くるり、25周年を経て再提示された“ロックバンド”としての力強さ 現在進行形の姿刻んだツアーファイナル

くるり、25周年を経た“現在進行形”の姿

岸田繁

 SNS時代にリバイバルヒットをして、下の世代からも支持が厚い「琥珀色の街、上海蟹の朝」、シングルでもオリジナルアルバム収録曲でもなく、映画『ジョゼと虎と魚たち』のサウンドトラックに収録されている曲だが、そういう曲にファンが多いというのもくるりらしい「飴色の部屋」に続いて、アンコールラストに演奏されたのは「東京」。岸田はこの選曲について、「本当はいつでも現在進行形でいたいので、新曲をやって終わりたいけど、25周年のときに『何でやらなかったの?』と言われたので」という趣旨のことを話した。

 個人的に、東京で観るくるりのライブのラストナンバーはやっぱり「東京」が一番グッと来るし(京都で観るときは「宿はなし」)、ちょうど『FUJI ROCK FESTIVAL '22』の翌週に、フジロックを題材としたこの曲を聴けたのも嬉しかった。ただ、くるりは常に現在進行形だからこそファンから愛され続けているのも間違いなく、その意味でも、現在アンダーグラウンドからメジャーまで幅広く活躍している石若の参加は大きいし、10月に3年ぶりに有観客で開催される『京都音楽博覧会』に、マカロニえんぴつやVaundyといった若手が呼ばれているのも、「現在進行形」を印象づける。

 そう考えると、早くもくるりの次のモードが気になってしまう。この日のライブを観る限りは、現在のくるりの編成で『アンテナ』〜『NIKKI』の頃のような、フィジカルなロックモードのアルバムを聴いてみたいようにも思うが、もちろんくるりは同じことを繰り返すバンドではなく、常に転がり続けるバンドだ。となると、コロナ禍のムードが反映された『天才の愛』で重用したポストプロダクションと、生演奏によるライブ感を両立させたアルバム……と自分で書いていても矛盾してるなと思うのだが、そんな無理な期待にたまに応えてくれて、大体は180度裏切ってくれる愛すべきくるりのネクストシーズンも、今から楽しみにしていたい。

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