イヤホンズ「はじめまして」手話や多言語で表現するエンターテインメント　目と耳で楽しむEP『identity』先行インタビュー

文・取材＝流星さとる、写真＝三橋優美子

人生の中で得てきた表情が出ている

ーー皆さんの歌声に関しても、全体的に楽しそうな雰囲気が伝わってきますが、レコーディングではどんなイメージで歌いましたか？

長久：今回はりえりー（高橋）が一番最初にレコーディングして、私はその次だったんですけど、りえりーの歌声が「ああ、こういう楽しい感じで歌えばいいのか」ということを示してくれていたので、私はそれをガイドに歌いました。多言語のパートもりえりーが頑張ってくれていたので、私もそれに倣って歌うことができて。

高橋：先陣を切りました（笑）。

長久：そうそう、多分三浦さんと話し合って、ネイティブな発音と音楽的に気持ちいい音の歌い方とのバランスを絶妙にすり合わせてくれていたので、私はその通りに歌う感じで。なので生みの辛さを感じるというよりも、楽しく歌えました。

高野：私もそれに合わせて歌いました（笑）。私の解釈では、「はじめまして」はワールドワイドで誰でも歌える楽曲だから、最初は自分の「はじめまして」を歌おうとしていたんですよ。私はどちらかと言うと人見知りで、初めての方と挨拶するときもそこまでフレンドリーになれないタイプなので、控えめな「はじめまして」担当でいこうと思っていたんです。でも、現場で二人の歌を聴いたら、「いや、この曲はそうではない」と。控えめな人も、いつも豪快な人も、みんなで明るく“はじめまして”から始めるコンセプトの楽曲だったので、最初から明るいりえりーに合わせて録りました。私の頭の中ではいろんな世界の人と肩を組んで歌っているイメージ、ピースフルでハートフルな感じを意識しました（笑）。

ーー歌詞に目を向けると、先ほど長久さんがお話していた「やらず嫌いのままでいるのはもったいない」という気持ちも、この楽曲には表現されているように感じます。

高橋：後半の〈やっぱやめよういや踏み出そう〉のところですよね。

長久：そう考えると深いですね。さすが三浦さん！　私たちの内側を知ってくださっている方が書くからこそ、こういう歌詞になったのかなって思いました。ただ、ちょっと恥ずかしいよね（笑）。

高橋・高野：（笑）。

長久：自分にとっても前向きになれる、励ましてくれたり勇気をくれる楽曲になっているので、すごく好きです。

ーーMVは、皆さんが手話をしながら歌っているのに加え、歌詞の字幕が歌割りに合わせて各自のメンバーカラーに染まるなど、さまざまな工夫が凝らされた映像に仕上がっています。撮影はいかがでしたか？

高橋：事前に手話の講習日を設けていただいたほか、MVの撮影現場にも手話の先生が来てくださって、逐一チェックしてもらいながら撮影しました。難しかったのが、手や指の仕草は合っていても、顔の表情が違うと全然違う意味になる場合があるんですよ。指をさす方向にしても、少し相手に向いていないだけでも意味が変わって相手に伝わらないことがあって。MVの撮影自体がお芝居をしている感じがしました。

長久：私とまりんか（高野）はたまたまスケジュールが合ったので、二人でMVの手話の講習会を受けたんですけど、私が最初のパートで担当している〈伝わらないって？〉の手話が難しくて。その前の歌詞の〈はじめまして　まずは声に出して〉は明るい表情なんですけど、〈伝わらない〉は意味的にしょんぼりした表情じゃないとダメなんですよ。手振りも“あなたと私のすれ違い”を表現しなくちゃいけないんですけど、指の向きが少しでも違うと相手には伝わらないことを教えていただいて。ただ、大変ではありましたけど、発見のほうが大きくて、学ぶことの楽しさを知ることができました。講習会で相手に伝わったときの嬉しさがハンパじゃなくて。伝わらない不安よりも、伝わったときの嬉しさが上回るから頑張るみたいな。

ーーまさにこの楽曲のテーマに繋がる部分ですね。高野さんはいかがでしたか？

高野：私は人とお話するとき、自分が伝えたいことや言葉を整理しながらしゃべるので、相手の顔を見ないことも多いんですけど、手話はずっとお互いの顔を見合うんですよね。なので講習会では、人見知りの私からすると、こんなに人の顔を見たことないって思うくらい、ずっと相手のことを見つめてお話していました（笑）。手話は相手の顔を見て初めて伝わるものなので、大変な印象もありましたけど、いままでの自分とは違う一歩を踏み出すこともできて、すごく勉強になりました。

ーー手話を一から勉強するのは大変だったと思いますが、MVを拝見すると、3人ともすごく楽しそうにしているのが印象的でした。

長久：すごく楽しかったよね。

高野：うん。

高橋：今回のMVを作ってくださったのが、それこそ「あたしのなかのものがたり」の映像や、昨年のオンラインライブ（『EARPHONES Theory of evolution Online Show』）の映像と同じ“ピンクじゃなくても”さんなので、顔馴染みのチームで作れた安心感もあって、楽しかったです。

長久：ピンクじゃなくてもさんは、いつも楽曲の魅力をすごく引き出してくださって、「記憶」のときも感じましたけど、絵コンテの時点でワクワクするんですよね。イヤホンズとすごく相性がいいなと思います。

ーー改めて今回の「はじめまして」は、イヤホンズにとってどんな楽曲になったと感じますか？

長久：最初にプロデューサーさんから説明を受けたときは、どんな楽曲になるのか想像もつかなかったので、不安な気持ちもありましたけど、歌ったりMVを撮影するなかでその不安がどんどん消えていって。改めて自分がいままで出会ったことのない、はじめましての方に聴いてほしい作品になりました。多分どの地域の方々が聴いても楽しくなれるだろうし、MVを通してろう者の方々も楽しめる、間口が広い楽曲になったと思うので、とにかく「観てください！」っていう感じです（笑）。

高野：私は“生身のイヤホンズ”という感じがします。いままでの私たちは“演じている”部分が強かったですけど、今回は“目と耳で楽しむ”という意味でも、自分たちが人生の中で得てきた表情が出ていると思いますし、自分が伝えたいことを体で伝えようとする場合、その人自身が滲み出ると思うんですよ。私たちは3人でイヤホンズですけど、一人ひとりにも個性があるので、そういうものを理解できる曲にもなっているんじゃないかなと思って。これ一つで私たちの性格から、どんな笑顔を作るのかまでがわかる曲になっていると思います。

高橋：たしかに私もそう思います。特に“目と耳で楽しむコンセプトEP”という意味でもMVは絶対に観てもらいたいですし、もともとイヤホンズの3人が揃ったユニゾンの歌声は、すごくプラスで明るい力があるなあと感じていたんですけど、映像でもその陽の気がすごく伝わってくるんです。イヤホンズがもっている笑顔や明るさと、物事に対してきちんと悩んで考える真面目さもありつつ、それでも前に踏み出そうとする“イヤホンズという存在”が、音楽とすごくリンクしている作品になりました。

ーーいつかライブでみんなと一緒にクラップをしながら盛り上がりたいですよね。

長久：できるといいなあー。

高橋：コマクちゃん（※イヤホンズのファンの呼称）たちと一緒に手話をやりたいよね。

高野：このご時世だからこそ、声を発せずとも伝わるものがきっとあると思うので、その日が来るのを楽しみにしていてください！

■リリース情報
『identity』
発売：2021年9月22日（水）
【通常版】
価格：3,300円（税込）
形態：Blu-ray + CD
収録内容：
[CD]
はじめまして
ほか

[Blu-ray]
はじめまして MUSIC VIDEO
ほか

[封入]
ライブチケット先行抽選予約券
予約受付期間：9月21日（火）～10月24日（日）23:59

【Online Show版】
価格：7,150円（税込）
形態：Blu-ray + CD
収録内容：
[CD]
はじめまして
ほか

[Blu-ray] EARPHONES Theory of evolution Online Show
はじめまして MUSIC VIDEO
ほか

[封入]
ライブチケット先行抽選予約券
予約受付期間：9月21日（火）～10月24日（日）23:59

商品販売URL
https://kingeshop.jp/shop/artist/artist.aspx?artist=44749&ps=20&elr=44749

・はじめまして　先行配信
試聴はコチラ：https://eaphones.lnk.to/HJM