KUMI(LOVE PSYCHEDELICO)ら4人が集結したUniolla 深沼元昭が語る、“大人のガレージバンド”に込めた初期衝動
新たなバンドで昇華した“もう1つのルーツからの影響”
LOVE PSYCHEDELICOのKUMI(Vo)、深沼元昭(Gt/PLAGUES、Mellowhead)、林幸治(Ba/TRICERATOPS)、岩中英明(Dr)の4人による新たなバンド・Uniollaが結成され、同タイトルの1stアルバムを11月24日にリリースする。
発端は、深沼が過去に多くのボーカリストとの共演を実現してきたソロプロジェクト Mellowheadに、KUMIをゲストボーカルとしてフィーチャーしたいと考えたこと。しかし楽曲を作り込んでいくうちに、「これはMellowheadとしてではなくバンドとしてリリースした方が良いのではないか?」という想いに至り、そこから深沼は空いた時間を使って少しずつ楽曲を書き溜めていくことになる。そんな中、彼に深いインスピレーションを与えたのは、大学生~二十歳過ぎの頃に聴いていた音楽だったという(以下、発言はすべて深沼によるもの)。
「引っ越しの機会に80年代終わりから90年代にかけての音楽を発掘してしまい、つい聴き込んでしまったんですよね(笑)。<Rough Trade>、<Creation>、<él>、<Cherry Red>などのレーベルのアーティスト……。僕はPLAGUESからのイメージで、60年代や70年代のロックがルーツミュージックだという印象が強いと思うし実際に好きではあるのですが、それと同じくらいこの辺りの音楽もよく聴いていました。たとえ演奏が技巧的でなくても、それを凌駕するほどの曲の良さと音楽への熱い思いが溢れていて、『ああ、こういう音楽も好きだったよなあ』と改めて思ったんですよね。今回のアルバムには、そういう体験からの影響が少なからずあると思います」
曲作りの際、深沼が気をつけたのは「難しいことはあまりやらないようにする」ということ。凝ったコード進行はなるべく使わず、もう一捻りできそうなところを“あえて”捻らない。そうすることで、楽曲に宿る初期衝動をなるべく逃さないようにした。
「とにかく曲作りとヘッドアレンジは、スピード感を重視してやっていくことにしました。時間をかけ過ぎると、どんどんプロっぽくまとまっていってしまう。それを作曲やデモ録りの速さで回避していましたね」
「LOVE PSYCHEDELICOから離れて鳴らせる場所があってもいい」
また、Uniollaを結成するにあたってこだわったのは、あくまでも「バンド」として活動することだった。メンバーには深沼と多く活動の場を共にする相棒であり、理解者でもあるTRICERATOPSの林と、深沼がプロデュースを手掛けたこともあるJake stone garage(活動休止中)の岩中が参加。サポートミュージシャンとしては佐野元春&ザ・コヨーテバンドで活動を共にする渡辺シュンスケ(Schroeder-Headz)、またLOVE PSYCHEDELICOのツアーへの参加も記憶に新しいLenny Castroがレコーディングに加わった。
作曲、元となる大まかな歌詞、全体のヘッドアレンジなどバンドの枠組みを深沼が考え、それを基にメンバー全員でブラッシュアップしていく。昨今主流ともいえる打ち込みやシーケンスの類いは一切使わず、タンバリンに至るまで全ての楽器を人力で演奏した。鍵盤楽器もピアノとオルガン、それからメロトロンのみを使用し、ライブで再現できるアンサンブルにとにかくこだわったという。オーバーダビングが当たり前の現代に、「どうしてもこれを弾きたい」といった、「先走る思い」を大事にシンプルなバンドアンサンブルを心がけレコーディングは進行していった。
「例えば『絶対』や『Sputnik love』で聴ける単音のギターフレーズなど、KUMIの演奏によるギターも多く、『果てには』のピアノなども彼女が演奏しました。演奏者の顔が見えるという要素が、このバンドではすごく大事なんです。特にKUMIは、“LOVE PSYCHEDELICOのKUMI”以外の顔を見せたことはほとんどなかったわけで、彼女のアイデンティティみたいなものを、なるべくUniollaの作品の中に残していきたいという気持ちもあります。アレンジや歌詞の面でも彼女の意見がたくさん活かされました。LOVE PSYCHEDELICOという、歴史も実績もあり、大勢の人が関わるプロジェクトを守っていく大切さ、楽しさもありつつ、そこから少し離れたところで音を鳴らせる場所があってもいいかな、ということは、彼女も以前から言っていたことではありました」