Cö shu Nieが辿り着いた新たな音楽世界 アルバム『Flos Ex Machina』が擁する艶やかな生命力
今作『Flos Ex Machina』でCö shu Nieが作り上げているサウンドは、「カオティックである」という点においては『PURE』期の彼らと通じているが、より立体的で、隙間も活かしたサウンドプロダクションや、歌を中心に置いたアレンジが目立つことで、『PURE』とは全体の印象はかなり異なる。コラージュのように重層的に、様々な色や匂いを持つ音を視界いっぱいに貼りつけることによって密室的な音世界を構築していた『PURE』に比べると、この『Flos Ex Machina』は、音の「動き」それ自体によって、自由で新しい音楽世界を創造しているように感じる。それが、このアルバムを自立した「生き物」たらしめている大きな要因でもある。ストリングスやホーンといった生楽器の鮮やかな響き、アルカのように肉肉しくワイルドなエレクトロニクスーー様々な音楽的要素が作品の中に入り込んでいるが、全景を見ればどこかシンプルにすら感じさせるところに、この2年間でCö shu Nieが辿り着いたひとつの境地があるのだと思う。
個人的には、中盤に配置された新録曲たちーー特に、「病は花から」と「青春にして已む」が好きで、繰り返し聴いている。「病は花から」は、まるで澁澤龍彦の世界。毒と狂気が体を侵食していく。「青春にして已む」は、生きていく中で疲弊し固まってしまう魂を柔らかく溶かす、切なくも温かな光のようだ。加えて、最後に収録された「迷路~序章~」と「迷路~本編~」はCö shu Nie初の自主制作CDに収録されていた楽曲で、ライブではお馴染みの代表曲。最初のバーションとは歌詞が少し(だけど、大胆に)変わっていて、両者を比べれば、中村未来(Vo/Gt/Key/Mani)の意識の変化を感じることができる。新曲をたくさん発表する音楽家も好きだが、同じ曲に向き合い続けることができる音楽家も尊いと改めて感じる。人と人が何度でも出会い直すように、彼らもまた、自らが作った音楽と出会い直しているのだ。それだけ、創作が人生に根差しているということでもあるだろう。
この世界は本当に、私たちの目に見えているものだけで成立しているのだろうか。時計の針は均一に進んでいくが、私とあなたが過ごしている「時間」とは、本当に同じものなのだろうか。Cö shu Nieの音楽を聴いていると、そうした様々な「問い」が、とても孤独な場所から放たれているように感じる。でも、その「問い」を、彼らは優しく、寄り添うような表現へと昇華してみせる。私も、きっとあなたも、複雑で、孤独なんだと。だから、分かち合えるものがあるのだと。私がCö shu Nieの音楽を愛する理由はそういうところにある。
■リリース情報
2ndアルバム『Flos Ex Machina』
CD発売日:2022年3月16日(水)
https://smar.lnk.to/ThGtKK
デジタル配信日:2022年3月16日(水)
・初回生産限定盤 ¥6,000(税込)
ボックス&アートカード豪華仕様
未公開ライブ映像がWEBで見れるアクセスコード封入
・通常盤 ¥3,300(税込)
<収録曲>
1. red strand(「PSYCHO-PASS サイコパス 3 FIRST INSPECTOR」EDテーマ)
2. BED CHUTE!!
3. undress me(テレビ東京 ”サタドラ” 「女の戦争~バチェラー殺人事件~」主題歌)
4. fujI
5. 病は花から
6. 青春にして已む
7. miracle(WOWOW『ドラマW インフルエンス』主題歌)
8. 夏の深雪
9. give it back(TVアニメ『呪術廻戦』第2クール エンディング主題歌)
10. SAKURA BURST(TVアニメ『コードギアス 反逆のルルーシュ』第2クールEDテーマ)
11. nightmare feathers_
12. 迷路 ~序章~
13. 迷路 ~本編~
■関連リンク
https://coshunie.com