水樹奈々、かけがえのない居場所を語る 大切なツアー『PARADE』&『JUNGLE』とデビュー25周年への想い
水樹奈々が、ふたつの大型ライブの模様を収録した映像作品『NANA MIZUKI LIVE JUNGLE × PARADE』をリリースした。
ひとつは、2023年に開催された全国ツアー『NANA MIZUKI LIVE PARADE 2023』有明アリーナでのツアーファイナル公演。コロナ以降4年ぶりに声出し解禁となったライブでもあり、全国7カ所12公演を巡り、合計約7万5000人を動員した。そしてもうひとつのライブは、全国4カ所8公演をまわった『NANA MIZUKI LIVE JUNGLE 2024』より、今年7月7日に開催されたKアリーナ横浜でのツアーファイナル公演だ。
『PARADE』と『JUNGLE』というふたつのツアーを通して、水樹奈々は何を感じたのか。そして発表されたアルバムリリースについて、来たるデビュー25周年に向けて――。語り尽くしてくれた。(編集部)
1曲目から泣きそうなくらい幸せで、鳥肌が止まらなかった
――今回リリースされたLIVE Blu-ray&DVDは、コロナ禍からの復活の狼煙となった昨年開催の『PARADE』と、それを踏まえて新たな一歩を踏み出した今年開催の『JUNGLE』という2本のツアーの模様がカップリングされることで、非常に大きな意味を持つ作品になっているような印象がありました。
水樹奈々(以下、水樹):またひとつの節目となるようなふたつのライブでした。声が出せないというもどかしい状況が続いたなか、ようやく未来に向けて大きく動き始めたタイミングで開催した2本のツアーはある意味、続きもののように見えるところもあって。それがひとつにパッケージされたことは、自分にとっても特別なものになりました。
――ご自身であらためてご覧になると、いろいろなことが蘇ってきますか?
水樹:そうですね。『PARADE』も、ついこの間のような感覚ですが、「あれからもう一年経ったんだなあ」と感慨深い気持ちになったりして。あのツアーでみんなの声が戻ってきたことへの喜びはひとしおでしたね。1曲目から泣きそうなくらい幸せで、鳥肌が止まらなかったのを鮮明に思い出します。特にツアー初日の青森では身体中が熱く震えて、「キター!」「これがライブだー!」って心のなかで叫んでいました。
――ライブで声が出せなくなってしまった数年間は、水樹さんにとってそうとうツラい時間だったわけですもんね。
水樹:本当にもどかしかったです。でも、どこかそれに慣れつつある自分もいたんです。聞こえないはずの声が聞こえる、みたいな領域に行ったこともあって(笑)。
――「イルカみたいに超音波で会話しているような」とMCでおっしゃってましたよね。
水樹:そうなんです! 「POWER GATE」や「ETERNAL BLAZE」で、「みんなが心の中で歌ってくれているのがわかるよ!」と! まさにイルカになったような気持ちで、「私たち、超音波で会話してるよね!」って(笑)。そんな言葉を超えた領域で繋がるという奇跡的な体験をした時期を経て、ついに「そんな時もあったよね」と笑って話せるタイミングがきて。しかも、そんなツラい時期をみんなで乗り越えたからこそ、どんなことでも前向きにとらえられるようになりましたし、以前にも増してライブを五感で楽しめるようになった気がしています。声が出せるのが当たり前で、何も考えずに楽しめていたコロナ禍前のライブももちろん大好きでしたけど、今はより一層一つひとつのことが特別であることを噛み締めながらステージに立たせていただいているので、全力の質が変わった気がします。だからこそ、今まで以上にグッときてしまう瞬間がすごく多くなりましたね。
究極の極限状態になると、普段とは違う力が引き出される
――では、それぞれのライブについてお話を伺いましょう。まず『PARADE』は、ツアーファイナルとなった2023年9月3日の有明アリーナの模様が収録されています。
水樹:何と言っても1曲目の「Red Breeze」でステージに出た瞬間、「ワーッ!」と大歓声を浴びたシーンが強く印象に残っています。本当に嬉しくて嬉しくて「ようやくいつものライブが戻ってきた!」と強く実感できた瞬間でした。「Red Breeze」はコロナ禍でリリースした曲だったので、みんなの声やコールが入った環境で歌うのは初めてだったんです。だから、「やっと曲が完成した!」と思った瞬間でもありました。本当に特別でしたね。
――歌詞的にも、あのタイミングで歌われるにふさわしい内容でしたしね。
水樹:そうなんです。先の見えない未来に向かって、もがきながらも何とか前に進もうとしていく心情を表した歌詞なので、それがコロナ禍での自分たちの気持ちともリンクしていて。『PARADE』というライブの導入にぴったりな、その世界にグッと没入できる一曲だったと思います。
――暗闇に光が射して、それが大きく広がっていく様はライブ全編を通して明確に提示されていましたよね。セットリストや煌びやかな演出効果によって。
水樹:ありがとうございます。ライブが進み、現在〜未来へ向かっていくシーンでは、みんなを導ける光になれるようにという思いを込めて、私自身が巨大化しました(笑)。
――ライブ中盤のブリッジ映像の後、高さ7メートル、幅4.5メートルの衣装をまとった水樹さんが登場しました。ド肝を抜くシーンでしたね。
水樹:“お奈々の塔”と名付けた衣装です(笑)。あのシーンで歌った「サーチライト」は、私のふるさとである愛媛県新居浜市を舞台にした映画(『ふたつの昨日と僕の未来』)の主題歌でもあったので、ここでまた原点に立ち返り、イチからみんなで未来に向かって頑張ろうという気持ちを込めました。「サーチライト」では、歌詞に合わせてみんなにケータイのライトを点けてもらっているのですが、その光景も本当に素敵で。一つひとつは小さな光だけど、それが合わさることですごく強い光になる。そこに込めた自分たちの気持ちと今の状況がシンクロするようなシーンでもありました。完成したあの衣装を初めて見た時は自分でやりたいと言っておきながらちょっと笑ってしまったんですけど(笑)、でもすごく感動的で、印象に残るシーンです。
――客席がケータイのライトで満たされていくシーンは、映像だとより鮮明に追体験できますよね。
水樹:「サーチライト」でケータイのライトを点けてもらうという演出は、コロナ禍に入る直前のツアー『NANA MIZUKI LIVE EXPRESS 2019』で初めて行ったんです。「PARADE」で再びあの光の空間に包まれて、「ようやくあの時のように戻れるんだ」という気持ちになって、よりグッときました。
――“お奈々の塔”のあとは、フロートに乗ってアリーナを周りながら歌唱されていましたね。
水樹:フロートはいつもアンコールで使うのですが、「パレードと言ったらフロートでしょ!」と、その演出を本編に組み込みました。しかも、“お奈々の塔”から分離して飛んだ小型の飛行船がトランスフォームしてフロートになるという流れで、めちゃくちゃかっこよくて! 声出しが解禁されて、みんなの近くまで行けたことが本当に嬉しかったです。みんなが「奈々ちゃーん!」と声をかけてくれたり、一緒に歌ってくれている姿を側で見ることができて本当に幸せでした。
――歌いながらハンドサインで一人ひとりに返事をしていたのに感動しました。
水樹:実は私、通常はふたつのことを同時にできないタイプなんですよ。でも、ライブ中だけはできるんです。アドレナリン全開の覚醒状態で、脳内が超活性化しているんだと思います(笑)。
――ライブという空間だと処理スピードが上がるのかもしれないですね。
水樹:音楽の力ってすごいですよね。危機に追い込まれると急に飛んだりする虫もいるじゃないですか(笑)。私も究極の極限状態になると、普段とは違う力が引き出されているんだと思います。
――中盤で披露されたアコースティックバージョンの「哀愁トワイライト」も素晴らしかったです。あのパートは日替わりだったそうですね。
水樹:そうなんです。『PARADE』はみんなで思いきり騒げる曲をラインナップしていった結果、ほっとしていただけるシーンがすごく少なくなってしまって。「これではみんなが途中で倒れてしまう!」と思い(笑)、後半戦に突入する前に、みなさんに涼を感じていただけるようなシーンを作りたかったんです。6曲を日替わりで披露したのですが、どのアレンジもとてもスペシャルなもので素晴らしかったです。ライブだけではもったいないので、このアレンジバージョンの曲をまとめたCDがほしいなって自分でも思っちゃいました(笑)。