THE ORAL CIGARETTES 山中拓也×MY FIRST STORY Hiro 対談 不仲説から転じた無二の絆とフロントマン同士のリスペクト

オーラル山中×マイファスHiro対談

 THE ORAL CIGARETTESがまたしても新たな挑戦に乗り出した。4月27日に配信リリースされるフィーチャリングEP『Bullets Into The Pipe』には、すでにリリースされている「ENEMY feat.Kamui」をはじめ、SKY-HI、MAH(SiM)ら、オーラルと交流のあるアーティストが参加した楽曲が並ぶ。その中でも一番ディープなストーリーがあるのではないかと思えるのが、MY FIRST STORY・Hiroが参加した「BLACK MEMORY feat.Hiro(MY FIRST STORY)」だ。

 かつてはお互いに誤解や勘違いがあり距離を置いていた山中拓也(Vo/Gt)とHiroだが、一度打ち解けて以降はプライベートでも交流を深め、お互いのライブで共演することも増えた。スタイルこそ違えど、パブリックイメージを全力で壊し、乗り越え、クリエイティブな変化をし続けてきたという意味で、ロックバンドとしてのスタンスはとても似ているものがあると思う。そんな2人が共演した「BLACK MEMORY」は、オーラルの代表曲でありながら、まるで生まれ変わったような新鮮さと素直さに満ちている。本当に心が通う者同士の、最高に熱いコラボだ。

 このコラボが実現した経緯から、それぞれのボーカリスト観まで、2人にたっぷり語ってもらった。5月から山中主宰のクリエイティブレーベル<DREAMLAND>の企画として行われる『DREAMLAND TOUR 2022』での共演も決まっていて、そちらもとても楽しみだ。(小川智宏)

THE ORAL CIGARETTES「Bullets Into The Pipe」Mixed Music Video

「Hiroはこれから先も一緒にやっていきたい仲間」(山中)

ーー数年前には「オーラルとマイファスは一緒にしてはいけない」という噂を耳にしていたんですよね(笑)。某フェスでのMCがきっかけでちょっとピリピリしているらしいと。

山中拓也(以下、山中):まあ、合ってますね、それは(笑)。

ーーそこからいろいろあって仲良くなったということだと思いますが、いつからそうなったんですか?

山中:いつぐらい?

Hiro:4年前ぐらいかな。

山中:そうか。その一件があった後、一度電話で話したんですよ。そこで「お互い勘違いしてるかもね」みたいな話になって。それで「1回メシに行かない?」って、スタッフさん含めて一緒にメシ行ったよな?

Hiro:うん。

山中:そのとき、正直に「あのときに言ってたこと、何なん?」みたいな話をしたんですけど、Hiroから「あれはマジでオーラルに対して言ったわけじゃない」と聞いて、ほんまかなあと思いながら喋ってて(笑)。でも2時間ぐらい飲みながら喋ってたら、どうやらHiroが言ってることはマジっぽいなと。それで、その後一緒にカラオケに行ったんですよ。そのとき、Hiroがオーラルの曲を歌ってくれたんです。それで「こいつ、オーラルのことちゃんと聴いてくれてるんや、かわいい」と思ったのをめっちゃ覚えてて。「俺の勘違いだったんやな」と思って、そこで仲直りしたんです。

ーーHiroさんは実際にはオーラルについてはどういうふうに思っていたんですか?

Hiro:基本的に俺らって、“自分たちが一番年下だ”というスタンスなんですね。関係性が近いバンドだと、バンド歴や年齢も含めて、なかなか自分らより若い人たちって周りにいないから。オーラルも、それこそSiMやcoldrainの世代で、俺らの1個上のラインにいるバンドっていうイメージでした。ガッツリ先輩すぎる感じでもなかったし、逆に言うとめっちゃ同世代という感じでもないっていう。でも他のバンドとは違う感覚というか、「一番近しいけど、先輩なんかなあ」みたいな距離感でしたね。

ーーカラオケで何を歌ったんですか?

Hiro:「BLACK MEMORY」だったかな。

ーーじゃあそこから今回のフィーチャリングに繋がっているんだ。

山中:ほんまにそこから始まりました。その仲直りのタイミングでHiroの「BLACK MEMORY」を聴いて「行けるやん。一緒にやろう!」となったことが今に繋がってる。

ーー逆に山中さんはMY FIRST STORYや、ボーカリスト・Hiroに対してはどういう印象だったんですか?

山中:俺は「ライバルやな」と思って、結構同じ目線で見てましたね。バンドとしての進み方というか、ハコ(会場)の上がり方もわりと同じタイミングなんですよ。アリーナをやるようになった時期とかもだいたい一緒だし、やってる内容や楽曲の規模感に対して、普通にかっこいいなと思っていたし、リスペクトはずっとありました。何事もなかったら最初から普通に仲良くしてたのかもしれないですけど、あのケンカみたいなことがあったので、当時俺は「たぶん一生絡まないライバルなんだろうな」と思っていました。遠くから見ておこうっていう。

ーー今はお互いのことをどう思ってるんですか?

山中:今はもう、全く年下に感じてないというのが正直な気持ち。年齢は3つ違うんですけど、Hiroと関わっているときは「自分が3つ上」という感覚ではなくて。プライベートで、自分が何か困ったときに連絡する相手ってかなり絞られると思うんですけど、今はHiroがその中に入っています。なんか、一緒にいるのがすごく落ち着くんですよね。以前の反動もあるのかもしれないですけど、これから先も一緒にやっていきたい、すごくいい仲間だなと俺は思っています。

ーー雨降って地固まったんですね。

山中:固まりまくりましたね。なんなら俺、マイファスのスタッフと腕相撲をしてましたからね。

「(山中は)バンドマンに対する概念が唯一変わった人」(Hiro)

ーーHiroさんは山中さんをどういうふうに見てるんですか?

Hiro:最初はやっぱり敬語で話していたんですけど、だんだんプライベートで会うようになって、コロナ禍前だったので結構飲みに行ったりすることが増えて、打ち解けました。俺、音楽やっている友達って本当に皆無なんですよ。なんかちょっと変なやつが多いから(笑)。でも拓也はそんな感じがなくて。どっちかというとオン/オフをしっかり分けているタイプだなっていう印象だったんで、普通にプライベートで会っても、俺自身も素でいられるし、そんなに気を遣わなくてよかった。だから会ったことない時期の印象と、会ってからの印象が結構ガラッと変わったかもしれない。俺の中のバンドマンに対する概念が、唯一変わった人かもしれないですね。

山中:自分ではあまりわからないんですけどね。でも、職業のことは1回忘れて、いかに学生のときの自分でいられるかみたいなことって大事じゃないですか。そうさせてくれる人と一緒にいるのがやっぱり一番楽だなと。

ーーHiroさんはその1人なわけですね。物事の考え方で通じるところもありますか?

山中:バンドマンとしてのやり方はなんとなく似てると思いますね。音楽性というよりも、オンステージしたときのお客さんに対しての見せ方だったり、ライブやツアーの切り方だったり、バンドとしてのブランディングの仕方みたいなところで、オーラルとマイファスにはすごく共通する部分があるなと思う。

Hiro:まあ、俺らの場合はちょっと特殊で、いろんな付加価値が重なって、バンドの見られ方が複雑になってはいるんですけど(笑)。でも根本のルーツ的な部分は、やっぱり近しいんじゃないかなって思う。音楽性も言ってしまえば近しいものもあるし、お客さんの層も重なっていることが多いのかなと。

ーー確かに、今のマイファスとオーラルって重なる部分が大きいなと思うんです。でも、それこそ初期は全然違うタイプのバンドだと思っている人のほうが多かったんじゃないかなとも思うんですよね。お互いに変化してきて重なる部分が増えてきたというか、その変化に対するスタンスがすごく似ているのかもしれないです。

山中:確かに、俺も最初はマイファスのこと、ラウド(ロック)をやってるやんちゃな子っていうイメージやったし。

Hiro:そうだよね。

山中:今とは全然印象違いますね。

ーーオーラルもそういうところがありますよね。

山中:そうですね。俺らはギターロック界隈でやってきていて、たまたま周りにラウドの先輩がいっぱいいたという感じで。どちらかというとテクニック優先みたいな感じでしたからね。

ーーそれが今や、このEPではラッパーともコラボするし、SiMのMAHさんともコラボするし、MY FIRST STORYのHiroさんともコラボするという。その振れ幅がオーラルらしいですよね。

山中:もう俺、ジャンルで選んでないんですよね。友達か友達じゃないかでしか選んでない。

ーーそもそもこういうEPをこのタイミングで出すというのは、どういう理由があるんですか?

山中:めちゃめちゃ漠然としたことを言うと「疲れた」って感じなんですよね。東京に出てきて、何年間か過ごして、やっぱりいろんな人に会うじゃないですか。最初は気を遣って、全員にちゃんと受け入れてもらえるように絡んだりもしていたんですけど、ここ最近は新しい人との出会いをそんなに求めなくなってきたんです。それよりも、自分が今一緒にいて落ち着く人とか、仲いい人たちと一緒に素晴らしい景色を見に行く方が、10年後、歳をとったときに幸せやなって。30歳になったタイミングぐらいでそういうことを思い始めたんですよね。

ーーHiroさんは、今回の話を受けたときにどう感じました?

Hiro:なんで俺「BLACK MEMORY」なんだろう? って(笑)。

山中:カラオケで初っ端に歌ったから(笑)。

Hiro:なんか、音源化に限らず、ライブとかフェスで、拓也はちょいちょい俺のことを呼んでくるんですよ。なんならマイファスが関係ないときに、俺だけを呼んできたりもするから。

山中:そうそう、「大阪いるんやろ?」みたいなノリで。

ーーライブでも何度か一緒に「BLACK MEMORY」を歌っていますよね。

Hiro:だから、まず一番に俺らにとって一番相性がいい「BLACK MEMORY」をやろうと。個人的に好きな曲っていうこともありますし、「ライブで一緒に歌った延長線上でついに音源化するんだ」みたいな感じです。ちゃんと形にしてきたなと思いました。

ーー確かに、もう半分Hiroさんの持ち歌みたいになってますからね。

山中:そうですね。

Hiro:そんなことはないですけど(笑)。

ーーHiroさんはこれまでもフィーチャリングとか、カバーとか、たくさんやってきたじゃないですか。オーラルで歌うというのは何か違う部分ってありますか?

Hiro:そんなにないですかね。基本的に、俺が自作の曲以外にフィーチャリングとして参加するときは、“1個の素材として使ってもらいたい”という思いが強いので。今回のレコーディングはめっちゃ早く終わったんですけど、5〜6時間ぶっ通しで歌うことよりも、高いクオリティのものを出した方がコラボした意味もあるし、その方が顧客満足度が高いんじゃないかなと思っていて。1個の作品としての完成度を高めたい思いの方が強いので、誰々だからっていう違いはないです。

関連記事

インタビュー

もっとみる

Pick Up!

「インタビュー」の最新記事

もっとみる

blueprint book store

もっとみる