センチミリメンタル、一人ひとりの“あなた”に奏でる真摯な音楽 『やさしい刃物』を再現した生配信ライブレポート
「青春の演舞」演奏前、「配信ライブは拍手が聴こえないから寂しいですね」「でもカメラの向こう、そして画面の前にみんながきっといるんだと言い聞かせながら。次の曲、みんなの手拍子また聞かせてください」と話した温詞はきっと今年のツアーで目にした客席の光景を思い出していただろうし、画面の前で手拍子した人もいたことだろう。4ビートでガシガシと刻むパワー系の曲を鳴らす4人は楽しそうで、その横顔、少し上がった口角をカメラが捉える。
ラストのMCでは、アルバム『やさしい刃物』に込めた想いを改めて言葉にした。
「僕は自分の音楽を力のあるものとはなかなか思えなくて。それでも音楽が支えになる瞬間はあって。でもそれは支えでしかないから、立ち上がる瞬間は自分の足で立ち上がらなくちゃいけないし、何かに立ち向かう時は自分で武器を持って、自分で戦わなくちゃいけない。だから音楽そのものは人を救えないんですけど、その音楽に支えられたり、それを武器として手に持ったあなた自身が頑張れば、戦えば、それで救われる瞬間はあると思うんです。何か困難があった時やつらい時、苦しい時、それでもやらなきゃいけない時は、センチミリメンタルの音楽が、そしてアルバム『やさしい刃物』の中に入っている楽曲たちが、あなたにとっての一つの武器に、あなたを守るやさしい刃物になると嬉しいなと思って、このタイトルをつけて曲たちを選びました。僕たちは上手くできた生き物でもないし、失敗するし、後悔するし、傷つけ合うし。それでも、それでもっていうその瞬間、諦めないその一瞬の力強さが命を繋いでいくと思います」
そうして演奏されたのが最終曲「リリィ」だ。祈りのような咆哮のような、サビのロングトーンはビブラートが美しく、歌声に込められた想いを引き継ぐようにバンドも音を鳴らす。最後に温詞が繰り返した“大丈夫”はこれからを生きる私たちのお守りになってくれる言葉だ。温かな余韻を残してライブは幕を閉じたのだった。