FIVE NEW OLD、巧みなステージングで表現するバンドの現在地 未来への期待を滲ませたオンラインライブ

FIVE NEW OLD、オンラインライブを振り返る

 意外性のある場所でのライブであると同時に、“Current Location=現在地”の意味もあるこのシリーズライブ。今回は政府の新型コロナウイルス感染防止の発出により、1月17日のBillboard Live YOKOHAMAと1月30日のBillboard Live OSAKAでの有観客ライブは残念ながら中止。17日に急遽、YouTubeでの無料配信に変更したが、電波に乗って届けられたFIVE NEW OLDのライブは距離は離れていても彼らの現在地をしっかり示唆。予想以上にタフになったバンドの今が70分に凝縮されていた。

 ボーカルでフロントマンのHIROSHIが初めて俳優業にチャレンジし、出演しているドラマ『3Bの恋人』(ABCテレビ・テレビ朝日)主題歌として「Hallelujah」を1月22日にデジタルリリース。昨年、メジャーデビューのタイミングで初の日本語詞を手掛けた「Vent」、12月にはcoldrainのMasatoをフィーチャーした「Chemical Heart(feat. Masato from coldrain)」をリリースと、コンスタントかつ新たなトライが続く現在。今春にはそれらを一望できるニューアルバムも予告されている中でのプレミアムなシチュエーションでのライブだけに、選曲や演出も気になったが、俯瞰して言うとライブアレンジを相当練り込んできたなというのが最大の印象。

 「皆さんこんばんは。FIVE NEW OLDです。魔法のような夜を過ごしましょう」というHIROSHIの曲振りは特別なシチュエーションにハマっていて、あたかも目の前にオーディエンスがいるかのようなパフォーマンスを展開。ライブ中、度々「一緒にいるよ!」とか、クラップの場面では「お手を拝借」、「いいね!」と、場を盛り上げていたのが印象的だ。WATARU(Gt)がエレピを弾き、HAYATO(Dr)がパッドを叩き、ストリングスのSEが添えられる「Magic」はその音数の少なさがむしろメロウなムードを引き立たせる。メンバーの繊細なプレイも伝わり、現場で見ることができたら、さぞそのシチュエーションに似合っていただろうなと、やはり残念な気持ちにもなる。また、無人のテーブル席に寂しさを感じるが、どこか映画的でもあり、それは見終えた際にも余韻を残した。

 エレピのイントロ部分を加えリアレンジし、HIROSHIもギターを携えての「What’s Gonna Be?」では明るいムードに転換。メジャーキーのジャズフレーバーでアンサンブルが加速する様は先輩であり、対バン経験もあるthe band apartを想起させる部分もあって、彼らのバンド少年としてのバックボーンも窺わせる。メドレー的に少しだけ「Sunshine」を追加した際にはコメント欄が歓喜に沸いた。

 最初の本格的なMCでHIROSHIが「有観客ライブは中止になったものの、こんな素敵な会場で何もせずに終われなかった」と語り、配信に協力してくれたスタッフ、Billboad Live YOKOHAMAに感謝の意を伝えた。後のMCで判明したのだが、Billboardのスタッフに以前、海外アーティストのオープニングを務めていたFIVE NEW OLDを見ていた人がおり、この日のワンマンライブで、「お待ちしていました」と歓迎され感激したのだとか。困難な状況でも音楽を届けたい気持ちは演者だけではないし、裏方の柔軟な対応は音楽がつないできた縁あってのものでもあるのだ。

 新曲のブロックも両極端に振った2曲がこのバンドの音楽的なレンジの広さを感じさせた。まず、コロナ禍の時代にあって「他の誰かになろうとしなくていい」というメッセージとHIROSHIのエンターテイナー性でさらに気持ちをアップリフトしてくれる「Don't Be Someone Else」。そして一転、ドラマチックな同期とハードなギターリフで空気を変える「Chemical Heart」では音源のMasatoのパートもHIROSHIが歌ったのも聴きどころだった。さらに新曲「My House」は壮大なインタールード的な聴感をもたらすナンバー。シンセやSHUNのシンセベース、ドラムパッドにエフェクティブなボーカルで、あたかもジャズクラブから架空の場所へ飛ばされるようなイメージが膨らむ。そんな中にもハードなギターサウンドも織り交ぜ、コアなエクストリーム感さえ反映。このバンドのオリジナリティを再発見した。

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