君島大空、諭吉佳作/men、長谷川白紙…崎山蒼志『並む踊り』優れた“個”が集まる場としての面白さ

 崎山蒼志の2ndアルバム『並む踊り』が本日10月30日にリリースされた。崎山が単独名義で他者と共作するのは今回が初めてで、そのラインナップも近年注目されている“シンガーソングライター”の中から特に強力な面子を集めたものになっている。これからの音楽シーンを担う才能が一堂に会する場としても記念碑的な一枚になった本作に関連して、ここでは参加アーティスト各人の音楽性とその共通点について考えていきたい。 

崎山蒼志『並む踊り』

 まず、本作のリーダーである崎山蒼志。昨年末に発表した1stアルバム『いつかみた国』は300曲を越える膨大なレパートリーから厳選された7曲からなる作品で、フォークロックにエモ~ポストロックや近年の多展開型J-POPを融合させたような作編曲、驚異的に味わい深い歌詞、唯一無二の演奏表現力など、若さに技術や音楽的豊かさが間に合わなければ生み出せない類の傑作となった。収録曲は打ち込み1曲を除き全て崎山単独のギター弾き語りだが、ハードコアパンク的な分厚い音色とテクニカルメタルばりの高速刻み、そしてヒップホップや各種ダンスミュージックにも通じる強靭なビート処理能力など、様々なジャンルをまたぐ要素が自然に統合されており、伝統的な“シンガーソングライター”のスタイルを引き継ぎつつ全く新しい演奏感覚を生み出している。そうした持ち味は幅広く分け隔てのない聴取姿勢(こちらのインタビューに詳しい)を通し培われたもので、同時代の音楽に関してもBlack Midiやイヴ・トゥモアなど話題になったものを積極的に聴き貪欲に影響を取り込んでいる模様。『並む踊り』に参加する長谷川白紙との交流も長谷川の1st EP『草木萌動』(2018年12月18日発表)を崎山がTwitterで絶賛したのがきっかけで、本作における3者との共作は崎山のこうした音楽的発展傾向をよく示すものといえる。

崎山蒼志「国」(MV)

 その共作第1弾である「潜水」(9月20日配信開始)でアレンジと演奏を担当している君島大空はまずサポートギタリストとして名を馳せたテクニカルなプレイヤーだが、今年の3月13日に発表されたデビューEP『午後の反射光』はそうした技術を一切ひけらかすことのない美しい歌もの作品となった。こちらのインタビューで挙げられているジム・オルーク『The Visitor』やFennesz、My Bloody Valentineらの影響を独自の形に昇華したような一人多重録音は他では聴けない複雑な構造をなしており、崎山との「潜水」にもそれが最高の形で活かされている。君島の音楽でもう一つ興味深いのが独特の和声感覚で、先述のアーティストたちに加え、高校時代にひたすらコピーに励んだというテクニカルなメタル(自身のTwitterではDream Theater『Train of Though』やThe Faceless、Vildhjartaといった“プログレッシヴメタル”の名前を出している)の特殊で美しいコード遣いがさりげなく自然に取り込まれているように思われる。デビューEPのタイトルトラックにはCynic(プログレッシヴメタルを代表するバンドであり2006年の再結成後はインディーロックに急接近した)を連想させる部分があるし、崎山との「潜水」にもそうした感覚が落とし込まれているようにみえる。たおやかで中性的なコーラスも音響の一部としてうまく機能しており、崎山の表現力豊かなボーカルを絶妙に引き立てている。

崎山蒼志「潜水 (with 君島大空)」(MV)

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