Kroi、喜びと快楽が連鎖しながら最高の沸点へ ツアー『凹凸』追加公演で過ごしたかけがえのない時間

Kroi『凹凸』追加公演レポ

 終盤の「帰路」~「Pirarucu」~「侵攻」の流れでは深く陶酔的なアンビエンスで会場を包む。踊らせるだけではない、バンドの多彩な音楽的表情も、見事にライブパフォーマンスに落とし込んでいく。『LENS』は、ぼやけた眼差しで見る景色や妄想、精神世界のあれこれを幻想的ともいえるサウンドで魅せていく側面も強くあるアルバムだったが、そうした「夢幻」の世界もまた「リアル」として表現できるところに、Kroiの詩情の奥深さがあるように感じる。人は誰もが、手に取って共有できるものや、目に見えるものだけを捉えながら生きているわけではない。「幻」や「虚」の世界とも繋がりながら日々を生きていくのが、人である。そうした人生のレイヤーの豊かさを、肉体の動きと共に表現しえている。Kroiはそういうバンドなのである。

 本編ラスト「Shincha」演奏中のMCで内田は照れくさそうに、しかし「どうしても伝えたいことだから」といった面持ちでこう語った。

「やっぱり、最近、世の中は大変ですよ。ただでさえ悔しいことや辛いことがたくさんあるのに。だから、どうしようもないことは、全部俺らにぶつけてください。不安を打ち崩すためにあると思うので。いつかいいことが起きると思う。悪いことが起きたら、俺らにすがってください。人生の調子がよかったらこっちにこなくていいんで。助けてほしいときに、俺らにすがってください」

 最後の最後、アンコールでの「Fire Brain」に至るまで、Kroiはこの内田の言葉を有言実行するようなライブを繰り広げた。混沌とした日常の中に射し込まれた、音楽という鮮やかな色彩と、肉体の躍動。「ここにいる」ということが、かけがえなく感じられる時間。『LENS』は「時間」を閉じ込めたような作品でもあったが、この日のライブにも、本当に幸福な時間が流れていた。踊り、夢幻、感動……音楽にしか、バンドにしか生み出しえない時間の流れがたしかにあるのだと実感させられる、そんなライブだった。

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