doaの楽曲はなぜリスナーの胸を熱くする? 若者からミドル世代まで鼓舞する応援歌としての魅力
社会という冒険や戦いに挑む大人たちを鼓舞するような、力強さを持ったバンドサウンド。過酷な道のりや泥まみれになりながらも、逆境に立ち向かう力強い様を想像させるアコギの響き。スライドギターや巧みなコーラスワークは、戦いに疲れた戦士たちを癒やしてくれるものだ。doaのサウンドに起因する、70年代のウェストコーストロックやアメリカンロックのサウンドは、砂埃が舞う砂漠や延々と続く一本道をかまわず突き進むような力強さもあれば、Eaglesの「ホテル・カリフォルニア」に代表される華やかさの裏側にある切なさや悲哀を歌った楽曲も多い。それを現代の日本社会に置き換え、奇をてらわずリアルな言葉で歌ったのがdoaの音楽だろう。
『CHEERS』では、実に多彩な楽曲で、背中を押し、心を癒やし、安心感を与え、明日を向く勇気をくれる。〈WOW WOW〉というコーラスとパワフルなビートが一体感を生み出す「WILD BEAST」。現役レーシングドライバーとしても活動する吉本大樹だからこその、スリリングさに満ちた楽曲だ。疾走感あふれるサウンドの「アブラカダブラ」は、日頃の悩みも一緒に吹き飛ばしてくれそうな勢い。「ありがとう」では、アコースティックギターをメインにした温かみのあるサウンドと共に、両親への感謝を歌った。「TAKE A WIN」では、間奏にチアリーディングのような応援のかけ声とクラップが取り入れられ、様々なスポーツの試合の応援歌になりそう。大阪シリーズ最新曲「OSAKA CHEERS」は、人情味あふれる大阪の街を生き生きと歌い、歌詞に自身の楽曲「コンビニマドンナ」が出てくるユーモアも。他にTHE ROLLING STONESを彷彿とさせるサウンドの「おそうじBoogie」や、エレクトリックなサウンドで、人間のありのままを歌った「ヒューマン」など。そしてラストの「がんばらなくてもいいんだよ」は、張り詰めた心を優しくほぐしてくれるような、温かさとやさしさに満ちあふれている。
今作の『CHEERS』というタイトルを聞いて、2008年にリリースされた4thアルバム『Prime Garden』のラストに収録された「乾杯」という曲を思い出した人も多いだろう。缶ビールを開ける音で始まり、アコギのサウンドをバックにメンバーが談笑しながら歌う同曲。3人がお互いの苦労をねぎらい、感謝の気持ちと共に明日への気力を養う様子が楽曲に落とし込まれ、そのゆるっとした空気感が、ホッと一息つくような心地良い安堵感を与えてくれた。今作『CHEERS』は「乾杯」という意味だけでなく、そこにまつわる様々な感情や言葉が含まれたものになったことで、あらゆる時間帯やあらゆるシチュエーションで楽しめる作品になった。1曲1曲が、今を生きる人にとっての日常を彩るサウンドトラックであり、テーマソングだと言えるだろう。