abingdon boys school×WOWOWオリジナルライブ 前代未聞、飛行場のロケーションで輝いたロックスピリッツ
これまでに、自然豊かな場所にある大橋トリオのプライベートスタジオで撮影した『大橋トリオ LIVE AT MUSIC HOUSE』や、ビッケブランカが横浜・八景島シーパラダイス内水族館“アクアミュージアム”で歌った『ビッケブランカ SUPER AQUARIUM LIVE』など、通常のライブ会場とはひと味違ったロケーションとオリジナルのセットリストでお届けするWOWOWのオリジナルライブ。10月20日からは西川貴教率いる4人組ロックバンド、abingdon boys schoolのスペシャルライブ『abingdon boys school JAPAN TOUR 2020 presented by WOWOW』が配信されている。
無骨な格納庫でワイルドに演奏
『abingdon boys school JAPAN TOUR 2020 presented by WOWOW』は、2度の延期を経て中止を余儀なくされた、10年ぶりのワンマンツアーの代わりに2020年末に収録されたもの。ライブハウスなどで撮る案もあったそうだが、「よりファンに喜んでもらえる特別な映像を届けたい」との思いから、西川が中心となってWOWOWと共に企画/演出された。
ライブが行われたのは、茨城県竜ヶ崎飛行場。民家もまばらで周りにはほぼ何もないような場所。「DESIRE」のイントロが鳴り響く中、現れた西川が飛行場の建物内をずんずんと進んでいき、扉を開けるとそこは格納庫。奥にはプロペラ機、そして円形に組まれたバンドセットが目に飛び込んできた。
ライブの狼煙は、彼らの代表曲である「STRENGTH.」。悲しみを表現した美しいピアノと、胸の奥から情熱が溢れだすようなギター、大地の鼓動のようなリズム。切なくも爽快なサビメロに続き、西川が雄叫びのようボーカルを轟かせた。続いてキーボード&プログラミングの岸利至のスクラッチによるミクスチャー要素が魅力の「HOWLING」。イントロでは西川が笑顔でメンバーと目を合わせ、合図を送るような仕草も見せる。格段に重たい骨太のサウンドと、それに負けない太く力強い西川のボーカルが、がっぷり四つに組んで轟音をかき鳴らした。
バンドを取り囲むように組まれた音響機材、カメラのレールやクレーンなど撮影機材もむき出しで、それ自体がセットの一部と化している。その無骨さが、a.b.s.のラウドなサウンドと実にマッチしている。「なかなかないシチュエーション。すげえでかいリハーサルスタジオみたいな(笑)」と笑う西川。柴崎浩(Gt)も「どこを向いてしゃべっていいのか」と、序盤はまだ探り探りといった様子。と言うのも、a.b.s.がライブを行うのは『イナズマロック フェス 2018』以来で、コロナ禍もあって限られたリハーサルのみでほぼ一発のようなライブになったからだ。「最初はちょっと不安もあったけど」(SUNAO/Gt)、「でも、どうなるか分からない楽しさもあった」(岸)。前代未聞の撮影に怯むどころか、メンバーの目はかえって少年のように輝いていた。
「映像を通してみんなと繋がれるチャンスをいただけたことは、感謝しかない」と、ツアーが中止になったことと、このライブ収録に至った経緯を説明した西川。続けて「東日本大震災の時も思ったけど、我々エンタメの人間ができることには限りがある。きっとまた必要としていただけるチャンスがあると信じている。その時に今回の悔しさを演奏でぶつけることができたら」と、悔しさを滲ませながらもその目の奥には不屈の炎が燃える。その熱気は、エモーショナルなバラード「Desert Rose」、ラウドサウンドの「Siren」へと引き継がれる。長年の研鑽から生まれる匠の技が次々と飛び出し、圧巻のサウンドに身を委ねて頭を揺らす西川。気づけば、ただライブに没頭するメンバーの姿があった。