Vaundy、Kroi、Lucky Kilimanjaro……独自の進化と発展を遂げる国産ダンスミュージックの今

 順番が逆になった感もあるが、そうしたDTM新世代の中でも実は王道のUKロックーー明確に言えばOasisをヒーローに挙げつつ、耳目を集めるきっかけになった楽曲がトラップテイストの「napori」や、ギターサウンドをアレンジに効果的に取り入れた「不可幸力」だったVaundyは国産ダンスミュージックの象徴的なアーティスト。2000年生まれという、ビートメイクもトラックメイクもあらゆる時代を包摂できる資質を持った2020年代ダンスミュージックのリアルな発信者だ。新曲群はジャンルからどんどん開放され、ファットなピアノポップの「Tokimeki」、マーチングからアフリカン、4つ打ちまでコロコロとリズムが変わる新曲「泣き地蔵」に至ってはフィジカルだけでなく五感を揺らすダンスミュージックと呼べるほど、あらゆる感覚を踊らせる。

不可幸力 / Vaundy :MUSIC VIDEO
泣き地蔵 / Vaundy:MUSIC VIDEO

 Vaundyの重層的なコンテクストは少し先の道でソウルやファンクを日本のポップミュージックとして昇華し、切り開いていた星野源やOfficial髭男dismとも影響しあっているだろう。ヒゲダンと同郷のピアノトリオバンドOmoinotakeはTVアニメ『ブルーピリオド』のオープニングテーマである「EVERBLUE」で、山下達郎にも通じる洗練されたコード感とアップデートされたリズムを聴かせている。そもそもの音楽性がジャズファンクにあるKroiはライブでダイレクトにオーディエンスのフィジカルに訴えるところを起点としているだけあって、そこにさりげなくサイケやフュージョンのフレイバーが加味されてもバンドのキャラクターを明快にするメリットしかない印象だ。ここまで挙げてきたバンド/アーティスト以上に繰り返すことで生まれるグルーヴの妙味と中毒性。フュージョン濃度高めの新曲「Juden」も早くライブで浴びたいリズムとサウンドが横溢している。

Omoinotake / EVERBLUE
Kroi - Juden [Official Video]

 いわゆるシティポップをエレクトロミュージックと混交し、リリックの面で文系リスナーをもダンスに誘ったLucky Kilimanjaroは今年リリースのアルバム『DAILY BOP』で泣けるダンスミュージックを経て、新曲「楽園」でメロウでありつつ、タフなリリックを聴かせるに至っている。他にもUSのヒップホップと並行していたちゃんみながJ-POPの音像を意識したというニューアルバム『ハレンチ』では歌謡に寄った印象のダンスミュージックを聴かせていることも面白い。

Lucky Kilimanjaro「楽園」Official Music Video
ちゃんみな - ハレンチ (Official Music Video) -

 このように異なる背景から生まれる国産ダンスミュージックがポップシーンで多産されている。いまは各々のイヤホンの中で鳴っているそれがどこまで浸透したかを知るのはリアルライブや、今後のフェスの現場になるはずだ。

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