海蔵亮太、「サイコパスのうた」で覚醒したシンガーソングライターとしての表現 岩﨑充穂との対談で紐解く意外な素顔

海蔵亮太×岩﨑充穂 対談

自分にとって歌とは何なんだろうっていうことを考える機会になった

ーー「ここには」もかなり音数がシンプルで。後半にはおもしろい展開が用意されています。

海蔵:僕がデモのときに思い描いていたイメージとは全然違うものに仕上がったんですけど、そのギャップにワクワクしたというか。同じ曲であっても、アレンジによってこんなに聴こえ方が変わるんだなっていうことを教えていただけた気がしました。ただ、歌を導いてくれる音が少ないので、歌うのはけっこう難しかったんですけど。

岩﨑:音数を極力削いでいったので、それによって歌うのが難しくなってしまったっていう(笑)。この曲のキモは曲の最後でクワイア隊が入ってきて、海蔵くんの歌と混ざり合うことによって世界が一気に広がっていくところだと思います。クワイア隊はブルガリアの方々に参加してもらったので、レコーディングにあたっては日本語の発音をかなり練習してもらいました。

海蔵:音楽に国境はないんだっていうことを強く感じるレコーディングでしたね。僕は学生時代にアカペラをやっていたので、そこで培ったものをしっかり出せたのがうれしかったです。海外の方と一緒に“ここには”というワードを歌っているときは、カラオケ世界大会でいろんな国籍の人たちと「We Are The World」を歌ったときの気持ちを思い出しました。

ーー「待ちぼうけ」ではジャジーなサウンドにもトライされていますね。

海蔵:デモのときはちょっと重々しい雰囲気があったんですけど、ジャズテイストのアレンジがほどこされたことで一気にふわっとした世界観になりました。この曲の軽やかさは、アルバムの中でも新たな良さを引き出してくれているんじゃないかなって思います。

岩﨑:このピアノジャズトリオのサウンド感は、今回僕が海蔵くんにどうしてもトライして欲しかったもののひとつでしたね。ここでも楽器の演奏と歌をほぼ同録したんですけど、シンプルなサウンドと歌の相乗効果が狙い通りに出せたと思います。ライブ感のあるいいグルーブが歌声に出ているなって。

海蔵:この曲のレコーディングはけっこう夜遅かったので、演奏してくださる方々も含め、みんな謎な深夜テンションになってましたよね(笑)。その場でいろいろなアイデアを出し合ったりもしましたし。

岩﨑:他の曲と比べると、この曲はめちゃめちゃ時間かけて録ったよね。

海蔵:めっちゃ時間かけました。みんなが子供のように音楽を楽しんでいるのが伝わってきたので、その雰囲気が曲にもしっかり現れていると思いますね。

ーー提供曲である「night light」「Style」のアレンジも新たな雰囲気がありますよね。

海蔵:そうですね。ディスコやファンクといった要素が入った曲になっていて。僕が作詞・作曲をしたわけではないんですけど、だからこそ自分が歌ったらどうなるかがすごく楽しみなところがありました。で、実際歌ってみると、「あ、意外とこういうサウンドも歌えるじゃん、自分」って思ったりもして(笑)。

岩﨑:「Style」は僕の世代からするとちょっと懐かしさを感じるサウンドや歌詞になっているんですよ。それを海蔵くんが歌うおもしろさはすごく出たんじゃないかな。

海蔵:“RX-7”とか、けっこう知らないワードが歌詞に出てきますからね。

岩﨑:でしょ? “RX-7”は僕らの世代が憧れたスポーツカーなんだけどね。

海蔵:そうなんですか! この曲の歌詞から僕は、理想と現実のギャップというか、そこで生まれる葛藤みたいなものを感じたんです。そういう部分は30代になった今の自分にもマッチする感覚もあったので、サウンド感も含めてすごく素敵な曲だなって思いながら歌ってましたね。提供していただいた曲には、自分で書いていないからこそのおもしろさがあるなってあらためて思いました。

ーーデビューから約4年。新たなフェーズへの突入を感じさせる本作を作り上げたことで、海蔵さんの中に何か見えてきたものはありましたか?

海蔵:今回の制作は、自分にとって歌とは何なんだろうっていうことをあらためて深く考える機会になりました。今までは聴き手の人のために歌っている感覚がすごく強かったんですけど、自分で作詞・作曲をたくさんさせていただいたことで、自分自身のために歌うことも悪くないというか、むしろそういう思いで歌うことも大事なのかもなって思えるようになったんですよね。自分自身に対して歌うことの先に、聴き手の方に伝わるものがあるような気もするし。そういった変化も含め、海蔵亮太の新たな側面を感じていただけるアルバムになったと思うので、そこをじっくり味わっていただけたらうれしいですね。

岩﨑:うん。海蔵くんには今後も、その時々で自分自身が歌いたいと思う歌を追求していってもらいたいなと思います。そうしていく中からきっと、新しい海蔵くんの歌が生まれてくるはずなので。

ーーシンガーソングライターとしての一面がこの先もっと見えてきてもいいわけですし。

海蔵:今回の制作を通して、自分で曲を作ることがこんなにも楽しいものなんだなっていう発見があったので、今後も機会があればチャレンジしていきたいなと思っています。とは言え、完全にシンガーソングライターになるのはまた違うかなっていう思いもあるんですよ。自分からは出てこない、思いつかない表現と出会うことができる提供曲を歌うおもしろさもやっぱりあるので、今後はその両輪でやっていけたらいいのかなって。

ーーここからどんな曲が生まれてくるのかが楽しみになりますね。

海蔵:そうですね。「こんなこともやってみたいな」っていう、いい意味での欲みたいなものが出てきたりもしているので、それを丁寧につないでいきながら、よりよい音楽人生を歩んでいけたらなとは思います。

岩﨑:僕の中にも、もうすでに海蔵くんにやって欲しい新たなことが見えていたりもしますから(笑)。それをまたいい形で歌ってもらえる機会を作れればなと思いますね。

海蔵:最終的には歌声とベース音だけの曲ができちゃったりとかして(笑)。

岩﨑:お、それいいね。おもしろそう。

海蔵:わ、自分で恐ろしいことを言ってしまいました(笑)。ここからも頑張って、おもしろいことをやり続けていこうと思います。

■リリース情報
海蔵亮太
3rdアルバム『コトダマ』
2022年2月23日発売

TYPE-A(CD+DVD)
¥4,500(税込)
TYPE-B(CD)
¥3,000(税込)

●TYPE-A/TYPE-B共通
<CD>
01. 会いたい会えない
02. night light
03. 君を好きになることが どんな罪になるって言うの?
04. Style
06. 旅立つ僕らに
07. いつか
08. 距離
09. 良いことありますよーに
10. 待ちぼうけ
11. 誰そ彼-2022-

●TYPE-Aのみ
<DVD>
海蔵亮太 _LIVE 2021『Restart』
@渋谷・duo MUSIC EXCHANGE(2021.11.23)より
1. 抱きしめて
2. 繋がってる…
3. エイリアンズ
4. 僕が歌う理由(わけ)
5. 誰そ彼
6. 愛のカタチ
※海蔵亮太 LIVE 2021『Restart』-Behind the Scenes-
※「誰そ彼」MUSIC VIDEO
※「会いたい会えない」MUSIC VIDEO (Another Ver.)

●海蔵亮太 公式HP:https://www.ryota-kaizo.com
●海蔵亮太 公式TikTok:https://vt.tiktok.com/ZSJfpdafb/


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