FIVE NEW OLDが告げた新章の始まり 未来への期待を乗せた『Departure Tour』東京公演レポ
この日、中盤は特に聴かせどころで、ピアノハウスを思わせる「One By One」の人力EDMでフロアを踊らせた後、雑踏や鳥の声の環境音からシューゲイズサウンド、体に来るシンセベースの重低音に圧倒されるインスト「My Sacred Chamber」から、ホーリーな「Moment」に繋げた構成は見事だった。嵐をやり過ごした夜明けの穏やかさのようなものを感じるアレンジ、スケールの大きなメロディ。淡々とした楽曲だからこそ、支えるHAYATOの安定したドラミングが際立っていた。
長めのMCでHIROSHIは、今回のライブのテーマである“DEPARTURE=出発”について、そもそも音楽は自分の楽しみであり、それを聴いて楽しんでくれる人が増えていくに従って自分が楽しいだけでは済まなくなる状況も生まれたが、それでも自分の好きなことが誰かのためになるという事実を再認識したのだと話した。その認識を持ってさらに進んでいくタームに今のFIiNOはあるのだろう。「明日を生きるあなたのために」と、「Breathin’」をタイトルコールし、FIiNO流のゴスペルを聴かせる。そのニュアンスは「By Your Side」、ライブの一体感を高める人気曲「Ghost In My Place」にも繋がり、フロアの隅々まで活力が溢れた。
ラストは“誰かになんてならなくていいんだよ“というメッセージがチアフルに伝わる「Don’t Be Someone Else」。隙間の多いプロダクションをファンのクラップも加わってグルーヴを作り上げていく、参加する楽しみに満ちた楽曲だ。HIROSHIは曲中、「終わりたくないよー」「終わりたくない人、手を挙げて」と、素直な心情をそのまま溢れさせ、それがストレートに伝わるところも彼のヒューマンパワーだろう。
アンコールではまだタイトルもついていない新曲を披露。「DEPARTURE(出発)の体験をお届けできると思って披露しました」というHIROSHIの言葉に拍手が贈られた。そして告知があると言い、スマートフォンを取り出すと、メモを読むのではなくこれからツイートすると言い、「この時差がある“わ~”って感じいいな」と笑っていた。そう、そんな方法でニューアルバム『Departure:My New Me』の9月リリースとツアー、さらに夏のBillboard Liveでのライブを発表。ざわめくフロアに「今日のこの時間が明日からの日常を彩りますように」と、はじまりの予感に満ちた「Please Please Please」で、ここから始まる新章を告げた。FIVE NEW OLDはもっと大きなフィールドで注目されて然るべき。いや、そのときは近い。