Official髭男dism、King Gnuらバンドミュージックから一望するリズム/ビートのトレンド

 バンドサウンドにおけるリズム/ビートのトレンドの変化はリアルタイムでヒットしているバンドのカウンターから発生しているケースが多い。時代のムードを変えてきたバンドは何もリズムのみを探求しているわけではなく、「まだ鳴らされていない音楽」を創造したい一心で、結果的にバンドシーンのトレンドを塗り替えてきた。だが、時代の変化を端的に表すのはリズムだ。日本のミュージックシーンに変革を起こしてきたバンドサウンドの現在のリズム/ビートを一望してみたい。

2018年以降のリズムトレンドを自ら更新する、ヒゲダン、King Gnu

 フェスブーム、邦ロックブーム時の4つ打ちのカウンター的ニュアンスを伴ってファンク、ソウル、ジャズやヒップホップのグルーヴを基礎に持つSuchmosやNulbarich、WONKらがJ-POPリスナーにもリーチした2016年以降、16ビート、いわゆる横ノリがライブシーンを押し広げ、その土壌が耕されたところに、Official髭男dismやKing Gnuが登場し、ストリーミング時代のトップランカーになったことは言うまでもないだろう。あまりに大雑把かつ今やUS本国ではリテラシー面で違和感がある形容だが、日本の若いリスナーがブラックミュージックやグルーヴという概念に肉体的な歓喜を伴ったことが、彼らがブレイクスルーを果たした2018年以降のリズムのトレンドを生んだ。だが、彼らの2021~2022年の新曲にはすでに新たなリズムが垣間見える。

 まずOfficial髭男dismに関しては、内外のポップスを彼らの胃袋で消化しているだけに、ソウルやファンクだけがバックボーンではないのは自明であるが、2nd EP収録の「Stand By You」やその前の「ノーダウト」でJ-POPリスナーに横ノリの楽しさを浸透させ、以降もVulfpeckのジョー・ダート(Ba)をリファレンスとするベースラインを持つ「Universe」などで、リズムの探求を続行。今年1月リリースの「Anarchy」はベースミュージックからのインスパイアも強いものの、ドラムのビートは比較的固く空間的には狭い音像の8ビートである。ただ、ベースがグルーヴすることで、8ビートの中に16ビートを感じる構造が新鮮で、この曲で縦ノリするのはむしろ難しい。近いアプローチの「Tell Me Baby」(2017年)を2022年の音像に更新している感もある。

Official髭男dism – Stand By You[Official Video]
Official髭男dism – Anarchy[Official Video]

 King Gnuの場合、エッジーなロックでもクラシカルなアレンジを施していても、リズムの基礎は16ビートが大半を占めてきた。「Tokyo Rendez-Vous」では太いグルーヴの横ノリのみならず、エフェクティブなベースが前面に出た音像にこの曲で初めて触れたリスナーもいるだろう。「Slumberland」「白日」と、作品を重ねるごとにビートのテクスチャを変化させながらも、徹底的に腰に来るリズムをJ-POPリスナーにも叩き込んだ印象がある。映画的な体験と20年代のロックバンド像を伝えるために必然だったKing Gnuの16ビート。それが、「飛行艇」は重めの聴感を持った8ビートで、必ずしも横ノリに固執してきたわけではない。ただ「一途」で発露したガレージとヘヴィロックやインダストリアル感が掛け合わされた8ビートは彼らのビート感の中では新たなアプローチだった。また、単にピアノ発信のバラードと言い切れない打ち込みと生のビートの抜き差しが効果的に展開してく「カメレオン」は8ビートと16ビートを行き来するのが特徴的だ。

King Gnu – Tokyo Rendez-Vous
King Gnu – カメレオン

 Official髭男dismやKing Gnuが築いた土壌で頭角を表してきたバンドもJ-POPにより近いリズムから、ジャズの混交まで多彩だ。サイケデリックなファンクチューン「Balmy Life」でポピュラリティを獲得したKroi。最新EP『nerd』収録の「WATAGUMO」では同じ16ビートでも浮遊感を醸成し、新曲の「Small World」ではメリハリの効いたアレンジとジャズのコード感を際立たせている。横ノリ代表でもあり、さらに言えばどう乗ろうがお構いなしなフリーなマインドがKroi独特のグルーヴとも言える。フリーなマインドと言えば、童謡の「あんたがたどこさ」をモチーフにした同名の新曲では4拍子のクラップに始まり、アフロビートを体感させつつ、手数の多いドラムパターンでジェットコースター級のリズムチェンジを体感させるBREIMENも現在のバンドを象徴するリズムを構築している。

Kroi – WATAGUMO [Official Video]
BREIMEN「あんたがたどこさ」Official Music Video

 また、“泣けて踊れる“音楽をテーマにしているOmoinotakeは16ビートを基調にしつつラテンや80年代シティポップフレーバーもあるメジャーデビュー曲「EVERBLUE」の印象が強いが、ピアノトリオでネオソウル感を打ち出すあたりにJ-POPの完成度を更新する予感があるし、郷愁を感じる文学的な歌詞世界と変幻自在なボーカル表現が、現代ジャズからオーセンティックなミュージカル音楽のジャズまで幅広いリズムに乗るBialystocksも、リスナーにジャンルの敷居を感じさせる前に楽曲の完成度でリピートさせる力がある。

Omoinotake / EVERBLUE
Bialystocks – Over Now【Music Video】



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