センチミリメンタル、一人ひとりの“あなた”に奏でる真摯な音楽 『やさしい刃物』を再現した生配信ライブレポート

センチミリメンタル『やさしい刃物』再現ライブレポ

 センチミリメンタルが生配信ライブ『センチミリメンタル Streaming Live "やさしい刃物"』を12月11日に開催した。その10日前、12月1日に1stフルアルバム『やさしい刃物』をリリースしたセンチミリメンタル。このライブは、アルバム収録曲を曲順通りに披露する再現ライブだった。

 アルバム1曲目の「suddenly」をSEにして温詞、サポートメンバーの村田隆嘉(Gt)、永見和也(Ba)、ナガシマタカト(Dr)が入場。同曲の後半から演奏をスタートさせた。そして「キヅアト」へ。ヒリヒリとしたサウンドには真っ赤な照明がよく似合う。先述の通り、このライブは“『やさしい刃物』の世界観を表現する”というコンセプトの下で行われた。しかしバンドが音源にないアプローチを加えることもよしとされていて、温詞も鋭いサウンドに合わせて語気を強めたり、想いを込めるようにやや溜め気味で歌ったりと、今この場で生まれる感情の流れに従って歌っている。時間をかけて丁寧に作ったアルバムに込めたメッセージを、生のバンドの息遣いを通して伝える。それがこのライブの目的であり、だからこそシンプルな照明、シンプルなカメラワークでバンドの姿が捉えられた。

 「ご来場、じゃないな……観てくれてるみんな、どうもありがとう」と配信ライブならではの一言から始まった最初のMC。ここでは、今いるスタジオでTVアニメ『ギヴン』(フジテレビ系)のライブシーンのモーションキャプチャ撮影をしたという裏話を明かし、「今日はここからセンチミリメンタルとして届けていきたいのでよろしくお願いします」という挨拶に代えた。3曲目「僕らだけの主題歌」は楽器を持たずに歌唱。手を伸ばしたり、マイクに両手を添えたり、歌詞に合わせて手を振ったり繋いだりする温詞の姿を臨場感あるカメラワークが追う。歌もバンドも熱量が高く、だからこそ何とか絞り出したような声で歌う〈もう戻れないね〉がもっと切なく感じられた。「とって」を経ての「死んでしまいたい、」は音源だと歌から始まるが、この日は温詞が鍵盤を奏でてイントロを添える。メロディを少し変えたり声色でも変化をつけたりと、ライブならではのボーカルアレンジも多く見受けられた。

 チャット欄に書き込まれた視聴者コメントを読んでいった2度目のMC。「刺さる」というコメントに対し「『やさしい刃物』なだけありましたね」、「一杯飲みながら視聴させていただいてます」に対し「酒のつまみにしてはちょっと重くないですかね(笑)」などと返していく。そして「遠く離れていますが、気持ちはみんなのすぐそばにいますし、何なら今すぐにでも飛んでいきたいという想いではいますので」と伝えたあと、「みんなの元に飛んでいけるような、気持ちのこもった曲をやりたいと思います」と紹介されたのが「星のあいだ」だ。恋の痛みを歌った曲だが、〈だから待ってて/生命を燃やしながら/何度も会いに行くよ〉というフレーズは確かにライブのことを歌っているようにも聴こえる。それにしてもボーカルの安定感がすごい。それこそ星の間を縫うように上昇と下降を繰り返す歌メロが特徴的(しかもAメロとサビは同じメロディなので、難易度の高いそのフレーズを何度も歌う構成になっている)なこの曲でも音程を正確に捉えつつ、ダイナミックな歌唱でバンドを牽引する腕っぷしを見せた。

 歌詞のタイポグラフィが画面上に表示される演出があったのは「冬のはなし」。タッピングをはじめ、とにかくギターが絶え間なくアプローチするギヴン(センチミリメンタルがサウンドプロデュースするTVアニメ『ギヴン』の劇中バンド)提供曲セルフカバーに続くのが「はなしのつづき」だ。タイトルからして繋がりを感じさせるこの2曲、アルバムを聴きながら想像を膨らませた人も多いと思うが、この日は曲間で橋渡しとなるSEが流された。その後披露されたギヴンセルフカバーの「夜が明ける」までで3部作といった印象で、苦しみや葛藤、感情の嚥下を経て、まさに“夜が明けた”ようなEメジャーを鳴らすことで物語を締めた。

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