櫻坂46「五月雨よ」&日向坂46「僕なんか」で話題 センチミリメンタル 温詞、言葉を美しく輝かせるメロディセンス

歌詞とメロディの絡み合いもポイント

 こうしたメロディの独創性は、センチミリメンタルの楽曲でも存分に味わえる。なかでも2020年に劇場版アニメ『映画 ギヴン』の主題歌として書き下ろした「僕らだけの主題歌」は、彼のメロディメイカーぶりが最もよく表れた作品の一つだ。

 まずサビの冒頭、〈僕は行くよ〉と長く伸ばした後、それまで溜めていたエネルギーを放出するようにして次の〈ねぇ 見ててよ〉でメロディが高く飛翔する。それを受けて、続く〈可笑しくて 笑った/すれ違い 怒った〉のフレーズにて旋律が大きく躍動。そして結びの〈あなたとの夢を叶えてくるよ〉でやさしい着地を見せる。この最初から最後まで流れるような美しいメロディは、まるでジェット機が助走してから離陸し、空中で大きく旋回してから着地するまでを描いたような、ドラマチックなストーリー性のある展開だ。

センチミリメンタル 『僕らだけの主題歌』 Music Video

 センチミリメンタルの作品の場合、こうしたメロディセンスにさらに歌詞を乗せる技術も加わってくる。

 TVアニメ『バクテン!!』(フジテレビ系)のオープニングテーマとなった「青春の演舞」は、疾走感のあるバンドサウンドに乗せた言葉とメロディの絡み合いが秀逸だ。この曲のサビはいきなり畳み掛けるメロディで始まる。そこに〈泣いて 転んで 跳んで 回って〉と必死にもがいているような言葉を繰り返し当てることで、躓いても前へ進んでいこうという力強さが感じ取れるものになっている。そして、次に歌われる〈未完成な僕らの〉という言葉が強く響くことによって、聴く者の心に寄り添いながら、同時に奮い立たせる力を持った作品だと感じる。

センチミリメンタル 『青春の演舞』 Music Video

 そして何と言っても、ゆったりとしたピアノバラードの「リリィ」が名曲だ。サビ冒頭の〈Oh〉でこれでもかというくらいにメロディが高く駆け上がった後、〈僕らは強くなんかないから〉にてファルセットでやさしく歌いながら降りてくる。聴き手の心の痛みを癒すようなこの曲を、最後に〈君は大丈夫だ〉というストレートに肯定するフレーズで締めているのも美しい。

センチミリメンタル 『リリィ』 Music Video

 YouTubeで公開しているMVのコメント欄には海外からの投稿も多い。こうした幅広い反響は、彼の楽曲には言語の壁を超えて伝わる力があることを物語っている。耳に残るライン、ストーリー性のある展開、聴く者を奮い立たせる力、癒す力……。自身の作品だけでなく、提供した作品でも注目を集めている温詞の注目度は、今後もより一層高まっていくに違いない。

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