ずっと真夜中でいいのに。が音楽で作り出す“心を解放する場所” 豊かな表現を味わえるライブならではのメッセージ
それを踏まえて、3月20日のビルボードライブ東京公演を振り返る。このライブでは、アコースティックギター、ウッドベース、ドラム、ホーンといった編成でのプラグレスアレンジで各曲が演奏された。例えば、『伸び仕草懲りて暇乞い』収録の「夜中のキスミ」は、細かいリズムで跳ねまわるバンドサウンドと滑らかに曲線を描くACAねの歌とのコントラストが耳に楽しい好演である。そうした新曲はもちろん、最新のずとまよグルーヴで既存曲が再解釈されていく様も聴き応えがあったし、「琥珀色の街、上海蟹の朝」(くるり)カバーは今回のビルボードならではの要素だった。なお、くるりの「琥珀色の街、上海蟹の朝」のオフィシャルインタビューでもネオソウルというワードは出てくるが、同時に“それっぽくなりすぎると楽しみがない”とも語られており(※2)、確かなバックボーンを持ちながら、焼き直しで終わらないユニークな表現を目指し続けているという点で、ずとまよはくるりをリスペクトしているのかもしれない。シックな雰囲気のビルボードのステージにずとまよらしい舞台装飾を持ち込んでいたことも、プラグレスと言いつつ扇風琴をバリバリと鳴らす場面があったことも、痛快なポイントだった。
全体としては、モタりを内包したタイム感での演奏で、人それぞれが持つバイオリズム、その歪さをまるごと受け入れ、違いを楽しんでいこうというずとまよの姿勢がここからも窺えた。そしてその音楽は“あなたもこの場所で心を解放していいんだよ”と伝え続けてくれているような気がする。
ACAねの歌やバンドが放つ生のエネルギー、音楽的な豊かさはもちろん、丁寧に敷かれた伏線を回収していく楽しさを味わえること、そしてメッセージの裏にあるACAねの想いに触れられることがずとまよのライブの魅力だ。4月16・17日にはさいたまスーパーアリーナでの2デイズ公演『ZUTOMAYO FACTORY「鷹は飢えても踊り忘れず」』が控えているため、次は一体どんな姿を見せてくれるのかも楽しみなところ。「鷹は飢えても踊り忘れず」という公演名は、ことわざ “鷹は飢えても穂を摘まず”と“雀百まで踊り忘れず”をもじったものだと思われるが、このタイトルは、パンデミック以降の閉塞感の漂う世界の中でもライブという場を諦めなかったずとまよの意志の象徴にも思える。『果羅火羅武~TOUR』、『伸び仕草懲りて暇乞い』、『「ZUTOMAYO PLUGLESS」at. ビルボードライブ』で見られた音楽の根源的快楽を追求するモードは、このさいたまスーパーアリーナ2デイズにも繋がっていたのだろう。さらに気になるのは、16日公演は[day1 "memory_limit = -1"]、17日公演は [day2 "ob_start"]とサブタイトルにプログラミング言語が掲げられていること。そして、タイトルが2日間で異なるということは何かしら違ったポイントがあるのか、ということ。また、突如公開された新曲「ミラーチューン」(MVがアーケードゲーム風で『果羅火羅武~TOUR』からの流れを感じる)がライブにどう絡んでくるのかにも注目だ。
※1 https://twitter.com/zutomayo/status/1488441089174294530
※2 https://www.quruli.net/kohakushanghai_interview/
■ライブ情報
『ZUTOMAYO FACTORY「鷹は飢えても踊り忘れず」』
会場:さいたまスーパーアリーナ
・2022年4月16日(土) [day1 “memory_limit = -1”]
OPEN 17:30/START 19:00 <SOLD OUT>
・2022年4月17日(日)[day2 “ob_start”]
OPEN 16:30/START 18:00
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■リリース情報
ずっと真夜中でいいのに。
新曲「ミラーチューン」配信中
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