はっぴいえんど再結成の貴重なステージも 松本隆、作詞活動50周年記念コンサート『風街オデッセイ2021』2日間を振り返る

『風街オデッセイ2021』2日間を振り返る

はっぴいえんど、約50年ぶりの武道館のステージ

松本隆
 そして、1日目、2日目のトリをつとめたのは、伝説のバンド・はっぴいえんど。50周年を記念して行われたこのイベントにおける、最大の見どころだったと言っていい。

 細野晴臣、大瀧詠一、松本隆、鈴木茂によるはっぴいえんどは1970年に1stアルバム『はっぴいえんど』を発表。The Band、Buffalo Springfieldなどの同時代の海外のバンドに影響を受けたサウンドとアレンジ、そして、松本隆による日本語の歌詞によって、日本のロックバンドのひな型となった。『風街』の由来とも言える2ndアルバム『風街ろまん』(1971年)、LA録音による『HAPPY END』(1973年)を残し、バンドは解散。最初の再結成は、1985年に国立競技場で行われたイベント『国際青年年記念 ALL TOGETHER NOW』(このとき松本は、シモンズの電子ドラムを叩いていた)。そして、2015年の『風街レジェンド』でも松本、鈴木、細野が顔を揃え、はっぴいえんどのナンバーを演奏している。

 今回の再結成は、7年ぶり3度目。解散から数えるとじつに36年ぶりだ。彼らが武道館のステージに立つのは、1972年の『はっぴいえんど LIVE at 武道館』以来、約50年ぶり(!)となる。

 初日のアンコール。鈴木茂、細野晴臣、松本隆がステージに姿を見せ、鈴木が「こんばんは、はっぴいえんどです」と言った瞬間、会場からは大きな拍手とどよめきが鳴り響いた。編成は鈴木、細野、松本のほか、鍵盤に鈴木慶一、井上鑑、アコースティックギターの吉川忠英。鈴木のカウントから始まった最初の曲は、「花いちもんめ」(作詞:松本隆/作曲:鈴木茂)だった。70年代の洋楽ロックと日本語の響きを活かした歌が共鳴するこの曲は、はっぴいえんどのコンセプトを端的に表した名曲。鈴木のいぶし銀のボーカルも素晴らしいが、注目すべきはやはり細野、松本によるリズムセクションだ。ややレイドバックしたビート、独特の間を感じさせるフィル。心地よい揺れと叙情的な雰囲気を併せ持ったグルーヴが、50年の時を経て武道館を包み込んでいた。

 「メンバー紹介させていただこうかな。ドラム、松本隆。ギターに鈴木茂。ベースは誰だ? あ、僕だ」という細野のMCに続き、鈴木が「素晴らしいボーカリストを呼びたいと思います」と曽我部恵一を呼び込み、「12月の雨の日」(作詞:松本隆/作曲:大瀧詠一)。〈雨あがりの街に 風がふいに立る/流れる人波を ぼくはみている〉という一節を、はっぴいえんどの遺伝子を受け継ぐ曽我部が歌うシーンもきわめて貴重だ。

細野晴臣

 最後は細野がボーカルを取る「風をあつめて」(作詞:松本隆/作曲:細野晴臣)。細野がギター、鈴木がベースを弾き、〈街のはずれの背伸びした路次を〉と歌い出した瞬間、70年代の東京の風景が脳裏をよぎる。2010年代以降、ライブ活動を精力的に続けてきた細野の、しなやかでノスタルジックな歌声にも強く心を惹かれた。

 終演後、松本はマイクを握り、細野、鈴木をはじめバンドメンバーをねぎらった後、ゆっくりと話しはじめた。

「16歳、高校2年のときにThe Beatlesが武道館に来て、あのへんで見てました(と正面を指す)。1階か2階かは覚えてないんですけどね。“バンドってかっこいいから、やってみたいな”と思って、しばらくして、細野さんと出会って、はっぴいえんどを作って。それから50年。あそこ(客席)からここ(ステージ)に来るまで50年です」

鈴木茂

 さらに鈴木が「Twitterにも書いたんだけど、細野さんと松本さんのグルーヴがとってもよくて」と話を振ると、松本は「半年間練習したからね、神戸で」と笑顔で答えた。「ぜひ続けてほしい」(鈴木)「バンド組む?」(細野)というやり取りに、貴重なステージを目の当たりにした観客から大きな拍手が送られた。

 2日目も、前日と同じ3曲が演奏された(「12月の雨の日」は鈴木慶一がボーカルを担当)。松本は前の日以上にパワフルなドラムを披露。最後にバスドラを“ドン!”と響かせ、イベントはエンディングを迎えた。

はっぴいえんど
はっぴいえんど

 2021年12月21日には、2015年に東京国際フォーラム ホールAで行われた『風街レジェンド2015』がBlu-ray映像作品としてリリースされることも決定。『風街オデッセイ』の2日目のMCで鈴木茂は「次は5年後だね」と話していたが、時間の経過とともに深みと彩りを増す“風街”=松本隆の歌詞をもっともっと堪能したいという音楽ファンの思いは、今回のイベントと『風街レジェンド2015』の映像作品化によって、さらに大きくなりそうだ。

『風街レジェンド2015』
『風街レジェンド2015』

■リリース情報
『松本 隆 作詞活動45周年記念オフィシャル・プロジェクト 風街レジェンド2015 live at 東京国際フォーラム ホールA』
2021年12月22日(水)リリース
ブルーレイ2枚組全38曲収録/三方背BOX/ブックレット(全100ページ)
¥11,000(税込)品番:COXA-1286-7

収録日:2015年8月21日(金)&22日(土)
会場:東京国際フォーラム ホールA 日本コロムビアオフィシャル

<収録内容>
【DISC1】
01.「夏なんです」/松本 隆、細野晴臣、鈴木 茂(はっぴいえんど)
02.「花いちもんめ」/松本 隆、細野晴臣、鈴木 茂(はっぴいえんど)
03.「はいからはくち」/松本 隆、細野晴臣、鈴木 茂、佐野元春(はっぴいえんど)
04.「木綿のハンカチーフ」/太田裕美
05.「てぃーんずぶるーす」/原田真二
06.「タイム・トラベル」/原田真二
07.「シンプル・ラブ」/大橋純子
08.「ペイパームーン」/大橋純子
09.「三枚の写真」/石川ひとみ(三木聖子)
10.「東京ららばい」/中川翔子(中原理恵)
11.「セクシャルバイオレットNo.1」/美勇士(桑名正博)
12.「ハイスクールララバイ」/イモ欽トリオ
13.「赤道小町ドキッ」/山下久美子
14.「誘惑光線・クラッ!」/早見 優
15.「菩提樹」/鈴木 准、河野紘子(フランツ・シューベルト作曲)
16.「辻音楽師」/鈴木 准、河野紘子(フランツ・シューベルト作曲)

【DISC2】
17.「君は天然色」/伊藤銀次、杉 真理(大滝詠一)
18.「A面で恋をして」/伊藤銀次、杉 真理、佐野元春(ナイアガラ・トライアングル vol.2)
19.「Tシャツに口紅」/鈴木雅之(ラッツ&スター)
20.「冬のリヴィエラ」/鈴木雅之(森 進一)
21.「バチェラー・ガール」/稲垣潤一
22.「恋するカレン」/稲垣潤一(大滝詠一)
23.「スローなブギにしてくれ(I want you)」/南 佳孝
24.「ソバカスのある少女」/鈴木 茂、南 佳孝
25.「砂の女」/鈴木 茂
26.「しらけちまうぜ」/小坂 忠
27.「流星都市」/小坂 忠
28.「想い出の散歩道」/矢野顕子(アグネス・チャン)
29.「ポケットいっぱいの秘密」/矢野顕子(アグネス・チャン)
30.「Woman “Wの悲劇”より」/吉田美奈子(薬師丸ひろ子)
31.「ガラスの林檎」/吉田美奈子(松田聖子)
32.「バンド紹介(スピーチ・バルーン、カナリア諸島にて)」/風街ばんど(大滝詠一)
33.「綺麗ア・ラ・モード」/中川翔子
34.「卒業」/斉藤由貴
35.「SEPTEMBER」/EPO(竹内まりや)
36.「さらばシベリア鉄道」/太田裕美
37.「やさしさ紙芝居」/水谷 豊
EN.「風をあつめて」/松本 隆、細野晴臣、鈴木 茂+ALL ARTISTS(はっぴいえんど)
※( )=オリジナルアーティスト

HP:https://columbia.jp/kazemachillegend/

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