MY FIRST STORY、Vaundyとの運命の出会いのような一夜を振り返る 「怪獣の花唄」でのコラボも
意外な共演だと感じたリスナーはきっと少なくなかっただろう。4月17日にLINE CUBE SHIBUYA(渋谷公会堂)にて開催された、MY FIRST STORY主催によるツーマンライブ『Giant Killing Vol.2』。2年前にTHE ORAL CIGARETTESと共演を果たした第1弾の際にも大いに話題になったイベントだが、今回MY FIRST STORYが対バン相手に指名したのはVaundy。まるで異種格闘技戦のような真っ向勝負を想像していたが、意外や意外、不思議な引力によって引き合わされた2組の、運命の出会いのような一夜が繰り広げられていた。
先にステージに登場したのはVaundy。1曲目から「不可幸力」で一瞬にして満員のオーディエンスを釘付けにした。ビートの重いバンドサウンドが腹の底から身体を揺らし、表情豊かで貫禄すら感じられる歌声にハッとさせられる。本人もMCで口にしていた通り、この日の会場にはVaundyのステージを初めて目にするリスナーも少なくなかっただろうと思うが、彼は姿を現して早々に抜群の求心力を放っていた。しかし、当の本人はあくまでも飄々とした様子を貫いているのがなんとも痛快だ。黄色いパーカー姿で舞台狭しと駆け回り、時に客席を指さしてポーズを決め、不思議なステップを踏みながら歌う。タイアップやMVでも話題をさらった「踊り子」や「恋風邪にのせて」「裸の勇者」などでは活き活きと、骨太でありながら心地好い歌声とサウンドでオーディエンスを魅了していく。
しかし、中盤で披露された「しわあわせ」では一変。暗転と共にマイクが微かに拾った、Vaundy本人の深呼吸を合図にしたように、フロアの空気が一瞬にしてピンと張りつめた。雲海のような真っ白な照明の中、手数の多いドラムが印象的な緻密なトラックの上に乗ったVaundyの歌声は、少年の独白のような儚さを深く深く孕んで辺りに立ち込め、しかしサビでは感情を吐露するような迫力のロングトーンで圧倒する。
CMソングなどで注目を集めることが多い彼の楽曲はメロディやサウンドの心地好さが先行しがちな面もあるが、それだけではない。Vaundyという歌い手は、その場に居合わせた人々を怒濤の如き勢いで呑み込んでいく熱量を、確かに持っているのだ。
MCではMY FIRST STORYへの感謝を述べつつ、挑戦的な口ぶりで「ここで終わらせるぐらいのつもりで来たので」「ワンマンのつもりでやるぜ!」と言い放ったVaundy。この場で彼の姿を初めて目にしたリスナーへ向け、「待ってるからね、あ、“待ってる”じゃ駄目か。先に行ってるから、走って追いついて!」と笑顔を見せていたのが印象的だった。
後半戦へ突入すると、自身の言葉通りワンマンでもおかしくないほどの密度を持ったVaundyのパフォーマンスを見届けたオーディエンスへ、MY FIRST STORYの礫のようなバンドアンサンブルが息付く間もなく襲いかかる。「アンダーグラウンド」「大迷惑」「ACCIDENT」と続いていくキラーチューンの数々からは、Vaundyの宣戦布告のようなMCを受け、真っ向からそれを受けて立つロックバンドとしての矜持が伺えた。ネックを青白く光らせたTeru(Gt)のギターがパワフルに冴え渡り、Nob(Ba)が手を振り上げるとオーディエンスが波のように湧き上がる。ハンドマイクを携えたHiro(Vo)が伸ばした手と眼差しは常にオーディエンスの方を向いており、それに応えるようにフロアは燃え上がっていった。
一方で、彼らの魅力はそのパワフルなロックバンドらしさだけではないと思い知らされる瞬間も。彼らの楽曲は激しさや疾走感が際立って聴こえるように感じられるが、その実メロディやコードには哀愁を感じる美麗さがある。それを際立たせているのは間違いなくHiroのボーカルだろう。「I'm a mess」での喉の奥から絞り出すような切実な低音、そして獣の咆哮を思わせるロングトーンで胸が苦しくなるほどのジリジリとした熱情を感じさせたかと思うと、「Dreaming of you」「moonlight」では信じられないほどにドリーミーな空間を作り上げてしまう。Kid'z(Dr)の手による安定感ある心地好いビートにのせ、甘い声で恋心を囁くHiro。酩酊感すら覚えるその一幕からは、バンドとしての、そしてHiroのシンガーとしての表現力の幅広さを思い知らされた。