サカナクション、ライブで更新していく音楽の伝え方 “変わらないために変わる”スタンスで熱狂生んだ武道館公演
ヒット曲、代表曲を連ねたライブ後半のポイントは、3月30日リリースのニューアルバム『アダプト』に収録される新曲だった。セットリストとしては、「ルーキー」→「プラトー」(新曲)→「アルクアラウンド」→「アイデンティティ」→「ショック!」(新曲)という流れだったのだが、サカナクションのアンセムと呼ぶべき楽曲のなかにあっても、「プラトー」「ショック!」の強度はまったく見劣りしなかった。特に印象的だったのは映画『劇場版 ルパンの娘』主題歌としても話題を集めた「ショック!」だ。ラテンのテイストを感じさせるリズム、ホーンの音色を交えたアレンジ、いなたい歌謡感を取り入れたメロディ。懐かしさと新しさを兼ね備えた楽曲は、本公演時にはリリース前にも関わらず、今回のツアーでも大きなハイライトとなっていた(この国に受け継がれるポップスの伝統をアップデートさせ、批評性と肉体性を共存させたステージに結びつけるという意味で、デヴィッド・バーンのライブ映画『アメリカン・ユートピア』にも通じるところがあったと思う)。
「ショック!」の演奏中、スクリーンには嶋田久作、古舘佑太郎が出演する架空の情報番組『Shock!』が映し出され、ステージにはその番組から派遣された女性レポーターがメンバーに直撃取材を行うという演出も。このベタさ加減もまた、サカナクションの楽しさだ。
さらに「夜の踊り子」「新宝島」ではMVの映像を映し、カラフルなレーザーが飛び交うなか、オーディエンスは揃いの振り付けで盛り上がった。目新しい演出や映像などはまったくなく、“お約束”ともいえる構成だったわけだが、「サカナクションといえばこれだろ!」とばかりに踊りまくる観客と、ステージ上を移動しながら煽りまくる山口のパフォーマンスは見ていて単純に楽しかった。歌舞伎からアイドルまであらゆる芸能に言えることだが、“型”を持っているアーティストは魅力的だし、会場に足を運んだ観客もそれを見たいと望んでいる。それに正面から応えるサカナクションはポップスの本質をしっかりと掴んでいるのだと思う。
アンコールでは、山口が今回のツアーに対する思いを丁寧に語った。「コロナ禍の新しい世界で、どんな音楽の伝え方をしていくか」をメンバー5人、チーム・サカナクション、田中裕介監督と話し合ったこと。オンラインライブも含めたライブのアップデートにチャレンジしたこと。コロナ禍に適応することによって、音楽の表現を増やしていこうとしていること。
「ひとつの音楽を好きになって、ミュージシャンのライブに来て、一緒に踊る。この体験はこれから先も絶対なくならないと思うし、僕らはこれを守るために、新しい音楽の表現、感じ方を見つけていきたいと思います。デザインの力だったり、いろんな文化と結びついて、何とか生き残っていきたい」
穏やかな口調のなかに強い決意が感じられた言葉に、客席からは大きな拍手が送られた。
コロナ禍において、自らの強みを再認識しつつ、音楽性とライブのスタイルをアップデートさせたサカナクション。彼らがここから提示するであろう音楽の可能性を、多くの音楽ファンと一緒に体験したいと思う。
■ライブ配信情報
1月29日(土)および1月30日(日)公演を配信
詳細はこちら
<開場 / 開演>
17:00 開場 / 18:00 開演
<アーカイブ視聴期間>
1月31日(月)18:00 ~ 2月6日(日)23:59
<チケット販売期間>
国内視聴券 1月15日(土)21:00 ~ 2月6日(日)21:00
海外視聴券 1月21日(金)21:00 ~ 2月6日(日)21:00
<配信プラットフォーム>
◎NF member ¥3,000 (税込) システム利用料:¥220-
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◎一般発売 ¥3,500 (税込) システム利用料:¥220
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◎海外視聴 ¥3,500(税込) 諸税 / サービス料
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