なにわ男子、ONE OK ROCK、常田大希、The Beatlesに至るまで 裏側に迫るドキュメンタリーが求められる理由とは?
アーティストの表現には、楽曲やライブといった様々な形があり、そのうちの一つとして、活動の舞台裏に迫ったドキュメンタリー作品を挙げることができる。昨年には、YOASOBIにとって初となる有観客ライブ実現に向けた日々に迫った『情熱大陸』(TBS系)の放送が大きな話題となったが、他にも、普段は見ることのできない活動の裏側を記録したドキュメンタリー作品が次々と生まれている。今回は、いくつかの作品を紐解きながら、そうした数々のドキュメンタリー作品が制作され、そして求められている理由に迫っていきたい。
まず、ジャニーズグループ関連の作品について。現在、2018年から始まったドキュメンタリー番組『RIDE ON TIME』(フジテレビ系)のシーズン4が放送されている。同番組は、「なにわ男子 〜デビュー もうひとつの舞台裏〜」「SixTONES 〜2年目の本音〜」といったテーマを掲げながら、それぞれのグループに長期にわたって密着取材を行っている。ファンに向けた番組という性質が強い一方で、それまでのグループの歩みや変遷について事細かに把握していない視聴者の興味も引き立てるように、とても丁寧に作り込まれている印象を受ける。そしてそれこそが、同番組が地上波でオンエア(&Netflixなどで配信)されていることの意義なのだと思う。
冒頭で述べた話に繋がるが、それぞれのジャニーズグループの表現の形は、決して完成した楽曲や本番のライブだけではない。そこに至るまでの過程、つまり、そのグループの「物語」も表現の一つとして成立し得るのだ。昨年11月にはAmazon Primeで、『なにわ男子 デビューまで1100日のキセキ natural』が配信されたが、現在に至るまでの「物語」を追体験するという楽しみ方は、特に昨今、広く浸透してきているように感じる(『Nizi Project』や『THE FIRST』といったオーディション企画の盛り上がりも、その象徴だ)。また、テレビや配信プラットフォームを通して、それらの「物語」に触れることで、そこからグループのファンになっていく人も多いだろう。何年か経った後にグループに興味を持つ人も多いはずで、そうした未来のファンのためにも、ドキュメンタリー作品を配信プラットフォームで簡単に視聴できる環境は、とても大きな意味のあるものなのだと思う。
そして、リアルな「物語」が作品として成立し得るのは、もちろんアイドルグループだけではない。昨年10月には、ONE OK ROCKのドキュメンタリー作品『Flip a Coin -ONE OK ROCK Documentary-』がNetflixで配信された。今作でフォーカスされているのは、コロナ禍におけるロックバンドの「物語」である。全世界的なパンデミックという未曾有の逆境に対して、ロックバンドはいかにして立ち向かったのか。今作が捉えたのは、「世界同時生配信の無観客スタジアムライブ」という壮大な構想の実現に向けた日々であり、全編にわたってメンバー4人やスタッフたちの熱い挑戦心が満ち溢れている。まさに今作は、ロックバンドのリアルな生き様を克明に収めることで、一つの新しいロックドキュメンタリー作品が生まれるという好例だと思う。そして、多くのライブやイベントが中止・延期に追い込まれているコロナ禍において、ロックの可能性を果敢に追求し続けるONE OK ROCKの姿に心を動かされた人は、きっと多いはずだ。その意味で今作が、いまだ先行きの見えない2021年に配信されたことの意義はとても深い。