BTSは初受賞なるか? 『第64回グラミー賞』開催前に押さえておきたい5つのトピック
カニエ・ウェストは登場するのか
そのほか『第64回グラミー賞』において注目すべきトピックといえば、その才能ゆえに問題ある発言や行動が話題となるカニエ・ウェスト(現在は“イェ”名義で活動)の動向だ。今年カニエは主要部門である「年間最優秀アルバム」を含む全5部門にノミネート。受賞するかどうか、前評判としては何とも言い難いが、『DONDA』という作品のインパクト、他アーティストには到底辿り着くことはできない表現の数々は評価に値するものだと思う。
しかし、開催を目前にカニエの『グラミー賞』でのパフォーマンスがキャンセルされたと報道された(※1)。報道によれば、ここ最近のカニエの言動を危惧した上での判断とのこと。具体的には元パートナーであるキム・カーダシアンと現在交際中であるコメディアン、ピート・デヴィッドソンによく似た人物の誘拐と埋葬を描いた「Eazy」(The Gameとのコラボ曲)のMV、そして今年の『グラミー賞』の司会を務めるトレヴァー・ノアに対しての人種差別とも受け取れる発言が理由だとされている。
そもそも出演が決まっていたのかどうかも含め、正式なアナウンスがされたわけではないが、もしカニエのステージが予定されていたとしたら、今年の大きな見どころが1つなくなってしまったと言えるだろう。過去にもテイラー・スウィフトとの騒動(2009年の『MTV Video Music Awards』でのテイラーの受賞スピーチを邪魔した件)があったため、そうした突飛な行動や発言を事前回避する意味もあるだろうが、この報道により『グラミー賞』側の判断がまた問題視されている。
40年ぶりに復活したABBAは初ノミネート
意外とも取れるのが、ABBAの『グラミー賞』初ノミネート。こちらも注目しておいて損はないだろう。およそ40年ぶりに復活したABBAは「I Still Have Faith In You」で「最優秀レコード賞」にノミネート。すでに世界のBGMとして、The Beatlesと同じく人々の生活に根ざした存在となっているだけに、『グラミー賞』を特別獲得する必要もないかもしれない。だが、すでにABBAは「I Still Have Faith In You」も収録した最新作『Voyage』が最後の作品であると述べている(※2)。そんな長い旅路を歩むABBAが『グラミー賞』を受賞した光景も、ぜひ見てみたいものだ。
そしてロックシーンの行方も気になるところ。特にFoo Fighters、AC/DCが3部門、ポール・マッカートニー、クリス・コーネルらが2部門にノミネートされるなどレジェンド、ベテラン勢が顔を揃える。これらの部門に若い世代の名前がない理由は、現在のUSシーンの状況、コロナによってロックバンドという形態が大きな打撃を受けたことなど様々な要素が挙げられる。もちろんベテランらがシーンを牽引することも重要だ。2022年はフェスやワールドツアーが続々と再開される予定となっており、それら現場の熱狂がロックシーンをこれまで以上に活性化させてくれるはずだ。
今年の『グラミー賞』がどのような結末を迎えるかは当日までわからないが、受賞したアーティストは『グラミー賞』受賞の冠を掲げることができる。そんな冠を被ったアーティストたちが1日でも早く、1組でも多く来日してくれることを願うばかりだ。近い未来、肉眼でそのステージを見ることができるかもしれないという意味も込めて、『グラミー賞』の行方を見届けたい。
※1:https://www.nytimes.com/2022/03/22/arts/music/kanye-west-grammy-awards.html
※2:https://www.euronews.com/culture/2021/10/28/final-voyage-abba-s-new-album-will-be-their-last-new-music