乃木坂46 寺田蘭世、グループの光と闇を経験した8年半の歩み アンダーセンターで飾る有終の美

「こんな例え方して伝わるか分からないですけど、1+1が2なんて誰が決めたんだって話なんですよ」

 ドキュメンタリーの予告編のラストを飾るのは、寺田が初めて座長を担当した2016年12月に日本武道館で開催されたアンダーライブでのMCの一言だ。この言葉の裏には、当時このアンダーメンバーが「最弱」と呼ばれていた背景がある。さらには、3期生が加入してきたばかりの時期に寺田が宣言した「センターになりたい」という思い。その熱き志は2018年のインタビュー(※2)でも変わらず語られている。あくまでアンダーは「夢への通過点」として、坂を登り続けるその姿勢こそが寺田蘭世というメンバーの大きな魅力である。

乃木坂46『マシンガンレイン』

 寺田は、28thシングル『君に叱られた』収録のアンダー楽曲「マシンガンレイン」で再びセンターに立つ。これまで、アンダーでは卒業するメンバーをセンターに据えるという選択はなかなかされてこなかった。前作「錆びたコンパス」で伊藤純奈、渡辺みり愛という2名の卒業メンバーがいながらも、山崎怜奈がセンターを飾ったのは分かりやすい例だろう。このタイミングでセンターに選ばれたことを、寺田は「私の宿命だった」と捉え、ブログにそう綴っている。最後は選抜でーーという様々な人々の思いも見え隠れするが、彼女の功績を考えればアンダーセンターは有終の美と言える選択だ。

 そして、「マシンガンレイン」は初めて4期生がアンダーとして参加する楽曲でもある。すでに3日間にわたって開催されるアンダーライブも発表されており、寺田にとってのラストステージとなるのだろう。彼女の表現者としてのパフォーマンス、さらにはアンダーとしての思いを後輩が受け継ぐ時。寺田の背中には、しっかりと「乃木坂46」としての8年半の歴史が刻まれている。

(※1)https://blog.nogizaka46.com/ranze.terada/2021/09/063142.php?cp=400
(※2)https://realsound.jp/2018/01/post-146641.html

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