います。

早見:あえてテーマを明言することで色んなことにチャレンジできる、というのはここ数作の制作を通して感じたことですね。書くうえでも、今の自分だけではなく、過去の自分や元々自分が持っていた思いを音楽に昇華することができるようになったり、この瞬間ここにいて、歌ったり表現したりする役目になったからこそ立てた場所なんだと思います。

ーー来年の年始にはライブも決定しました。有観客でのワンマンライブは3年ぶりということで。

早見:あれから3年も経っているなんて信じられませんが、純粋に嬉しいですね。しかも年始にライブをするのは初なので、私にとっては初めてのことだらけです。

ーーそして近作では特殊な曲も揃いつつあるわけで……。

早見:そうですね(笑)。「Awake」は『アニサマ』(『Animelo Summer Live 2022 -Sparkle-』)やアコースティック配信ライブで歌いましたが、フルセットは初めてになると思いますし、ほかの配信リリース曲はライブ初披露になると思うので……。

ーーこれまでリリースした楽曲ともどのように繋がっていくのか、いまからとても楽しみです。

早見:セットリストに関しては、これから大いに悩んでいきたいと思います。

ーーライブは曲が育つ場とよく言いますが、今回の楽曲たちは育てがいもありそうですね。

早見:昨年から今年にかけて、レコーディングや制作を中心にずっと走ってきたので、スイッチを切り替えて色々準備して、ライブならではの見せ方や表現の仕方を追求していきます。今回は『Hayami Saori Special Live 2023 Before Dawn-夜明けに君と』というタイトルになるので、披露する楽曲たちや、ここまでの活動のキーワードを含め、ライブを通してみんなで共に夜明けを迎えられるような、そんな構成にしていきたいと思います。

ーー早見さんのライブが2023年のライブ初めになる人も多そうですね。

早見:そうですよね。2023年が良い一年になりそうだと思ってもらえるような、幕開けのライブをお届けできるようにします。

早見沙織「Tear of Will」
早見沙織「Tear of Will」

■リリース情報
早見沙織
「Tear of Will」
好評配信中

<収録楽曲>
「Tear of Will」
作詞:早見沙織 作曲・編曲:KEVIN PENKIN

■番組情報
『聖剣伝説 Legend of Mana -The Teardrop Crystal-』
放送情報
MBS・TBS 系 全国28局ネット “スーパーアニメイズム”枠にて放送中
※放送日時は変更となる場合あり
公式サイト: https://mana-lom-tc.com/
(C)SQUARE ENIX / サボテン君観察組合

■ライブ情報
『Hayami Saori Special Live 2023 Before Dawn-夜明けに君と』
日程:2023年1月2日(月)
場所:TOKYO DOME CITY HALL(〒112-0004 東京都文京区後楽1-3-61 東京ドームミーツポート1F)
チケット情報:9月14日(水)発売CD「Awake」の初回封入特典としてチケット先行購入権申込抽選券を封入
※一般チケット発売は後日発表

ライブに関するお問い合わせ:DISK GARAGE 050-5533-0888(平日12:00~15:00)

■関連リンク
早見沙織オフィシャルサイト :https://hayamisaoriofficial.com
早見沙織Official Twitter:@hayami_official

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<締切:10月22日(土)>

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