サカナクションからUNISON SQUARE GARDEN、銀杏BOYZまで……バンドのこだわり感じたオンラインライブの名演

サカナクションら、オンラインライブの名演

 コロナ禍を受けてライブ興行が制限を余儀なくされる中、6月ごろより本格的に開催され始めたのが有料配信によるオンラインライブ。中止/延期となった公演の代替として配信を行うのが主だが、そこにひと工夫を加え趣向を凝らしたライブを届けるケースも多かった。本稿ではこの2カ月の中で特に印象的だったバンドによる公演をいくつか紹介したい。

 ライブの見せ方/聴かせ方に極限までこだわったのは8月15、16日に開催されたサカナクションの『SAKANAQUARIUM 光 ONLINE』だろう。オンラインとは思えない迫力/没入感を、オンラインならではの演出で発信した画期的な公演である。スモーク、オイルアート、レーザー、間接照明、巨大スクリーンなど、従来の演出に新たな驚きをいくつも付加し、楽曲の内包するイメージを最大限に拡張、理知と興奮に溢れる2時間を創出。“ライブミュージックビデオ”を称するに相応しい映像美と、日本初導入のサウンドシステムで構築した奥行きある音響が織り成したこのライブは“生演奏でありながら理想の視聴環境はオンライン”という現状における金字塔を打ち立ててしまった。特殊な演出のために、倉庫にイチからステージをセッティングするなど、前代未聞な挑戦を経たからこそ成せた革新的な表現である。

サカナクション / ONLINE LIVE「SAKANAQUARIUM 光」Official Trailer

 また配信という特性を活かし、収録映像に意匠を凝らした演出で届ける作品も多かった。日比谷野外大音楽堂で収録された無観客ライブの映像を中心に編集したceroの『Outdoors』では、テントをくぐる動作を介して野音から別場所にある川辺へと移動する演出が施された。野音では最大12人編成のリッチなグルーヴを展開し、川辺では7人でのアコースティック形式で涼やかなアレンジを紡ぐ。空間を超越しながら、異なる景色の中で楽曲の持つ多彩な色味を際立たせていた。また、夕暮れ時から夜へ向かう空の移ろいも美しく記録し、配信では損なわれがちなその場所に流れている時間を見事にパッケージしていた。

cero presents "Outdoors" 【Trailer #1】

 never young beachは事前収録した音源に演奏風景を合わせた形のスタジオライブ映像『The Pentagon Session』を配信。プラレールの線路をスタジオに敷き詰め、走る模型電車に搭載したカメラから映すアングルや、魚眼レンズやメンバー自身による撮影などユニークな映像を楽しめた。彼らの軽妙洒脱な音楽性に則したユーモラスな演出の数々は、バンドの特性や楽曲のムードを絶妙に掴んで届けていた。

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