【新連載】EXILEの20周年を振り返る 第1回: J Soul Brothers誕生からメジャーデビューまで、前人未到の旅の始まり

EXILEの20周年を振り返る 第1回

 J Soul Brothersがデビューした翌年、後にEXILEの顔としてグループを牽引することになるボーカル ATSUSHIは、『ASAYAN』(テレビ東京系)主催の「男子ヴォーカリストオーディション」に出演していた。圧倒的な歌唱力で最終審査まで勝ち残ったATSUSHIには、放送当時からファンもついており、HIROも「俺の目から見れば、五人の中でも、アツシの実力が頭ひとつ分は確実に他の候補をリードしていた」(※4)と語る。それゆえに、ATSUSHIが最初に候補から外されたことに驚いた人も多かっただろう。だが当時、SASAから脱退の意志を告げられ、至急新ボーカルを入れなければならなかったJ Soul Brothersにとっては、運命的な導きによってATSUSHIと出会ったということになる。一方、山口県では、もう1人のボーカリスト SHUNが地元のテレビ局が主催したアマチュアのオーディション番組に出場し優勝。現場に居合わせたavexスタッフによって、HIROの耳にもその勇姿が届き、当初ボーカルは1人と考えていたHIROの前に、素晴らしいボーカルが2人も現れたのだ。

 ボーカルを決定するまでにもいろいろな問題があったそうだが、ある時、「月9ドラマ『できちゃった結婚』(フジテレビ系)の挿入歌を担当するアーティストを探している」という話が舞い込む。どちらをボーカルにするか、まだ決めかねている段階だ。しかし、こんなチャンスはないと、ATSUSHIとSHUNに「Your eyes only」(デビュー曲「Your eyes only ~曖昧なぼくの輪郭~」の英語バージョン)をレコーディングさせた(※5)。するとドラマの放送後、アーティスト名も曲名も伏せられていた2人の歌に問い合わせが殺到。おそらく、それもグループをヒットさせるための1つの作戦だったのだろう。メンバー達は、新ボーカルにATSUSHIとSHUNを迎えた6人編成で再スタートすることを決意し、2001年8月24日、渋谷 ATOM TOKYOで開催した『SASA FINAL LIVE & ATSUSHI, SHUN FIRST LIVE』にて、前任のSASAからATSUSHI、SHUNへとバトンが渡された。

 新体制になったことを機に、J Soul Brothersは“放浪者”を意味するEXILEに改名。2001年9月27日、EXILEはシングル『Your eyes only ~曖昧なぼくの輪郭~』で鮮烈なデビューを飾った。2001年12月12日には、2ndシングル『Style』をリリース。2002年も3rdシングル『Fly Away』(2月20日)を皮切りに、1stアルバム『our style』(3月6日)や4thシングル『song for you』(4月17日)などを立て続けにリリースし、その勢いを見せつけた。そして、2002年9月、「EXILEはみんなの夢をかなえる場所」(※6)をグループの信条とする彼らは、メンバー達で資金を出し合い、現在のLDHの前身となるエグザイルエンタテイメント有限会社を設立。その裏には、HIROの高校の先輩であり、後にavexの代表取締役となる松浦勝人の力添えもあった。当時を振り返り、MAKIDAIは「自分たちのやりたいことをカタチにするために、自分たちで会社を作る。みんなでそう決めたからには、もうやるしかないっていう気持ちだけだった」(※7)、ÜSAは「若かったといえば、もし失敗して借金作っても、みんなで働いて返せばいいって思ってたよね。エンタテインメントの世界で生きられなくても、この仲間がいれば、どんな仕事しても上手くいくって」(※8)と語る。

 いちダンサーがアーティストとして音楽業界で勝負し、アーティスト自身が会社を立ち上げ、一人ひとりの夢を現実に変えていく。そんな前代未聞の旅が始まった。

※1、3、4:『Bボーイサラリーマン』参照
※2:https://www.redbull.com/jp-ja/tokyo-new-school-bobby
※5、6、7、8:https://goetheweb.jp/person/article/20160204-exile

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