Kroiが体現する新世代の“ブラックネス” 目を離せないライブ感生まれた『CIRCLE』レポ
2月3日に内田怜央(Vo)、長谷部悠生(Gt)、関将典(Ba)、益田英知(Dr)、千葉大樹(Key)からなる5人組バンド・Kroiが、『Kroi Streaming Live “CIRCLE"』を開催した。
Kroiは、2018年2月に結成されたシーン期待のニューカマーバンドで、R&B、ファンク、ソウル、ロック、ヒップホップなど、あらゆる音楽ジャンルからの影響を昇華したミクスチャーな音楽性を提示。バンド名は、あらゆる音楽ジャンルの色を取り入れて新しい音楽性を創造したいという考えで、全ての色を混ぜると黒になることからくる「黒い」と、メンバーが全員ブラックミュージックを好み、そこから受けた影響や衝撃を日本人である自分たちなりに昇華するという意味を込め、Blackを日本語にした「黒い」から命名されている。
デビュー翌年には日本を代表する音楽フェス『SUMMER SONIC 2019』に出演したことを皮切りに頭角を表し、その後もストリーミングサービスでの複数プレイリストでのピックアップ、テレビドラマへの楽曲提供など存在感を示しているが、以前のインタビューでも本人たちは、スティーヴィー・ワンダー、Earth, Wind & Fire、フィル・アップチャーチ、コーネル・デュプリー、ナイル・ロジャースらファンク、ブルース、ディスコ、ソウルなどの金字塔たちからの影響や果てはRed Hot Chili Peppers、Daft Punkのような彼らにインスパイアされたアーティストたちからの影響までを語るようにその根底にはブラックミュージックがしっかりと根付いている。
そんなKroiの音楽性の特徴は、先述のとおり、様々なブラックミュージックを飲み込み、独自に消化したミクスチャーサウンドだ。“ミクスチャー”というと90年代のラップメタル的な音楽をイメージする人もいると思うが、Kroiは、メンバー全員がブラックミュージックに造詣が深いことから、それをブラックミュージックの文脈に沿いながら、新たな解釈で、独自のブラックミュージック的ミックスチャーサウンドとして練り上げているような印象を受ける。その理由は、計4曲が披露された今回の配信ライブでも様々なブラックミュージックが持つ“ブラックネス”が、ただ単にひとまとめになったのではなく、その全てで丁寧に再配合されることで生まれるKroiならではの漆黒のグルーヴを存分に堪能することができたからだ。
ライブの冒頭を飾ったのは、昨年リリースされたEP『hub』の収録曲「Mr. Foundation」。のっけからP-FUNKを彷彿させるギターファンクチューンでは、ファンキーなオルガン、歪んだトーンによるギターソロがあたかも配信画面から飛び出してくるかのように感じられた。また、曲終盤のRed Hot Chili Peppersにも通じる泣きのメロウネス的パートも視聴者の感情をいきなり揺さぶったことだろう。
2曲目に披露されたのは、小気味良く響くギターのカッティングとラップが絡み合う「Custard」だ。軽快なオルガンの音色がサウンドのアクセントになりつつ、跳ねるグルーヴィーなベースラインが印象的なこの曲では、ブラックネス溢れるベースソロにもスポットライトが当てられた。昨年リバイバルした80年代ディスコのバイブスをどことなく感じさせるこの曲だが、エネルギッシュさとキャッチーさから、筆者的にはむしろ00年代のディスコパンクが頭によぎったため、ある種のノスタルジーとともに次に来るトレンドの可能性を現在進行形で見せつけられているようにも感じた。
続いて、3曲目には最新作からの「risk」が披露された。この曲ではメロウでゆったりとしたグルーヴが心地よいソウルフルな前半とセッションパート的な後半では曲の雰囲気もガラリと変化。各インストが繰り出すファンクネスに合わせて思わず身体が動いたが、こういった身体に訴えかけるグルーヴの作り手であるKroiだけに、ライブバンドとしての強度を感じずにはいられない。
そして、約20分のライブを締め括ったのは、タイトながらもズシっとくるドラムビートが生み出すバウンシーな4つ打ちナンバーの「Network」。ラップパートありのヒップハウス要素を持つこの曲では、まさにハウス、ヒップホップ、ファンク、ディスコ、ジャズの要素を持つNYハウスの面影がちらつく。しかし、そのトラディショナルなウワ音を支えているのは、KaytranadaやChannel Tresのようなモダンハウスに通じる今様のハウスビートだ。筆者はその部分にもKroiが体現する新世代の“ブラックネス”を見たことをお伝えしたい。